大型選挙で政党が推薦や公認を出した候補が敗れた場合、「県連」と呼ばれる地方組織のトップやナンバー2は、責任をとって辞任するのが一般的だ。2連敗となれば、なおさら。しかし、鹿児島県には「責任」という言葉が存在しないらしい。
■辞めない県連会長、幹事長
7人が立候補し乱戦となった鹿児島県知事選を制したのは無所属新人で元九州経済産業局長の塩田康一氏(54)。現職の三反園訓知事(62)は、政権与党である自民党と公明党の推薦を受けながら、もっとも強いと言われる2期目でつまずいた。
鹿児島自民は、2016年の知事選で伊藤祐一郎元知事を推薦して、共産党を含む野党勢力の支援を受けた三反園氏に惨敗。今回は変節して自民党にすり寄った不人気知事を推薦して落とし、手痛い2連敗となった。
この間の県連会長は森山裕国会対策委員長。同氏も含めて、県連の日髙滋幹事長も、ヤクザまがいの恫喝と屁理屈で強引に現職推薦を決めさせた外薗勝蔵県議会議長も、敗戦の責任をとる気配はない。それどころか、別の候補者を支援したとみられる県議らの“処分”を求めて今週中にも県議団総会を開くそうで、猿でもできる「反省」のポーズさえとれない県連執行部に、党員から冷たい視線が向けられる状況となっている。
ある古参の自民党支持者の話。
「前回野党が担いだ三反園を強行に推したのは県議団の中の三反園派。筋が通らんことをやって、2連敗した。外薗さんたちは責任を感じるべきだ。幹事長の日高も県議団の一員なんだから、真っ先に辞任すべきだろう。伊藤前知事や塩田をやった(支援した)議員らを処分するなど、もってのほか。三反園とつるんだ連中に、そんなことを言う資格はない。騒いでいるのは、三反園派だった霧島あたりの議員だろうが、まずは執行部が責任をとるべきだ。話をすり替えようとするのは、卑怯の極み。そのそも、三反園推薦を決めた時の『全会一致』が嘘っぱちだったことは、ハンターの録音データ報道で明らかじゃないのか。ゴタゴタするようなら、別の会派を立ち上げればいい。私は、そっちを応援する。だいたい、三反園推薦には党議拘束なんてかかってなかろう」
■「党議拘束」を否定していた森山氏
たしかに、県議団が“処分”に走るのであれば、ハンターの取材に答えた県連会長の発言を否定することになる。自民党県連が三反園推薦を決めた今年4月、森山県連会長が「党議拘束」に言及したとする報道があったため、確認を求めた際の記者と同会長のやりとりは、こうなっていた。
――自民党が、鹿児島県県知事選挙で現職の三反園さんを推薦することを決めました。その件で、「党議拘束がかかる」と発言されたとの報道があります。事実ですか?
森山:党議拘束がかかるちゅうことよりも、党で決めたことは皆で守ろうという話です。――「党議拘束がかかる」と発言されたのですね?
森山:党議拘束だったかどうか、そこ、ちょっと私も記憶がありませんが……。基本的にはですね、決めたことは守ってもらわなければならないということ。――自民党の場合、党本部の総務会で決まったことのみに党議拘束がかかるということですが?
森山:そう、そう。そうですね。まぁ、本部の推薦まで決まりましたので、党員と違うことをすると、注意喚起ぐらいは行くと思います。――なるほど、注意喚起ですね。こころして選挙をやれと……。
森山:そう、そう、そう。
選挙中、「注意喚起」があったという話は聞いていない。それがいきなり「処分」では筋が通るまい。そもそも、落選した三反園氏が自民支持層の3割の票しかとれなかったという分析結果が、責任の所在を明確に示しているのではないか。処分されるべきは、強引に現職推薦を決めた県連の執行部だろう。
かつて薩摩武士は、「卑怯」をもっとも蔑んだというが……。