安倍晋三元総理の射殺事件で、山上徹也容疑者の犯行動機として名が挙げられた、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)。永田町周辺では、旧統一教会と関係が深い議員たちに緊張が走っている。
その原因の一つが、旧統一教会の霊感商法や合同結婚式といった問題行為を暴いてきた「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の弁護士やジャーナリストらが作成したとされる『統一教会と関わりを持った国会議員たち』というリスト。A4サイズ17枚には、98人の現職国会議員の名前が記されており、うち野党・無所属議員は11人で、残りはすべて自民党となっている。
■統一教会から「指令」を受けた二階派元閣僚
リストにある政治家の多くがやっているのは、旧統一教会関連イベントへの参加と祝電。しかし中には、政治資金を提供されたり、協会関連メディアのインタビューに登場したりするなど、深いつながりを示すケースもある。そこに、山上容疑者の凶弾に斃れた安倍元総理の名前があるのは言うまでもない。元総理関係では、《2013年参院選で統一教会に北村経夫(参議院議員)への組織票依頼》、《2015、2016年「桜を見る会」に統一教会関連団体幹部を招待》など生々しい記録が残っており、旧統一教会との関係の深さをうかがわせる。
二階派の閣僚経験者も登場する。《2017年2月、韓国で開かれた統一教会による世界平和国会議員連合の総会で同教団の韓鶴子総裁から統一教会を国の宗教にするという“国家復帰”指令を受任》、《2017年7月、統一教会の誘いで外遊、ワシントンDCの米下院議員会館で「韓米日の国会議員カンファレンス」やNYの国連本部で「韓米日有識者懇談会」、MSGで韓鶴子主賓の超宗教フェスティバル「真の父母様マジソンスクエアガーデン大会に参加》なと、信じられない記述がある。
信教の自由は憲法で保障されているものだ。それを特定の、しかも反社会的な活動で問題になった旧統一教会を国の宗教にせよとの「指令」を受任したというのだから、呆れるしかない。事実なら、国会議員としての資格はない。
リストへの記載はないが、その元閣僚の資金管理団体は2018年10月、旧統一教会の政治団体「国際勝共連合」に対し会費2万円を支出していたことが分かっている。
■統一教会が参院議員の「後援組織」
旧統一教会の傘下団体である「世界平和連合」との密接な関係が明らかとなっているのが、自民党岸田派の小鑓隆史参議院議員。リストには《2018年、世界平和連合関係者が後援会「隆和会」を立ち上げ》と後援会の面倒を見てもらっていたことが記載されており、2018年5月21日には、小鑓氏自身が旧統一教会の関係者との写真付きでツイッターに次のような投稿を行っていた。
リストには別に、《2021年11月、世界平和女性連合セミナーに参加》ともあり、参議院選挙を控えていた小鑓議員が、旧統一教会とのパイプ作りに腐心していた様子がうかがえる。
■稲田元防衛相、統一教会とのつながりをHPから削除
リストに《2019年10月5日、名古屋のキャッスルホテルでUPFが開いた国際指導者会議「ジャパンサミット&リーダーシップカンファレンス」に参加、主賓講演の韓鶴子に檀上で花束を贈呈》とあるのは、江島潔参議院議員。江島氏は安倍氏の地元、山口県下関市長から参議院議員に転身した元総理の側近の一人である。
そして、安倍派の大物・稲田朋美元防衛相は、2010年4月に旧統一教会関連のイベントに参加し、自身のホームページで“世界平和女性連合福井県連合会の「春のつどい」に出席しました。(福井県職員会館にて)”と報告していたが、安倍氏の射殺事件後、急に削除している。
■日本維新の会も・・・
また、リストにはないが、日本維新の会のメンバーも旧統一教会と関係を有している。今年4月19日に“皆さま こんばんは!先日 #高木かおり は、#世界平和女性連合 大阪南創立30周年記念にお招きいただき、壇上にてご挨拶をさせていただきました”とツイッターに投稿してしていたのは、同党の高木かおり参議院議員。先の選挙で2度目の当選を果たしたばかりだ。
また、同党の馬場伸幸共同代表も、2014年12月に世界平和女性連合のクリスマスパーティーに出席して挨拶を述べていたことが、維新所属の堺市議、池田かつし氏のフェイスブック投稿から確認できる。
旧統一教会の新聞「世界日報」(1月1日)には、馬場共同代表、自民党憲法改正実現本部の古屋圭司本部長、国民民主党の榛葉賀津也幹事長の3人が、『2022年憲法改正 わが党はこう挑む』というテーマで、そろってインタビューを受けている記事が掲載されている。
リストを見たというある自民党の閣僚経験者は、こう話す。
「旧統一教会がいかに政治に食い込んでいるかよくわかるリストだ。表面的には、集会出席、祝辞が多い。しかし、国際勝共連合を通じての秘書の提供、パーティー券の購入などカネ絡みの話も少なくない。(旧統一教会が)維新に手をのばしはじめたのも、憲法改正と維新の与党入りを見越してのことではないか」
旧統一教会のような反社会的な宗教団体に食い込まれ、それを認識できないような政治家ばかりでは未来は暗い。