刑務所などへの「差し入れ」業者決まる|面会人向け販売窓口の再開は未知数

昨年4月に本サイトで報告し(既報)、同7月には全国紙の朝日新聞も同旨の報道に到った刑事施設の物品販売問題で、法務省の入札により次期5年間の契約業者が決まっていたことがわかった。本年度までの15年間で唯一の業者だった大手給食業者は事業から手を引き、別の通信サービス業者が新たに事業を引き受けることになる。休止中の面会人向け物販窓口については、現時点で再開の目途が定まっていない。

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各地の刑務所や拘置所などでは一昨年以降順次、面会人向けの物品販売窓口が閉鎖され始めた。各施設にはもともと物販業者の窓口があり、文具などの日用品や下着などの消耗品を外部から購入して被収容者に差し入れることができた。未決勾留中の人たちを収容する拘置所については、さらにお菓子や軽食などの差し入れも認められていた。これらの手続きに対応する窓口が一斉に休止となったことで、面会人による物品購入・差し入れが不可能となり、現在は書籍などの差し入れのほかは「現金」の差し入れのみが認められている。

被収容者はこの現金を受け取った後に自ら物品購入の手続きをしなくてはならなくなった形。かつては、面会人が面会当日にお菓子などを購入するとその翌日には被収容者のもとへ現物が届いていたが、今回の運用変更により現金差し入れから物品の入手までに3日間ほどのタイムラグができることになった。また被収容者の心情として「差し入れてもらった物のありがたみ」を実感する機会が失われた。

背景にあったとみられるのが、業者の人手不足。物販窓口は事業が民営化された2011年以降、給食事業大手・エームサービス(東京都港区)が全国の矯正施設内に設けてきたが、この運用が近年難しくなってきたようだ。同社は昨年4月時点で「取材対応を控える」としていたが、法務省の関係者によれば被収容者数の減少などで窓口の維持が困難になったことが考えられるという。

現在の事業委託契約は本年度いっぱいで終了となるため、法務省は昨春から次期(次年度以降5年間)の契約業者を募り始めたところだった( ⇒こちら)。これの結果が昨年9月上旬までに公表され、少なくとも次年度以降の5年間は物販事業が継続されることがわかった。法務省矯正局が公開しているプロポーザル(企画競争入札)の評価結果によると、公募には4社が手を挙げ、そのうち10項目の評価ポイントの合計点で最高点を得た通信サービス大手・ティーガイア(東京都渋谷区)が次期の委託業者に選定された。

物品販売事業そのものは継続できることになったとはいえ、被収容者や面会人などが関心を寄せるのは今後の販売窓口の再開の有無。これについて矯正局に問い合わせると、現時点で利用者などから大きな苦情などは届いていないものの、内部では「現状が決して好ましい状態であるとはいえない」との認識があり、現在担当部局と先のティーガイアとで次期の運用について協議を重ねているところだという。

近年の実績によれば、矯正施設の物販事業は年間25億円あまりの売り上げ規模を維持し続けているが、顧客(受刑者など)の規模が年々縮小傾向にあり、将来の大きな利益増は見込めない状況。年度内の窓口再開の有無についての取材に、現在の事業を受託しているエームサービスは「回答は差し控えさせていただく」との姿勢。来春から初めて同事業を引き受けることになるティーガイアは、同旨の取材に「4月の運用開始までは詳細をお伝えすることができない」と明答を控えつつ、事業そのものについては「被収容者の生活に資する大変意義深いものと考えており、弊社としても全力で取り組んでまいります」としている。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

 

 

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