田川市・疑惑のプロポーザル(4)|仕組まれた「0点」

疑惑まみれとなった福岡県田川市の「一般廃棄物(ごみ)収集運搬業務委託業者選定プロポーザル」。今年4月の選挙で落選した二場公人氏が市長を務めていた間、頑なに公開を拒んだプロポーザル参加業者の「業務提案書」と審査委員の評価表を検証した結果、不正な選定が行われた疑いが濃くなった。

ハンターは、落選したある業者(以下「A社」)と、業務を受注した「早雲商事」、「クリーン北部九州」の業務提案書に評価点を記入し、元官僚や地方自治体の首長経験者、他県の廃棄物関連業者といった有識者に比較検討を依頼。そうして得られた選定結果への見解に記者の見立てを加味し、本稿にまとめた。
*以下、ハンターが作成した比較表は左からA社、早雲商事、クリーン北部九州。画像クリックで拡大

■「~と考えます」連発でも高評価

「こんな選定結果はあり得ない」――3人の有識者が口をそろえて同じ言葉を吐いた。記者も同感で、問題のプロポーザルでは、確実にA社の評価点が下がるよう仕組む一方で、無理に特定の業者の評価点が上げるような点数付けがなされていた。

A、B、C の3工区に分けられたごみ収集運搬の業者選定には、A・B両工区に5社、C工区に4社が応募した。開示された各社の「業務提案書」と評価点をみていくと、あることに気付く。

注目したのは、A・B両工区で1位となった早雲商事がA工区を辞退するという異例の展開になったことを受けて、C工区で1位になりながらこれを辞退し、空いたA工区に横滑りした格好となったクリーン北部九州の提案書。24項目の評価項目がある中、なんと27回も「~と考えます」という表現が使われていた。具体性が疑われる記述だが、不思議と同社の提案内容には一定の評価が与えられていた。

元官僚は、「他社の提案は、ほとんどが“~します”か“~する”といった確約を示すもの。クリーン北部九州の“~と考えます”や“予定です”は、楽観論や希望を述べたに過ぎず、提案内容を確実にやれる担保はないに等しい。いま現在がどうなっているかは関係なく、審査の段階では『弱い』と判断するのが妥当だった」と突き放した。

首長経験者も同様の見方で、「何故こうしたふわふわした提案に2位(A・B工区)あるいは1位(C工区)といった高い評価が与えられたのか疑問。誰だって違和感を覚えるはずですが……」と話す。

長く廃棄物に関する業務を行ってきた業界の古老からも、鋭い指摘があった。
「『市民への接遇』という項目や『収集箇所(集積所)の清潔保持』という項目の評価は明らかにおかしい。一般市民がみても、クリーン北部九州が最高点とは思わないでしょう。A社や早雲商事が勝っているのは、誰の目にも明らかじゃないですかね。特に、クリーン北部さんが『収集箇所(集積所)の清潔保持』という項目で答えた《ペットボトルの水を流す》は噴飯ものですな。水を流すだけで清潔が保持できるとは思えません。これが3社のうち1番の得点?いや、冗談でしょう(笑)」

■よくできた提案、虚偽の疑い

A、B両工区で選定1位となった早雲商事の提案内容については、記者はもちろん、検証を手伝った有識者たちも「真面目に勉強している」というのが第一印象。まるで役人が手を入れたかのような出来栄えの項目もあるのだが、前回の配信記事の通り、提案書の人員配置に関する項目で《A・B両工区で運転手3名、作業員3名の12名、予備運転手1名を加えた計13名を最低人員にする》と明記しながら、A工区を辞退した理由についてハンターの記者に尋ねられた同社の役員は、「もともと、(受注するのは)どれか一つの工区だけでよいと思っていた。C(工区)は不燃物の方だったので、最初から(プロポーザルに)入っていない。もし二つとっても(受注しても)、それはもうできない。人数も新たに集めないといけないし、一工区最低6人で、二工区なら12人。無理。だからひとつの工区でということ」と回答。できないことを承知で「できる」と偽った、いわゆる「虚偽申告」の疑いが生じる状況となっている。

■“仕組まれた選定”の証拠

業務提案書記載内容の信憑性に疑義が生じたり、業者の経営実態が不明であることが分かったりと(既報)、プロポーザルへの不信は高まる一方。しかし、最大の問題は、プロポーザルの実施要領を作成する段階で、特定業者を排除するため、その業者の評価点が極端に低くなるよう、市側によって細工がなされていた可能性があることだ。

下は、市の内部資料である『プロポーザル方式等実施調書』。プロポーザルに応募する際の条件として「田川市内に主たる事務所(本社又は営業所」を有する者であること」とある。

しかし、プロポーザルの配点を決める段階で、この方針は唐突に変わる。評価項目には『市内に本社を置いてからの営業年数』という一項が置かれ、「11年以上:5点、10年以下:2点、市内に本社を置いていない:0点」と一方的に評価点を決めていたのだ。つまり、何年、何十年と田川市内で仕事をしていても、存在するのが営業所なら0点ということだ。募集要領に示した条件との整合性は、まったくない。(*下、参照

ご丁寧なことに、この項目で審査委員が間違って「営業所」しか保有していない業者に加点しないよう、採点表には評価点を書き入れることができないよう事務方が点数を印字していた。(*下、参照

さらに、この会社所在地項目の係数は、かなり高い「0.8」。早雲商事は初めから5点あるため5×0.8=4点。審査委員5人で20点になる。クリーン北部九州は、同様に8点だ。こうした不自然な操作が行われたことで、各社の得点は下の赤い囲み部分のような結果になる。この項目だけでA社と早雲商事の差は20点、全体的に大した提案内容とは思えないクリーン北部九州との間にも8点の差が生じていた

田川市内に営業所を置いているA社の本社所在地は、同市と隣り合わせの大任町。しかも、ごみ収集運搬業務を民間委託するにあたって、同市が2年間だけ試験的に実施したC工区の業務を行っていたのはA社だという。そのA社が0点。A社排除を狙った、市側の策謀だったと見ることもできよう。

募集の段階で「田川市内に主たる事務所(本社又は営業所」を有する者であること」とした以上、「営業所」を有する業者にも点数が入るようにするのが公平・公正というものだ。しかし、営業所保有業者が0点になるよう評価方法を歪めたことで、この項目で生じた差が、最終的な選定結果に大きな影響を与えていた。

(つづく)

 

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