終わらぬ安倍派の内紛|元凶は森元総理? 

自民党の最大派閥、安倍派(清和政策研究会)は8月末に総会を開催、塩谷立衆議院議員を座長として「常任幹事会」を設置し、10人ほどの幹部による集団指導体制をとることを正式に決めた。内閣改造や党の人事を前に結束を図りたいところだろうが、派閥トップの座を巡る内紛は収まりそうにない。

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「10人ほど」とされる幹部に誰が入るのかが注目されていたが、塩谷氏に加え「5人衆」と呼ばれる萩生田光一政調会長、松野博一官房長官、世耕弘成参院幹事長、西村康稔経産相、高木毅国対委員長のほかに西村明宏環境相、岡田直樹行政改革担当相、稲田朋美元防衛相、柴山昌彦元文科相といった顔ぶれが選ばれた模様だ。処遇に注目が集まっていた会長代理の下村博文元政調会長は外されている。安倍派のある衆院議員は眉をひそめてこう話す。
「塩谷氏は総理を狙うことはないと宣言している。一方、下村氏は総裁選に出馬する意向を持っている。5人衆にとっては、下村氏は年齢的にも上で当選回数も多い。やりにくい相手だった。塩谷氏を前面に出して、有力なライバルである下村氏を外すしかないと、将来の総理・総裁を目指すメンバーが同調した結果でしょう。それも下村氏がパラオに外遊中に、塩谷氏が5人衆と密談して決めた。あまりに露骨ではないかとの声も出ている」

ドタバタが続く安倍派だが、当初は、安倍晋三元首相の急逝から1年で新会長を決めようという意見が多かった。しかし、5人衆の主導権争いが派閥内で激化。派内の参院議員は迷惑顔だ。
「昨日、萩生田さんから誘われると、今日は世耕さんから声がかかり、松野さんからもいつなら時間があるんだと……。別の人からは『オレの飲み会に来ないのはどうしてなんだ』と小言を言われる始末。派閥の中が殺伐としてしまった。会長は決めずに常任幹事会を置くというのも、みんながもろ手を挙げて賛成したわけじゃない。とげとげしい空気感に嫌になって、とりあえず決めないとどうにもならなくなった。反対するにも疲れる。そうして決まったというだけ」

一方、外された下村氏は常任幹事会の設置に反対し、新会長を決めるのがスジだと一貫して塩谷氏と対立してきた。

下村氏は衆議院当選回数9回、政調会長や文科相などを歴任し、2021年の自民党総裁選にも出馬の意欲を見せていた。年齢的にも岸田文雄首相より上で、次の総裁選がラストチャンスだというのが周囲の一致した見方。“5人衆を押しのけて新会長になれる”と自信を持っていただけに、派内での下村氏の評判は決して悪くない。

「下村先生は、『最大派閥に会長がいないのはおかしい』『集団指導体制ではなく、会長を決めるべき。派閥で選挙をやって決めてもいい』と訴えていた。最大派閥のトップは総理を目指す立場。会長選挙で勝負しようというくらいの強い思いがあって当然のことだ。下村先生の話はもっともだというメンバーはたくさんいた。しかし、安倍派は森(喜朗・元総理)院政になっており、下村先生の意見に賛同したくとも、できないだけだ」(前出・安倍派の衆議院議員)

憲政史上、最長の総理在任期間となった安倍元首相。その存在感の大きさに、誰が会長になっても「小粒」に見えるのが実情だ。そこで隠然たる力を発揮しはじめたのが、森元首相である。

東京地検特捜部が立件した東京五輪談合では事情聴取まで受けた森氏だが、捜査が終結し、安倍派が混迷しているとみるや、しゃしゃり出てきた。森氏の地元、石川県の北國新聞がはじめた連載『総理が語る』は現在まで16回を数えるが、うち4回には森氏本人が登場した。

8月7日の記事では《きょう(8月3日)、この事務所に、西村(康稔経産相)さん、松野(博一官房長官)さんがそれぞれ来ましてね。清和政策研究会(自民党安倍派)の新体制について話しました。萩生田(光一政調会長)さん、高木(毅国対委員長)さん、世耕(弘成参院幹事長)さんを含めた例の5人は、会長代理の塩谷(しおのや)(立(りゅう))さんを当面の座長か代表かに立 て、5人で支えていくことにしたようです。直参の最長老格である塩谷さんにとってはそれが一番いい》と安倍派の人事について上から目線で評論する一方、《下村さんがこの事務所に来ました。“何とか私を会長に”と言うんですが、『それは私が決めることじゃない。みんなが決めることだが、君には味方がいないじゃないか。だったら自分はどうあるべきか考えてみたらどうだ』と伝えたんです。“今までのご無礼をお許しください”と土下座までするので、『君は私に無礼を働いたのか。その自覚があるのなら私は絶対に許さない。帰ってくれ』と言ったんです》、《下村さん、外では“森会長の了解を得た”と言っているらしい。そんなふうに私を使うんです。塩谷さんを座長か代表かにするのはそういう連中から切り離す狙いもある》と下村氏を酷評していた。

つまり、常任幹事会の顔ぶれも、森氏の意向通りの人選になっているということだ。

永田町では、北國新聞の連載が注目の的で、記事が出るたびに拡散しているという。

今年2月27日の北國新聞には《「北國新聞、読みましたよ」 岸田首相、森氏に声掛け》という見出しで、岸田首相が森氏に「連載を読んでいる」と語った内容の記事が出ていた。調子に乗る森氏に、自民党幹部は苦い表情だ。
「安倍派について語るだけならいいが、森氏は『茂木幹事長は財務相か外相でもいい、小渕優子が幹事長だ』などと言いたい放題。『岸田首相とも会うので相談があるのかもしれない』とまで語っている。下村氏についても、むちゃくちゃなことを言っており、彼のメンツは丸つぶれです。森氏のキングメーカー気取りには安倍派だけではなく、党内からも批判が多い」

下村氏は周囲に「森さんのせいで会長が決められない。天国で安倍元首相は嘆いているんじゃないか」と語っているという。さすがに下村氏もここまで森氏にコケにされると黙っていられないようで、周辺からは物騒な話も聞こえてくる。
「下村先生が派閥を割るかもしれない。そのきっかけを作っているのが森氏さんですよ」(安倍派の議員)

「老害」を体現している森氏は、一刻も早く政界から退場すべきではないのか?

 

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