福岡県豊前市が指定管理者に運営を任せている市立図書館の事業費に使途不明金があることが発覚。指定管理者である「一般社団法人 豊前図書館研究会」の代表で図書館長を兼任してきた人物に注目が集まっている。
■使途不明の約150万円、館長は「雑損失。補填した」
疑惑発覚の発端となったのは、ハンターが独自に入手した1枚の告発文書だ。
文書に出てくる西元県議会議員とは、自民党所属の西元健氏(45歳・築上郡・豊前市選出)。西元氏は先月、豊前市の福祉センターで開いた会合で、県議を辞職し来年4月の豊前市長選に出馬することを表明。その場で県議の後継として同級生だという釜井健次郎氏を紹介し、釜井氏自身も出馬する意向を示していた。
上掲の告発文書は、西元氏が市長選出馬を表明したあと、豊前市議をはじめ周辺自治体の議員らにも送られたものだ。
事情に詳しい関係者によると、市立図書館の運営事業費に使途不明金があるのは事実で、その額は2年間分で約150万円に上るという。釜井氏は不明額を図書館の運営口座に入れ返金して事を終わらせようとしたが、問題は終わっていない。
釜井氏が代表を務める「一般社団法人 豊前図書館研究会」の理事は釜井氏だけ。その釜井氏が、市から管理を請け負う図書館の館長を務め、法人会計も握っているというのだから、褒められた運営形態とは言えない。
先週、事態を重くみた市教育委員会が釜井氏に事情聴取を行ったが、合理的な説明はなかったとされる。すでに市関係者が広く知る事態となっており、今週開かれる市議会で議論の対象になる予定だ。
9日、ハンターの取材に答えた釜井氏は、上掲の文書を「中傷ビラ」と非難した上で、図書館運営費の一部が使途不明になっていることについては「雑損失。約150万円。税理士にも相談して個人的に補填した」と言う。西元県議のパーティー券購入については「そもそも、西元県議はパーティーをされていない。(上掲の文書を)書かれた方がご想像されたんじゃないか」と話し、冠婚葬祭に関する記述なども含め「虚偽」だと断言した。
では、雑損失だという約150万円はどのように費消されたものなのか――?何度かその点について尋ねたが、「一人で法人の実務も会計も館長もやっていたため、経理がおざなりになっていたのは事実。何に使ったのかはわからない。不明金について合理的な説明ができないから雑損失」という回答だった。150万円以上の使途不明金については、認めているということだ。
同氏は先月、図書館長の辞表を指定管理法人の代表である自分あてに書き、教育委員会にも退任する旨を伝えたが、後任の館長が10日あまりで辞任したため、再び自分が館長を務めることになったと話す。さらに、いったん表明した県議補選への出馬も取りやめたとしている。
異例の事態を受けて、ある市の関係者は次のように話している。
「図書館の館長が公金を横領していたとすれば大問題。事実なら、刑事事件になってもおかしくない話だ。そもそも、図書館の指定管理者になった法人の代表が館長も会計もと、何もかも兼任するのが間違い。チェック機能が働かないから、不正を招いたという見立ても可能だ。150万円もの公金が図書館運営費の中から消え、それを館長が個人的に補填したなどという話は聞いたことがない。補填した段階で不透明な会計処理を認めたも同然だろう。それにしても、次の市長選に出ると言い出した現職県議が自分の友人を県議の後継に指名すること自体が、政治の私物化ではないのか。有権者不在は許せない。西元さんにも責任がある」