「一斉休校」に戸惑いと不安 保護者、教員の声

新型肺炎を引き起こすコロナウイルスの感染拡大を防止するため、政府は2月27日夕方、異例の緊急措置を全国に要請した。全国の公立学校に対し、3月2日(月)から臨時休校とし、春休みを前倒しにするというもの。対応は自治体によって、様々だが政府の要請通りに2日より臨時休業に踏み切ったところも多い。

一報を知らされた保護者や学校関係者はすぐさま家庭や職場で情報を共有した。同時に頭を悩ませたのは、翌週以降の子供の世話と、仕事の都合。学校は教育の場でありながら、子供を預かってくれる場所でもある。それが機能しなくなれば共働き世帯はもちろん、そうでない家庭や社会全体に大きな影響を及ぼす。対象学校の児童生徒を持つ保護者や、教師を取材した。

 

突然の一斉休校の通知

「スマートフォンに通知された速報をすぐに妻に転送した」と話すのは、福岡県在住の30代男性。小学1年の娘がいる共働き世帯だ。すぐに頭をよぎったのは、来週以降の子供の面倒。学校が休みになれば、その間こどもを誰がみるのか。どちらかがみることになれば、仕事を休まなければならない。仕事を休むにしても、職場にも迷惑がかかる。近くの親戚に預かってもらえないかと相談もしていた。

政府はあくまで休校の要請としており、実際の対応は自治体に委ねられるため、自治体レベルの判断が出るまでは何も決められない。モヤモヤした状態が続いていた。

 

期待したのは「学童保育」の存在。小学児童のいる共働き世帯では、放課後に児童を預かってくれる「学童保育」を利用するところも多い。春休みや夏休みなど長期休暇中は、学童保育が午前中から夕方まで対応してくれるため、保護者は平常の勤務形態を維持できる。政府は学童保育や保育所については、要請対象にしないとしていた。「来週から対応してくれれば、助かる」と思ったが、気になるのは結局、子供達が集団で活動すること。全校生徒ではないにしろ、数十人、数百人規模で学童保育施設にひとが集まる。休校させた意味はあるのかという疑問だ。

福岡県内のいわゆる「マンモス校」に子供を通わせる40代女性は「1000人近い全校生徒のうち、200人ほどが学童保育を利用している。学校に隣接した施設は、教室3つほどで狭い。人口密度で言えば、学童保育のほうが明らかに高い。保菌者がいた場合、逆効果になるのでは?」と対応を危惧する。
学童保育の現場も大慌てで、午前中からの稼働に向け、支援員の手配に動いた。足りない人員は、学校教諭に支援を要請し、穴埋めするところも出ている。
「学童保育の支援員にも、当然小さな子供を持つ方がいる。早い時間から学童保育が利用できればいいが、支援員さんはそれより早い時間に子どもを預けなければならない。無理は言えない。その方々のことを考えると、決してじぶんの家庭だけの問題ではない。決定から実行までとにかく時間がなさすぎる。」(福岡県在住40代女性)

 

困惑する教員も続出

教育関係者の混乱はさらに大きい。政府から発表があった夜、「明日(28日)学校に行くのが怖い」と話したのは鹿児島市内の小学校に勤める教員だ。
教育委員会からどのような決定が降りるのか、また保護者からの問い合わせが殺到するのではないか、不安でいっぱいだったと言う。その上で、今回の措置について、こう話す。
「解き放たれた子供達が人混みの中に行くのは目に見えているので、外出禁止等の措置を取るべきでしょうが、親は簡単に休めない。企業も休みにするなどの対応を取ってくれればいいのですが、急すぎてどこまでできるか。英断だと思いますが、思考が浅いと思います。全校で送り出せない卒業生がただただ不憫でなりません。」

 

高校までの子供を持つ保護者だけでなく、社会の至る所で影響が出るのは明らかだ。政府にとっても、苦渋の決断であることは間違いないが、取材でわかったのは、タイミングの悪さ。準備期間がなく、急ぎすぎたと言わざるを得ない。
政府は感染の広がりを甘くみすぎていた。入国制限など水際対策に全力を注いでいれば、事態は違っていたはずだ。すべては初期対応のまずさが始まりである

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