鹿児島県の非常識|鹿児島市内にある住宅地「松陽台」の真ん中に九電の資材置き場|隣地に児童クラブと市営住宅
昨年12月、鹿児島市松陽台町一帯に1枚の文書がポスティングされた。文書を発出したのは鹿児島県。「松陽台町住民の皆様へ県からのお知らせ」と題するそのペーパーの内容は、町内の一角にある県有地に九州電力送配電株式会社が資材置き場を設置するというものだった。ハンターには、文書が配布された直後から県の方針に対する懸念や批判といった声が複数寄せられるように――。現地取材してみると、問題の土地が(*下の写真)が、資材置き場としては到底認められない場所であることが分かった。
■明らかに危険施設
下が昨年12月に松陽台町一帯に配布された県のお知らせ文書だ。
タイトルの下には「県有地の利用について(市営住宅横の敷地)」とある。図面のあとには「敷地内の資材の管理及び車両の出入りについては、安全対策等に十分配慮」と記されている。つまり、危険性がある施設ということだ。早速現地を取材し、資材置き場を中心とする周辺施設等の位置関係を確認した(*下の画像参照)。
九電送配電の資材置き場は、住宅地の真ん中に位置しており、すぐ横はお知らせ文書の記載通り「市営住宅」だ(*下の写真)。
驚いたのは、資材置き場入口前の細い道をはさんだ反対側に「児童クラブ」の建物があることだ。子供たちが行き交うであろう道路を、九電の工事用資材を積載した大型車両が走り回る光景を想像するとゾッとする。
■守られなかった「商業施設」誘致
改めて資材置き場の場所を確認するため、県住宅供給公社のホームページから引用した現地図が下(*赤及び茶の書き込みはハンター編集部)。資材置き場の左側には、県住宅供給公社が分譲した「ガーデンヒルズ松陽台」が広がる。児童クラブや市営住宅、県営住宅の位置関係も前掲の写真で示した通りだ。
ガーデンヒルズ松陽台は県住宅供給公社が販売した分譲地だ。上掲の図の内のピンクで色分けした約5.6ヘクタールの土地も同公社が所有していたが、販売不振による赤字を補填するため、県が約30億円もの税金を投入して取得。住宅政策失敗の穴埋めを、県民に押し付けた形となっていた。
そこに、地元住民の反対を無視して建設が強行されたのが「県営松陽台第二団地」。県は、2013年から約10年かけ328戸を整備する計画だったが、場所の不便さもあって何度も入居条件や建設戸数を変更。最終的には、小学生がいる家庭向けの子育て支援住宅として228戸を造る予定となっている。
住宅政策の失敗例であるガーデンヒルズ松陽台の開発を巡っては、当初、同地の分譲を行ってきた公社が宣伝文句にしていた「商業施設」や学校の整備という約束が守られていないことを何度も報じてきた。松陽台町の住宅建設は進んできたが、歩いて行ける範囲にスーパーマーケットはもちろん、コンビニさえないというのが実情だ。
県への情報公開請求で入手した資材置き場関係の文書には、「商業施設」がカラ証文になったことを示す証拠が含まれていた。それが下の画像である。
この看板は九電側によって撤去されているが、県が「商業施設」の誘致を断念した証拠と言えるだろう。県から入手した資料によれば、当該地の賃借期間は令和7年1月から同9年3月までの約3年間。使用料は1,263万9,326円となっている。高いか、安いかではなく、商業施設誘致を断念し、資材置き場として使用させること自体が大きな問題なのだ。県には約束違反の責任がある。
前述したとおり、県営松陽台第二団地は小学生のいる家庭向けの子育て支援住宅。これまでに整備された200戸以上の住宅の多くに、小学校や中学校に通う子供たちがいる。その子供たちは、「鹿児島市立松元小学校」に通うため、地元の上伊集院駅から一つ先の駅である薩摩松元駅まで“電車通学”を強いられる。九電の資材置き場は通学路に面しており、事故の確率が低いとは言えまい。
鹿児島市内の中心地に位置する鹿児島中央駅から松陽台町があるJR鹿児島線上伊集院駅までは二駅、約10分。車だと30分以上かかる。保育所・幼稚園も小・中学校も整備されていない上、述べてきた通り商業施設もない。そこに当初計画にはまったくなかった九電の資材置き場――。鹿児島県は、県民の安心・安全に無頓着ということだ。