田川郡内にある8市町村で構成する「田川郡東部環境衛生施設組合」(組合長:永原譲二大任町長。田川市、大任町、川崎町、添田町、赤村、糸田町、福智町、香春町で構成)の市町村長らが情報公開に関する勉強会の内容に言いがかりをつけ、主催した議員に謝罪するよう「脅迫」した問題を巡り、大任町以外の7市町村が、同組合が整備を進める施設建設に関する文書を一切保有していないことが明らかとなった。7市町村は、数十~数百億円の公費が投じられる施設建設工事の契約書さえ保有していない。
建設工事の詳細を把握せぬまま当該事業の妥当性を主張したことになり、脅迫行為に走った首長らの責任が問われる事態となりそうだ。
■説明責任果たせない疑惑の巨額公共事業
永原譲二大任町長らが勉強会の主催者に出した「脅迫文書」は、単なる“言いがかり”に過ぎない(既報)。その脅迫文書の中でハンターが注目したのは、田川郡東部環境衛生施設組合が整備を進める田川クリーンセンターやごみ焼却施設、最終処分場についての組合側の言い分だ。
“福岡在住の児嶋代表が大任町に建設中の当該施設について、知る由もなくこの勉強会に先立って、誤った内容が、事前に説明したのではないかと想定されます”
“田川クリーンセンターやごみ焼却施設、最終処分場については、構成市町村議会の厳格な審議を経て、地方自治法に基づく議決をいただき、大任町へ事務委託され、実施されている議会等で機会あるごとに財政状況や進捗状況を説明している”
“当該事業を推進するにあたって、構成市町村の厳格な討論の後、議会議決を経たにも関わらず、事業費用及び事業推進について、当議会行政報告において機会あるごとに報告している”
文書に出てくる田川クリーンセンター(汚泥再生処理センター)、ごみ焼却施設、最終処分場は、いずれも大任町内に整備される施設。これまで報じてきたとおり、工事発注者である大任町は、一連の工事の積算書、施工体系図、参考見積り、入札結果表といった他の自治体では当たり前に開示される文書を非開示にして、事業の検証を阻んできた。
昨年9月には情報公開条例を改悪し、開示請求権者を「何人も」から「町の区域内に住所を有する者(請求日から起案して1年以上住所を有する者に限る)」に変えるという暴挙にでており、町外からの事業検証は不可能になっている。
では、「機会あるごとに財政状況や進捗状況を説明している」、「事業費用及び事業推進について、当議会行政報告において機会あるごとに報告している」とする田川郡東部環境衛生施設組合の構成自治体は、どこまで建設工事の中身を知っているのだろう――?
ハンターは、「脅迫文書」の存在を知った直後の7月中旬、市外からの開示請求を受け付けていない大任町を除く、田川市、川崎町、添田町、赤村、糸田町、福智町、香春町の7市町村に、同じ内容で情報公開請求を行った。請求したのは「田川郡東部環境衛生施設組合が整備する汚泥再生処理センター、ごみ焼却場、リサイクルセンター、最終処分場などの建設工事の積算書、参考見積り、施工体系図、契約書、入札結果表」である。
これに対し、7市町村からの回答はみな同じ内容で「当該文書を保有していない」「不存在」「取得していない」などというもの。つまり、大任町以外の7市町村は、すでに完工、あるいは着工した施設整備工事について、妥当か否かの判断ができないということだ。「機会あるごとに財政状況や進捗状況を説明している」、「事業費用及び事業推進について、当議会行政報告において機会あるごとに報告している」とする主張には、前提となる説明根拠がない。
施設建設の詳細を検証することができない状態でありながら、問題の脅迫文書に押印し、「議会報告しているから問題ない」「批判は許さない」――。これほど無責任かつ乱暴な話はあるまい。地域住民への説明責任も果たすことができないため、事業の正当性にも疑問符が付く状況だ。
田川郡東部環境衛生施設組合の事業として大任町が単独発注して契約が終了したのは、完成した「汚泥再生処理センター整備工事」(契約金額89億8,560万円)や着工済みの「大任町ごみ処理施設整備工事」(契約金額220億円)など。巨額の公費が投じられる事業でありながら、同町が情報公開に応じないため、噂されてきた工事費の水増しや裏金の動きについて検証できない状態が続いている。当然、組合を構成する7市町にも責任はある。