開催危機の「万博」|無責任体質を露呈した維新の会

大阪・関西万博の開幕まであと1年半あまり。パビリオン建設やインフラ整備の大幅な遅れが指摘されていたが、事態を重くみた国が、ついに重い腰をあげた。8月31日、岸田文雄首相は大阪府の吉村洋文知事や大阪市の横山英幸市長を官邸に呼び、関係閣僚らを交えて会合を開催、「国が前面に立って万博開催に向けて取り組む」と述べた。

■「大阪の責任ではない」― 維新・馬場氏の無責任発言

さっそく反応したのが日本維新の会の馬場伸幸代表。党の会合で、無責任にも「建設の遅れ、危ないんじゃないか、やれないんじゃないかと言われる。海外と日本の建設などのルールが違い、準備に時間がかかっている。万博は国の行事、国のイベントなので、大阪の責任ではなしに、国を挙げてやっている」と発言。万博について「責任は国」と押し付ける発言で逃げを打った。

大阪都構想が否決された後、維新の目玉政策は「万博」さらには跡地に計画するIR(カジノを含む統合型リゾート施設)だったはず。それを馬場代表はなかったかのように語るのだ。これは、それほど「ヤバイ」状況だということの裏返しだ。

一方、国は経産省中心の日本国際博覧会協会と大阪府、大阪市の「無責任体制」に業を煮やした形だ。写真の通り、会場となる大阪市此花区の夢洲は、ほとんどの部分が埋め立て地そのままの状態にある(下の写真)。

わずかに見えるのは、万博のシンボルとされる「リング」と呼ばれる大屋根の輪郭くらいだ(下の写真)。

万博に参加表明しているのは、世界153か国。日本政府館や地元、大阪府や大阪市、民間のパビリオンなどを含むと200近くになる模様だが、工事が遅れ開幕には間に合いそうもない。パビリオンには参加国自らが建設するタイプA、博覧会協会の建物を借りるタイプB、複数の国で一緒に使用するタイプCがあるが、計画通りに進まぬ状況にあわてた博覧会協会は、プレハブなどである程度の形にしたものを建設し、参加国が内装と外装を行う「タイプX」を追加している。

大阪府の吉村洋文知事は「新たな選択肢が増えたので、参加国が価値観を表現、発信できるようになればいい」と述べ、万博の延期については「一切、考えていない」と強気に述べた。だが、大手ゼネコン幹部はハンターの取材に「タイプXが追加になったから劇的に建設スピードが早くなるかといえばそうではない。万博は参加国に独創性、オリジナリティを競うもので、内装や外装だけでも大変な作業です。それに海外のパビリオンは原則、国際入札なので4か月くらいはかかります。現場での変更も日常茶飯事で、そんな簡単なものじゃない」と突き放す。

■大雨で浮上した重大な問題

そう語った大手ゼネコン幹部が、「もっと深刻な問題があることがわかりました」とスマートフォンを取り出した。画面にあったのは、トンネルが冠水し、水しぶきをあげて車が通っている動画の一場面だった。(*下の画像、参照)

今年6月2日、夢洲周辺は台風2号と停滞する前線の影響で大雨警報が発令され、100mmを超す激しい風雨に見舞われた。そのせいで夢洲と隣の咲洲を結ぶ「夢咲トンネル」の北行きが通行止めになってしまったのだ。スマホの動画は、その時の様子を記録したものだった。

確かに、大阪市の発表でも午前11時8分から夕方頃まで通行止めになったことが広報されていた。夢洲へのアクセスは、夢洲の北側にある舞洲との間にかかる夢舞大橋と夢咲トンネルの二つしかない。海外向け荷物を運搬するトレーラーの運転手がこう振り返る。
「昼前に夢洲に渡ろうとしたら、普段はガラガラの道がひどく渋滞し、車がまったく進みませんでした。仕方なく、大雨の中で歩いて確認するとトンネルに水があふれている。ひどい雨だったのは事実ですが、あの程度で冠水するのかと驚きました。台風が直撃したわけではなかったですからね。そこで、大回りして夢舞大橋から夢洲に向かいましたが夢咲トンネルが使えないので大渋滞。予定より3時間も遅れました。帰路は夢咲トンネルが通行できたので、そちらを通りましたが、反対側はすごい冠水で、とても通行は無理でした」

夢舞大橋も、2018年9月の台風21号で通行止めになった。また、2017年には台座ボルトが破損、全面通行止めにして緊急工事を行った過去もある。

夢洲にはすでに夢洲コンテナターミナルが稼働しており夢舞大橋と夢咲トンネルは、ともに1日あたり1万3千台ほどの通行量とされる。

大阪市の幹部は、苦り切った表情で次のように説明する。
「夢咲トンネルが冠水で北行きが通れなくなったのは初めてだと思う。全長2,100mのうち、海底部分が約800mの海底トンネルですので、地表で大雨が降ると一気に水が流れ込んできます。そこで、排水システムがあるのですが、想定以上で追いつかずに、通行止めとなってしまった。トンネルは片側2車線の合計4車線で、トレーラーが絡んだ事故で通行止めになったこともあります。その際は、解除までに3~4時間くらい時間を要しています。また、車やバイクに乗った暴走族のような連中が夜間、猛スピードで走り回ることもあり、通行制限をかけたこともありました。万博を控えて、インフラに大きな欠陥があることを露呈してしまいました」

万博への入場者予想は2,820万人、1日平均だとおおよそ15万人がやってくる計算だ。もちろんコンテナターミナルに向かう車は日常的にあり、制限することはできないので、通行量は現在の数倍になると見込まれる。

地下鉄も万博までには開通するが、こちらも夢咲トンネルに近い海底を通る地下トンネル。夢咲トンネルが冠水したことを考えれば、同じような事態が危惧される。

「インフラの問題はこれだけではない」と言うのは、前出の大手ゼネコン幹部だ。
「今後、電力使用量が飛躍的に増える。今の夢洲の状況では万博が開幕すれば電力が足らないはずです。とくに夏場はエアコンを使うので飛躍的に電力使用量が増す。万博の幹部もこっそり『夏場は危ない』と言っており、ヤバイ状況になることを認識しています。パビリオンの中には、自家発電設備やポータブル電源をかなりの数発注しているところもありますね。水道やトイレも同様です。こちらがきちんと施工しても肝心の電力や水道などインフラが整っていないとどうにもならない。無責任な大阪府・市からは、電力不足までゼネコンのせいにされそうで、よけいに万博関連の工事には腰が引ける」

進まぬ会場整備に業を煮やした岸田文雄首相が、「政府主導で」と関係閣僚に指示を出した大阪・関西万博。ある自民党の大臣経験者は、「岸田首相の『国が主導』発言は維新にはプレッシャーだ。維新も国が動かなければ万博が危ないということをようやく悟ったんじゃないか。解散総選挙も遠くない中で、維新は岸田首相から一本とられた格好になった」と話している。

維新の会主導で進められてきた万博を巡り、最も大切なインフラ整備さえおぼつかない現状であることがわかった。国がテコ入れするにせよ、開幕までは1年半。延期を決めるなら、早い方がいい。

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