今年4月の田川市議会議員選挙で6選を果たし、先月の臨時議会で議長に就任した陸田孝則氏(73)の選挙運動収支報告書に、借り受けた事務所の家賃が記載されていないことが分かった。ハンターは、市選挙管理委員会を通じ“記載漏れ”がないか2度も確認しており、意図的に事務所費支出を隠した疑いさえある。
■家賃は3か月で45万円
下の画像は、陸田議長が事務所として借りた一軒家。田川市選挙管理委員会に情報公開請求して入手した陸田陣営の「選挙事務所設置届」には、市内の住所地が記されている(*下の画像)。
住所地を確認したところ、該当する物件は下の画像にある一軒家だった。
同物件の登記簿を確認してみると、所有者は別の住所地に住む田川市民。自宅を訪ね直接物件の持ち主に取材したところ、正確な金額は言えないとしながらも、陸田議長と3カ月の約束で光熱水費込みの賃貸借契約を結んだという。
選挙事務所として届出がなされ、賃貸借契約書まで存在する以上、選挙運動費用収支報告書の支出欄に記載があるはずだ。しかし、陸田議長が選管に提出した収支報告書には、事務所家賃についての記載はどこにもない。
出納責任者に連絡をとろうとしたがかなわなかったため、22日、田川市議会の議長室に陸田氏を訪ねて話を聞いた。
陸田議長は、事務所家賃が不記載になっていることについて「出すの忘れたんかの」「私が扱ってないから、わからん」と無責任な態度を示した上で、「たしか1か月15万かなんかで借りたと思うよ」――。「わからん」と言いながら、家賃の金額は把握していた。物件所有者と陸田議長の話を合わせると、家賃は総額で15万円×3カ月=45万円だったことになる。
収支報告については事務局の出納責任者に任せていたというので当事者から電話をもらえるよう頼んだところ、即座に「いいよ」。記事の配信が明日(23日)であることも伝えておいたが、残念ながら出稿までに連絡はなかった。
■「不記載」は公選法違反
陸田議長の「出すの忘れたんかの」という、おとぼけを真に受けるわけにはいかない。じつは、ここに至るまでの過程で市選管に対し、陸田氏の選挙運動費用収支報告書について「記載もれがあるのではないか」と2度にわたって指摘してきたのだ。1度目は、事務所費以外の菓子代などの箇所に若干の修正。2度目は陸田氏への寄附を行った人物の住所の訂正が入っただけで、最後まで家賃支出についての追加記載はなかった。2度も「記載漏れ」について確認を求められながら、45万円もの支出に気付かないわけがない。
そもそも、公職選挙法は選挙に関するすべての収入と支出を備え付けた「会計帳簿」に記載し、選挙終了後は、これを決められた様式に従って選挙運動費用収支報告書に転記し、報告することを義務付けている。会計帳簿にある事務所費を見落とすわけがないのだ。
おかしな点は、まだある。陸田氏の収支報告書には、「家屋費」のページがあり、事務所に備品代やガス設備の工事費が計上されている。さらに、雑費としてガス代、水道代の支出もある。(*下の画像)肝心の家賃を「忘れた」というのは、かなり無理のある言い訳だろう。意図的に家賃支出だけを隠した疑いが否定できない。
いずれにせよ、事務所の家賃が「不記載」であることは事実。この状態のままなら、虚偽記載として公職選挙法違反となる。
ちなみに、陸田議長の選挙運動費用収支報告書には、同氏の議員としての資格が問われかねない重大な疑義が生じており、次の配信記事で詳しく報じる予定だ。