銃所持取消のハンター「汚名返上を」|ヒグマ裁判上告審で双方が書面提出
- 2026/2/19
- 社会

昨年暮れに最高裁判所の弁論実施の決定が伝わったヒグマ駆除をめぐる裁判の上告審(既報)で、当事者双方が最高裁へ主張書面を提出していたことがわかった。上告人の池上治男さん(76)自身の意見陳述の内容も固まりつつあり、2月下旬の弁論では銃所持許可取り消しの原因となった駆除行為について当時の発砲の正当性を改めて強調することになるという。
◇ ◇ ◇
既報の通り、池上さんは北海道公安委員会に猟銃所持許可を取り消されたことを不服とし、同処分の撤回を求めて札幌地裁に裁判を起こした。処分の原因となったのは、地元・北海道砂川市で自治体の要請を受けてライフル銃でヒグマを駆除した行為。現場は住宅街だったが、銃の発砲にあたっては警察が駆除を前提に住民を避難させ、発砲者の池上さん自身も約8メートルの土手がバックストップ(弾止め)になることを確認した上で引き金を引いている。駆除は無事に成功し、何ら問題なく現場は解散となったが、その2カ月後に突然、警察が池上さんに鳥獣保護法違反などの疑いをかけることに。当時の警察は「建物の方へ向かって撃った」なる理屈でライフル銃などを押収、北海道公安委員会もその主張に従って銃所持許可を取り消してしまう。
裁判では一審・札幌地裁が池上さんの主張を全面的に認めて公安委の処分を「裁量権の濫用」と指弾、処分の撤回を命じる結果となる。ところがこれを不服とした公安委側の控訴により審理は札幌高裁へ移り、同高裁が「跳弾のおそれがあった」などの理屈で原告側全面敗訴の逆転判決を言い渡すことに。池上さんがこの判断に納得できるはずもなく、最高裁へ上告したのが一昨年暮れのこと。これを受けた最高裁が1年ほどを経た昨年12月、上告審の口頭弁論を開くことを決めるに到った。
その決定から2カ月あまりが過ぎた本年2月4日に提出した書面で、道公安委は改めて当時の駆除行為の危険性を強調することとなった。札幌高裁の判断に倣って「跳弾」の可能性を説く公安委は、池上さんの撃った弾丸が現場の人たちに命中しなかったことを「不幸中の幸い」に過ぎないとし、発砲行為は「極めて危険だった」と主張。池上さん自身が行為の正当性を主張し続けていることに対しても「銃砲所持者としての資質が欠落」していると断じている。
これに対し池上さん側は同10日付の書面で、高裁の判決が跳弾による「人」への抽象的な危険を必要以上に強調していると主張、そもそも公安委の処分は「人」ではなく「建物」への到達可能性を理由としたものだったと指摘した。一審が認定した裁量権の濫用については、警察の代わりに駆除を引き受けているハンターへの処分が社会に与える悪影響を考慮する必要があるとし、ハンターの社会貢献を軽視すべきではないと訴えた。
これも既報の通り、最高裁は2月27日に口頭弁論を開き、池上さんと訴訟代理人とが意見陳述に立つことを認めている。出廷を目前に控えた池上さんは現在、当日の陳述内容をまとめ始めているところで、陳述では改めて駆除の経緯を振り返りつつ処分の不当性を訴えていくことになるという。とりわけ、裁判所には地域の安全を守るハンターの活動への理解を求め「銃を持たないハンターの汚名を返上し、正常で安心して活動ができるように」と呼びかけることになる。
最高裁第三小法廷(林道晴裁判長)での弁論は、27日午後3時から。裁判所の公式サイトでは傍聴券交付の案内と併せ、事件の概要をまとめた資料を公開している(⇒こちら)。

池上さんの弁護団は訴訟支援を呼びかけるクラウドファンディングを昨年から継続中(⇒拡散希望)。300万円を目標に始めた試みだが、2月14日時点で支援総額は248万円に達している。
(小笠原淳)
| 【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |

















