【コロナワクチン開発失敗】中心人物の大学教授と維新・自民・藪本被告の関係

 大阪の創薬ベンチャー企業「アンジェス」(大阪府)が、開発中の新型コロナウイルスワクチンについて実施した治験で効果が得られず、開発を断念した。ハンターは今月16日の配信記事で、同社のワクチン開発を共同研究していた大阪大学に府から1億5千万円も寄付し、会見で「大阪産コロナワクチン」をPRまでしていた吉村洋文大阪府知事の責任を追及した。

 アンジェスは、ワクチン開発の中心となった大阪大学大学院の森下竜一教授が1988年に大学ベンチャーの先駆けとして創業した会社が母体自身もアンジェスの取締役を数年間務めていた。現在もメディカルアドバイザーであり、今年6月の有価証券報告書によれば、約69万株を保有する8番目の大株主でもある。

 アンジェスの株価が上がれば、株主は儲かる。前稿で指摘したように、吉村知事の記者会見でアンジェスの株価が急上昇した関係性を指摘したが、それによって森下氏は大きな利益を得ていたことになる。うさん臭い話の背景にあるのは、維新と森下教授の深いつながりである。

■ワクチン開発の教授は「万博総合プロデューサー」

 大阪大学大学院の教授でありアンジェスの大株主でもあるという森下氏には、違った「顔」がある。大阪府の特別顧問として、2025年の大阪・関西万博の取組みに関する助言をしているという記述が大阪府のホームページに掲載されている。

 また、2025年日本国際博覧会大阪パビリオン推進委員会の総合プロデューサーという肩書も有している。(*下、大阪府のHP画面参照)

 また、以前には大阪府市統合本部医療戦略会議参与にも就いていたことがあり、大阪府とベタベタな関係であることが分かっている。

◇  ◇  ◇

 昨年11月、森下氏は講演で「ワクチン開発は順調に治験を実施している」と明言、しかし、今年6月の講演では「国産ワクチンの開発時期」を問われて「残念ながら、現時点で、ちょっとはっきり言えません。 もし海外での試験が必要になれば、東南アジアの国を中心に数万人の試験が必要になる。これはかなり時間がかかるだろうと思います」と発言を後退させる。だが、吉村知事は、それまで主張してきた「大阪産ワクチン」についての発言内容を修正することはなかった。関係の深い森下氏を、庇ったとみる関係者は少なくない。

■政府・自民党との関係

 森下氏は国とも密接な関係がある。2013年に安倍政権が発足すると、政府の諮問機関「規制改革推進会議」の委員も務めるようになる。自民党と維新、双方との関係が濃密でることがよくわかる。
 それを証明するのが、政治資金収支報告書だ。確認できただけでも、次のような献金の記録があった。

2017年:二階派=「志帥会」にアンジェスが40万円の献金。
・2016
年:竹下派の渡嘉敷奈緒美前衆院議員が代表を務める「自由民主党大阪府第七選挙区支部」にアンジェスが12万の献金。
2007年:橋本岳衆院議員の政治団体「情報社会政策研究会」に、森下氏個人が10万円の献金。
・2012
年~2019年:アンジェスの代表取締役が、茂木敏充幹事長の政治団体「茂木敏充政策研究会」に毎年12万円の献金。

 ちなみに茂木幹事長の政治団体については、2016年から19年までの3年間に、使途不明の支出が全体の約97%にあたる1億2千万円以上あったことが報じられている。

■日大疑惑の藪本被告と懇意

 そこで注目されるのが、日本大学の病院建設に絡んだ背任事件で逮捕・起訴された医療法人「錦秀会」の前理事長、籔本雅巳被告と森下教授との関係だ。

 籔本被告は安倍晋三元首相のゴルフ仲間で、度々一緒にプレーしていたことが「首相動静」でも伝えられている。籔本氏の知人が、こう話す。
「森下教授と籔本氏さん、2人は実に仲がいいですね。よく大阪の北新地で一緒に飲み歩いていました。7、8年前だったと思いますが、籔本さんが森下教授を安倍さんとのゴルフに誘って、一緒にプレーしたと話していたことを覚えています」

 確かに、二人の関係を示す証拠はいくつもある。森下氏は、一般社団法人「彩都ヒルズクラブ」というライフサイエンス支援の団体の副理事長を務めており、籔本被告も理事だった時代があることが大阪大学の資料に記載されている。

 また、森下氏は大阪万博の関係で「10歳若返りプロジェクト実行委員会」の実行委員長として、「10歳若返りパビリオン」という企画を提唱。籔本被告も実行委員となっていた。

 森下氏の周辺では、自民党や日本維新の会、大阪府、大阪市、そして籔本被告のようなうさん臭い人物が、複雑に絡み合う。そんな森下氏は昨年12月に東証マザーズに上場したバイオベンチャー企業「ファンペップ」の「創業者」と言われ、同社の有価証券報告書によれば、筆頭株主となっている。

 新型コロナウイルスのワクチンの開発となれば超多忙なはずだが、その最中に上場というから余裕である。「本当にアンジェスや森下氏はワクチンを開発していたのか」と大阪大学のある教授は首をひねっている。

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