【追跡・鹿児島県警】霧島署員ストーカー事件、事件化阻止の実態|公益通報文書にあるアンダーラインの意味とは・・・
- 2026/1/28
- 社会
- 巡回連絡簿, 生活安全部人身安全・少年課, 闇, 隠蔽, 霧島署員ストーカー事件, 鹿児島県警

「警察一家」が起こした不祥事の事件化を避けるため、もみ消しや隠蔽を繰り返してきた鹿児島県警。一連の不正が発覚する発端となったのが、この4年間本サイトが追い続けてきた鹿児島中央警察署による強制性交事件のもみ消しだった。
同署に勤務していた警察官の息子である県医師会の男性職員(当時。2022年10月に退職)に性被害を受けたとする女性の訴えを門前払いにし、受け取った告訴状のコピーを署の駐車場まで追いかけ突き返すというあり得ない手口。形だけの捜査によって「不起訴」となったこの事件の被害女性は、司法の救済を受けることなく、現在も苦しみ続けている。
形態は違うものの、“事件化する前”に警察組織の日常業務が引き起こした極めて重要な案件が、やはり県警の策謀によって闇に葬られようとしていたことも分かっている。「闇」を照らしたのは、国家公務員法違反(守秘義務違反)という濡れ衣を着せられ逮捕・起訴された本田尚志元生活安全部長の『公益通報』だった。告発された隠蔽事案は3件。前回報じた枕崎署員による盗撮事件(既報)と現役警視による超過勤務手当の詐取、そして霧島署員によるストーカー事件である。
■事件の概要
まず、本田元部長が北海道のジャーナリスト・小笠原淳氏に送った告発文書の記述に沿って、事件のあらましを振り返っておきたい。
盗撮した巡査長(当時)は2022年4月、パトロール中に立ち寄った事業所で一般の20歳代女性と知り合った。当初は月に一回程度の巡回の際に世間話をする程度の関係だったが、およそ1年を経た頃から、個人的にLINEのやり取りをする間柄になる。それを可能にしたのは、巡査長が駐在所の巡回連絡簿から不正に入手した女性の個人情報だった。
女性に対し頻繁にLINEを送るようになった巡査長は、仕事の休みを聞き出したり「抱いていい?」などと不適切なメールを送信する言動に及び始める。女性は努めて当たり障りのないメッセージを返していたが、その後も食事の誘いやラブホテルなどについて尋ねるメールが送られてくるようになったため、交際相手だった別の警察官に被害を相談した。
この「交際相手」が警察官だったことで、事件は県警の知るところとなる。本部人身安全少年課の調べに対し、巡査長は「若くて好みのタイプだったので男女の関係になりたかった」などと供述、不適切な言動があったことを認めるに到った。(*下が郵送された公益通報原本の一部。赤いアンダーラインはハンター編集部)

■事件化を断念するよう仕向け事実上の隠ぺい
事件の調べにあたった県警本部は、巡査長本人の供述やメッセージの記録などから、一連の行為がストーカー規制法に抵触するものであることを確認。2023年1月に捜査員3人が被害女性宅を訪ね、女性と両親に謝罪した上で捜査状況などを説明する。
本田元部長の告発文書原本(*下の画像。赤い書き込みはハンター編集部)には、この段階で被害女性が《被害者の連絡先の入手方法を危惧し、「今後同様の被害者を生まないためにも、刑事手続きや行政手続きができるのであれば、その対応をとってもらいたい」》旨を申し立てていたことが記されている。「刑事手続き」とは“捕まえてもらいたい”との意思表示であり、「行政手続き」とは“懲戒処分”を指すと解すべきだ。被害女性が強い処罰感情を抱いていたことは疑う余地がない。
ところが、この訪問からさほど時間を経ていない2月上旬、立件されないまま捜査は唐突に終了する。被害女性が事件化を望まない意向を示したためだという。女性の本意は判然としないが、県警にとっては“警察官による犯罪の隠ぺい”に好都合な結論だったと言ってよい。その部分について記された告発文書の原本を示す(*赤い書き込みはハンター編集部)。

『被害者及び両親への説明』として次のように記されている。
《令和6年1月29日、霧島警察署で、行為者の上司である同署地域課長、被害者担当である同署生活安全課人身安全・少年係員、行為者の取調官である生活安全部人身安全・少年課人身安全一係員の3名が説明を実施した。被害者及び両親に謝罪した上で、捜査状況や違反態様、行為者に対する措置等を説明した。》
その結果、3日後の同年2月1日、《事件化を求めない意向》《法警告や禁止命令と言った行政措置についても求めない意向》を示すに至る。理由はこうだ。
・県警本部員が行為者を厳しく取り調べたと聞いていること
・異動したり何らかの処分を受けると教えてもらったこと
・これ以上行為者と関わり合いたくないこと
・110番システムの登録もしてもらっていること
つまり、県警本部生活安全部人身安全・少年課の警察官1名と霧島署員2名の3人がかりで処罰を求めないように仕向け、現職警官の犯罪が表面化しないように工作したということ。形を変えた隠蔽と言っても過言ではあるまい。組織の腐敗体質に危機感を持っていたからこそ、本田元部長はこの事案の告発に踏み切ったと考えるべきだろう。
ただし、本田元部長がもっとも重要視したのは警察情報の不正使用。被害者本人も当初の事情聴取で『被害者の連絡先の入手方法を危惧』と申し立てているとおり、犯人が『駐在所備え付けの巡回連絡簿』を使って被害者の個人情報を入手したことだったとみられる。
■公益通報文書にあるアンダーラインの意味
実は、本田元部長の公益通報のうち、枕崎署員盗撮事件と霧島署員ストーカー事件の告発文書には、計3カ所のアンダーラインが引かれている。枕崎のケースでは、前回の配信記事(⇒こちら)で示した通り、《枕崎署の対応》の項目にあるアンダーラインは「同車両は枕崎署の捜査車両」と「捜査員も特定」に引かれている。本田元部長がこれをアンダーラインで強調したのは、早い段階で犯人の特定ができていたことを伝えたかったからだと考えられる。そして、霧島ストーカー事件告発文の最後はこうだ(*下が告発文原本の一部。赤い矢印はハンタ―編集部)。

この文書の中で、アンダーラインによって強調されているのは《行為者が警察情報を不正利用した件》の一か所のみ。本田元部長が、巡回連絡簿を悪用した犯罪行為をいかに重くみていたかがうかがえる事実だ。
『巡回連絡簿』が犯罪に使われたという事実は極めて重い。前述したように、警察が作成する『巡回連絡簿』や『連絡カード』は、地域社会の安心・安全を守るための重要な資料であり、それが犯罪に利用されたとなれば全国の警察行政に多大な悪影響を及ぼすからだ。
『巡回連絡簿』や『連絡カード』は、警察官が住人から聞き取った氏名や家族構成などを記入する「個人情報」のかたまり。言うまでもなく、住民が通常なら絶対他人に教えない情報を与えるのは、相手が制服を着た警察官だからこそで、来訪者が民間人であれば絶対に成立しない話だろう。
警察は連絡カードに記載された情報を、地域社会の安心安全に役立て、またある時は犯罪捜査に利用する。情報提供の前提となるのは、「警察は正義」という当たり前の理屈であり、そこに依拠した「信頼関係」だ。しかし鹿児島県では、その前提を覆す事件が起きた。本田元部長は、公務員としての自身の立場を超えてでも現場に警鐘を鳴らし、この事実を世に知らせるべきだと判断したのではないだろうか。警察官としての良心から発した行動だったと信じたい。
警察と地域住民との「信頼」の上に成り立ってきた巡回連絡簿を使ってストーカー事件を起こした卑劣な巡査長は、県警の隠蔽によって刑事罰を免れた。さらに、本田元部長が断罪しようとした巡回連絡簿の不正使用は、懲戒対象にもならず、監督上の措置に過ぎない「訓戒」で終わっている。一般人なら、十中八九“逮捕”だったはずの行為が、当時の本部長の保身という醜い理由で闇に葬られようとしていた可能性が高い。
一連の事実を知らしめた元部長の公益通報が、県民の安心安全ではなく、「警察一家」擁護を最優先に動いた鹿児島県警の「闇」の一端を照らしている。
(中願寺純則)















