茶どころ八女・疑惑の土地買収と三田村市政の闇

2015年5月、西日本新聞の朝刊に、福岡県警が贈賄容疑で元立花町議会議員を逮捕したことを報じる記事が掲載された。事件は、八女市が計画する市道改良工事の用地買収を巡って元町議とその娘が共謀し、移転補償費を支出させる目的で市幹部に現金約200万円を渡そうとした、というもの。報道と同時に、茶所・八女が騒然となったのは言うまでもない。

市の関係者によれば、元町議の娘が現金を渡そうとした場所は市役所の中。突然の現金供与に驚いた幹部は、“これはまずい”とばかりに八女警察署に駆け込んだのだという。市幹部が受け取りを拒否したため“贈収賄事件”にはなっていない。

実は、この贈賄事件に登場する「市道改良工事」のために市が買収したとされる元町議の関係する土地こそ、ハンターが今年8月からシリーズで報じてきた公園整備事業疑惑の発端なのである。

■隠蔽で墓穴

もう一度、これまで報じてきた内容を整理しておきたい。8月、ハンターから「矢部川水辺公園(仮称)」関連文書の情報公開請求を受けた八女市は、編入合併前の旧立花町が行った用地買収に係る文書を、実際には保有しながら“不存在決定通知”を発出。事案の隠ぺいに走る姿勢を鮮明にする。

その後の取材で、八女市が隠そうとしたのが旧立花町時代の土地買収に関する文書ではなく、2015年(平成27年)から16年(同28年)にかけて三田村市政下で買収した6筆・2,138㎡に及ぶ「余分な土地」(市関係者の指摘)だったことが判明。さらに、情報公開で入手した資料から、「八女市内で公園を整備する予定はない」と断言していた福岡県が矢部川の河川敷に「矢部川親水公園」を計画していたことも明らかとなった。八女市は、最初の下手な隠蔽工作で墓穴を掘った形だ。

■背景に三田村市長と逮捕された元町議の関係

では、いったんは存在を認めた文書を、「不存在」と偽ってまで公園整備事業の詳細を隠そうとした理由は何か――。八女市に付き合った形の県側の事情は別にするとして、市が公園整備事業の詳しい内容を隠そうとしたのは、贈賄事件の背景が知られることを恐れたからに他ならない。

繰り返し述べてきた通り、市が最も隠したかったのは、贈賄容疑で逮捕された元町議の身内が所有する土地のことだ。この点について、ある市関係者が次のように証言している。
「ハンターの情報公開請求に対して、すぐバレるような隠蔽をした理由は一つしかない。三田村統之市長と事件を起こした元町議の古くからの深い関係を知る市幹部らが、公園整備事業の裏を知られたくなかったからだ。元立花町議の身内の名義になっていたところは、市にとっては余分な土地。買う必要がなかった。旧立花町の公園整備計画には、入っていなかったからだ。立花町の公園整備計画は、国の補助事業だった集団移転に伴ってできた跡地を、有効利用するため考えられた策。そもそも、事業の対象地は公園を造っても人が来そうもない場所だ。駐車場を何カ所も設置する計画になっているようだが、そうするしかなかったということだろう。市長と元町議のただならぬ関係から、(問題の土地を)市が無理して取得することなったと聞いている職員は少なくない。当時の担当部長が、職員を前に裏話を披露したこともある。土地買収の動機そのものが、不純だったということ。市長や市幹部の背任行為と言っても過言ではないだろう」

別の関係者も、市幹部を厳しく批判する。
「大変申し訳ないことだが、問題の土地買収は、つまりは市長の尻ぬぐいを、市民に押し付けたということです。土地買収の原資は税金ですからね。必要のない土地を、大金はたいて買ったということですから、背任行為と言われればそうでしょう。道路の拡張なんて、後付けの理由ですよ。その証拠に、道路整備のために買収した土地のほとんどが、その何か月後かには公園用地になっている。あり得ないでしょ、そんなこと。理屈をひねり出した市の幹部たちは、大変だったと聞いてます。ぼやきますよね、職員はみんな悪いことなんてしたくないんですから。自然と職員の間で噂が広まる。方針を決めた市長や幹部らは、市民に対しどう責任をとるというのか、聞いてみたい」

「八女市が元立花町議の身内から買収した土地は、道路整備ためでも公園整備のためでもなかった。背景にあるのは、市長の金銭問題だ」――。取材した複数の市関係者のすべてが、こうした“真相”を知っているのが実情だ。つまり、“土地買収ありき”で始まった話であり、そのため買収理由を道路整備であるとか、公園整備に求めざるを得なかったということだ。計画性がなかったことは、時系列に従ってまとめた疑惑の土地を巡る一連の動きをみても明らかだ。

前掲の新聞記事では、問題の土地が「市道改良工事」のために買収されたことになっている。しかし、それはあくまでも表面的な理由。市道の拡幅は公園整備に伴うものであって、単独で計画されるべきものではなかったはずだ。上の表で分かるように、問題の土地買収が進む中、唐突に公園整備の基本構想が出来上がり、贈賄事件へとつながっていく。すべての「整備計画」が後付けであったため、一般的に自治体が行う土地買収の手順が、このケースでは守られていない。

下は、問題の土地の「鑑定評価書」だが、赤いアンダーラインで示した発行日付は「平成27年9月30日」となっている。

一方、前掲の表で明らかなように、八女市が問題の土地のうち306.66㎡の売買契約を結んだのは同年8月19日(下の契約書参照)。つまり、八女市は土地の鑑定評価を行う前に、一部の土地買収を終えていたということになる。計画性のなさは歴然としており、土地取得自体の正当性が問われる事態と言えるだろう。

さすがにまずいと考えたのか、市長をはじめとする八女市の幹部らは、鑑定評価書の提出を受けて、土地売買契約書の金額を変更する決裁を行っていた。(*下がその決裁文書。赤い囲みはハンター編集部)

新聞報道によれば、元立花町議側が市役所に持参した200万円の現金は、売買された土地家屋の移転補償費を市に支出させるためのものだったとされる。しかし、事件後であるにもかかわらず、市は移転補償を行っているという。土地の買収費に加え、移転補償費まで出した三田村市政――。疑惑の闇は、深い。

(以下、次稿)

 

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