検察の不起訴処分の妥当性を審査する検察審査会が審査事件の議決などを情報公開の対象としていない問題で2月上旬、筆者の苦情申出(審査請求)を受けた第三者機関が検審の不開示決定を支持する答申を出していたことがわかった。北海道内7カ所の検審の決定に係る審査の答申はいずれも2月9日付で、各答申書の写しが同17日に筆者のもとへ届いた。

■掲示済み「議決書」の黒塗りを容認
既報の通り、筆者は昨年1月に道内に9庁ある検察審査会へ文書開示請求(検察審査会行政文書開示申出)を行ない、うち7検審から一部開示決定を受けた。求めていたのは一昨年1年間に各庁で議決に到った全事件の記録だが、7庁が開示したのはことごとく墨塗り処理された「のり弁当」状態の文書で、各地の掲示板に日常的に貼り出される議決の内容(「不起訴相当」など)までもが真っ黒く塗り潰されていた。これを不服とした筆者は一部開示決定後の9月上旬に各庁へ審査請求を行ない、適切な形で開示をやり直すよう求めた。請求を受けた各検審は10月中旬、もとの決定が適切だったかどうかを審査する「検察審査会情報公開・個人情報保護審査委員会」(栃木力委員長、森山裕紀子委員、小舟賢委員)へ事案を諮問(意見伺い)し、同委員会が第三者機関として審査にあたることとなった。
審査委員会の公式サイト(裁判所サイト内に開設)を確認する限り、同委が本年度中に答申した事件は筆者の事案を除くと2件あり、いずれも各検審からの諮問があってからおおむね2カ月間ほどで結論がまとまっていることがわかる(⇒参照)。ところが筆者の請求事案については諮問翌々月の12月になっても結果が伝わらず、最終的な判断が得られたのは先述の通り本年2月のことだった。委員会は各件で計3回の審議を重ね、今回の答申に到っていた。
その答申は、裁判で言えば請求棄却、原告全面敗訴にあたる「妥当」の結論。筆者が不服とした7検審(札幌、小樽、函館、旭川、釧路、帯広、北見)各庁の「のり弁」は、すべて適切だったと判断された。独立した第三者機関たる審査委員会は、審査請求後に各庁が提出した「理由説明書」、即ち反論を、ほぼそのまま受け入れる形で筆者の審査請求を退けた。

請求に際して筆者が訴えていた最大の疑問は、なぜ議決までをも隠す必要があるのか、という素朴な問い。検審の議決は日常的に各庁の掲示板に掲出され、不特定多数の眼に晒されている。情報を得た報道機関によりニュースとして広く知らしめられることもしばしばで、その場合は報道の内容が公共図書館やインターネットなどで半永久的に検索可能となる。そういう公知の情報をことごとく真っ黒な「のり」で覆ってしまう対応は、国民の知る権利を不当に侵しているといえないか――。
だがこの疑問は、弁護士を委員長とする第三者機関には一切受け入れられなかった。答申書によれば、議決書の掲示板への掲出は「議決の要旨を一般に知らしめるとともに、検察審査会の会議の公正を期し、もって国民の信頼を確保する」ための措置だが(検察審査会法40条)、その掲示場所や掲出期間が限定されていることから、各議決は「法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」(情報公開法5条1号イ)にはあたらないのだという。
一貫性がない、と言わざるを得ない。検審の活動で最も重要な「議決」をそこまでして隠したいのであれば、掲示板に議決文を貼り出す慣行もただちに中止すべきだろう。掲示板の多くは検審事務局の、即ち各地の裁判所の敷地外にあり、掲出中の議決文は公道上から誰でも容易に撮影できる。撮ったその場でSNSなどに投稿する者がいたとして、その画像が「拡散」する可能性もある。公式な手続きを踏んだ情報公開請求で入手できない情報が、いとも簡単に世界中に周知されるわけだ。仮にこうした拡散が不適切とみなされるのであれば、先述の報道機関による発信もまたそうであると言わなくてはならない。
無論のこと、上の指摘はあくまで「一貫性」を重視するゆえの疑義であり、そもそも検審の審査や議決を不開示とする対応が問題であることは改めて言うまでもない。審査委は、筆者の求める情報を「(開示すると)無用の批判や詮索を招き、審査会議における自由闊達な審査活動が阻害されるおそれがあり、公にすることにより検察審査会の適正な遂行に支障が生ずるおそれがある情報」とみなし(情報公開法5条6)、改めて「審査会議非公開の原則」を強調するが(検審法26条)、ならばそのような法令自体がそもそも問題なのだと言わざるを得ない。
たとえば、裁判員裁判。検審と同じように一般市民から無作為に選ばれた裁判員たちは、日常的に不特定多数の傍聴人へ顔を晒して裁判に参加し、場合によっては記者会見を開いてその意見を発信することがあるが、それで「自由闊達な」議論が阻害され、また裁判の「適正な遂行に支障が」生じたことがこれまで一度でもあったのか。審理の結果である判決が国民の眼から隠されることもないのは、言わずもがなだ。
審査請求は、情報開示への不服申し立てとしては事実上最後の手段。この答申に異を唱える手段はなく、請求人の筆者は遠からず各庁の改めての不開示決定を甘んじて受けなくてはならない。
とはいえ、同じ趣旨の請求を飽かず繰り返すことはできる。筆者は本年1月、昨年同時期の開示請求と同趣旨の請求を北海道内の各検審に対して行ない、現在各庁の開示・不開示決定を待っているところだ。開示を求める文書を記す請求書の記入欄には、念のため「とりわけ議決の種類(「不起訴相当」など)や議決の件数を確認できる文書」の文言を添えた。もちろん本年も昨年同様に「のり弁」決定に終わる可能性が高いが、その場合はこれも昨年同様、第三者機関たる審査委員会に昨年と同趣旨の審査請求を申し立てる考えだ。
なお筆者は今回の審査請求に際し、掲示板に貼り出される議決文は一般的な裁判記録と同じように開示請求を伴わない形で閲覧・謄写に供すべきと(附記1)、また検審の開示文書の写しの交付は郵送による対応も可能にすべきと(附記2)要望を寄せたが、いずれも審査請求にはあたらないとして(全検察審査会申合わせ『検察審査会行政文書の開示に関する事務の基本的取り扱いについて』第10)(⇒こちら)審査の対象とならなかった。
(小笠原淳)
| 【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |
















