二階俊博元幹事長の凋落

二階俊博元自民党幹事長の「政界引退」記者会見から約1か月。同氏の地元である和歌山県にさらなる激震だ。

10増10減で3つの選挙区が2つに減少する和歌山県の新和歌山1区で、自民党公認候補として次期総選挙への出馬が決まっていた元沖縄北方担当相の鶴保庸介参議院議員が、衆議院へのくら替えを断念することが分かった。

◆   ◆   ◆

自民党の和歌山県連は、青年部が企画した近畿ブロック会議で「過激ダンスショー」を行っていたことが分かり大炎上。その後、裏金問題で批判を浴びていた二階氏の引退が決まった。今度は鶴保氏の衆院転身断念。自民党の和歌山県議が、こう打ち明ける。

「裏金3,500万円の二階先生は、自民党の処分前に政界引退。過激ダンスショーの影響もまだまだ残っている。鶴保さんは最近になって『維新に勝てないのではないか』とぼやきはじめていた。それを察知した県議や市議が根回しして、鶴保さんにキズがつかないよう、“くら替え断念”という方向に持って行った」

4月21日に和歌山県連では役員会を「過激ダンスショー」があったホテルで予定をしている。その席上で、鶴保氏が正式にくら替え断念を表明することになるという。

岸田文雄首相が4月28日投開票の衆議院の補欠選挙の後で、解散総選挙を目論んでいるというニュースが頻繁に流れる中、和歌山県は2つの選挙区で候補者が未定ということになる。

これまで二階氏に対抗して衆議院へのくら替えを狙っていた、安倍派5人衆の一角、世耕弘成参議院議員も離党勧告の処分を食らい、動けない状況。世耕氏はさらに「過激ダンスショー」の企画をしたのが元秘書の県議とあって、「一時、永田町発で和歌山2区にくら替えして無所属で出馬というニュースが流れた世耕さんですが、裏金と過激ダンスショーのおかげでお先真っ暗。来年夏の参議院選挙で野党がいいタマを立てれば世耕さんは勝てないという声しきりです。おまけに、世耕さんは近畿大学の理事長でもありますが、そちらでも退陣を迫られているとのこと。議員バッジも理事長の椅子も失いかねないほどの窮地で、くら替えどころではありません。ただ野心はたっぷりで、くら替えに向けて暗躍している」(前出の自民党の和歌山県議)

そうした中、自民党の和歌山県選出の国会議員で唯一“無傷”とされているのが、元総務相の石田真敏衆議院議員。現在は和歌山2区選出だが、岸田派に入り、次期総選挙では比例近畿ブロックの「上位で処遇」とされていた。

だが、鶴保氏のくら替え断念のニュースが流れると同時に、「石田氏が和歌山1区から出馬」という話が駆け巡る状況だ。

「大阪をはじめ、近畿では維新が強い。昨年の和歌山1区の補欠選挙でも自民党候補が維新に惨敗をしている。また、支持率低迷にあえぐ岸田首相が石田氏を本当に比例上位で処遇できるのか不透明。そこで石田氏は、小選挙区和歌山1区もしくは2区ででの出馬を狙っているというのだ。

鶴保氏は衆院選出馬見送り、世耕氏と石田氏は二階氏が出馬予定だった新和歌山2区をターゲットにしているという。

なぜ、急に動きが激しくなってきたのか?二階氏が引退表明したことに尽きるようだ。

「二階先生が引退を決めて、急速に“二階離れ”の現象が起きている。21日の県連役員会でも、県連会長の二階先生が出席するのかどうかがそう話題にならないほど。地元のメディアもまったく気にしておらず、早くも過去の人という感です。引退表明したので、一気に影響力がなくなり歯止めが利かない。みんな好き勝手に動き出している。鶴保さんなんて二階先生の了解がないと見送りなんて言えないはずなのに、無視して周囲にお膳立てさせている。石田さんも急に動き出して、小選挙区での出馬を岸田首相にアピール。世耕は離党しているから関係ないとばかりに、くら替えを公然と表明しつつある。みんな好き勝手にやっている。二階先生は後継を長男か三男に決めたいが、兄弟の仲が悪く、難航。衆議院選挙には三男、参議院選挙には世耕に代わって長男という二階家独占までささやかれていたが、このままなら和歌山2区は、二階先生の息子ではない人物が後継になるかもしれない」(前出の和歌山県議)

自民党幹事長としては歴代最長を誇り、永田町でも和歌山でも権勢を誇ってきた二階氏。牙城を崩そうと挑んできた世耕氏をことごとくはねのけ、他の政治家にも付け入る隙を与えなかった。しかし、裏金事件による政界引退で「ご威光」は急降下。二階王国と呼ばれた和歌山は、一気に戦国時代となりそうだ。

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