自民党大阪の乱

かつて小泉純一郎元首相が仕掛けた郵政民営化をめぐる「郵政解散」。民営化に反対した候補者に対して送り込まれたのが「刺客」だった。その代表格だった佐藤ゆかり氏が7月18日に地元大阪11区の枚方市で記者会見。「政界離脱」という奇妙な説明を展開した。次期解散総選挙には出馬しない、しかし民間人として「公的なかかわり」は続けていくというもの。会見の内容からいって完全に「政界引退」なのだが、“支部長失格”の烙印を押した党への不満を隠そうともしない。

大阪では、他にも事実上の「支部長更迭」を宣告された政治家が二人。関西圏で強固な地盤を持つ日本維新の会との戦いを前に、「自民党大阪の乱」への注目が集まっている。

◇   ◇   ◇

2021年の衆議院選挙、2022年の参議院選挙、そして今年の大阪府知事選・大阪市長選と、維新に負けっぱなしの大阪自民党。ついに茂木敏充幹事長が自ら乗り出して「大阪刷新本部」を設立。大阪府内10の小選挙区で支部長の公募を発表した。

元職の佐藤氏は11区の支部長だったが、「更迭」されてしまったのだ。公募に手を挙げることができた佐藤氏だが、撤退を決めたという。

「20年間自民党で政治をやってきたが、終止符を打つ」「党本部がいきなり公募をかけたのが直接の引き金。地元で熾烈な活動している同志なのに、支部長を差し替えかえる動きはおかしい」とクレームをつけながらも「この機に潔く辞めるのが政治の道筋」
と理由を説明した。

佐藤氏が落下傘で大阪11区にやってきたのは2014年。3度の衆議院選挙で小選挙区1回、比例復活2回、計3度の当選を果たしている。しかし、その間は地元でトラブル続き。大阪11区の関係者から民事訴訟を起こされたり、地元企業から受け取った不透明な100万円が問題になるなど、大阪11区の自民党関係者が、にこやかにこう話す。
「佐藤がいる間、大阪11区はずっとギスギスしていた。支部長の更迭は当然のこと。佐藤の『俺様政治』は本当にひどかった。地元活動はしない、どこにいるのかもわからない、約束はドタキャン、地元を離れて東京にばかりと訳が分からない。地元でイベントに参加すると、先に維新の現職議員の名前が呼ばれます。当然のことですが佐藤氏はそれに怒って主催者に文句を言う。あんな人とは、とてもやってられません。佐藤は公募に応じることもできました。しなかったのは選考で負けてしまうからでしょう。プライドだけはやたら高いので、負けたら格好つきませんからね。いなくなってよかった、スカッとしたという自民党員は少なくないですよ」

「更迭」された支部長は、大阪11区の佐藤氏だけではない。大阪4区の中山泰秀元防衛副大臣や大阪17区の岡下昌平元内閣政務官などの元職もそうだ。

中山氏は東京に出向き、党本部で茂木幹事長や森山裕選対委員長に直談判した。その際、前回の衆議院選挙の「惜敗率」を問題にし、支部長が継続となった大阪1区や2区の元職より「私の方が、惜敗率は高い数字だった。党本部はどう考えているのか」「派閥が関係しているのではないのか」と怒りを露わにしたという。

残った元職3人の支部長のうち2人が岸田派で1人が茂木派。総裁と幹事長の意向が働いているではないかと言いたかったらしい。ある自民党幹部は、中山氏の主張について次のように突き放す。
「自民党が支部長を変えるなんて異例も異例ですよ。党本部としては何度も調査をかけ、数字を精査して支部長の更迭を決めました。中山さんはすごい勢いでテレビカメラに文句を言っていましたが、はよく考えてほしい。落選中、地元でどれだけ活動していたのか。地元をあけて何度海外に行っていたのか。岡下さんも、地元活動には問題があった。『新幹線のグリーン車で足を大きく広げて2席分を占領して座っている。国会議員だった人がそれでいいのでしょうか』というクレームも来ていました。落選中にもかかわらず、まわりが見えていない人では維新の勢いに対抗することはできません。中山さんや岡下さんにはイメージの問題がありますから、(更迭は)当然のことですよ」

中山氏はハンターで既報の通り、2021年に日本大学の汚職事件で逮捕された医療法人「錦秀会」の前理事長・籔本雅巳被告が有力なスポンサーで、同会側から多額の寄付を受けていた。地元では、安倍晋三元首相に籔本被告を紹介したのも中山氏ではないかと言われていた。

一方岡下氏は2017年、武田良太元総務相が若手議員を引き連れて訪米した際に同行。旧統一教会系新聞社「ワシントンタイムズ」を訪問していたことが分かっている。「旧統一教会」という火種を抱えているのは間違いない。

ライバルである日本維新の会は、都構想絡みで手を組んでいたで公明党と決別。公明が議席を有する4つの小選挙区に候補者を立てるため、予備選を開始している。自民党も準備を急ぐ必要がある。

「大阪での公募はすごく反応がよく、かなりの数がきています。中山さんや岡下さんはいわゆる世襲で、自民党が嫌われているポイントでもあります。中山さんも岡下さんも、地元でしっかり活動していれば公募で簡単に選ばれるはず。その自信がないのでは、と感じますね。いずれにしても解散総選挙は遠くない。早急に支部長を決めていきます」(前出の自民党幹部)

自民党「大阪の乱」はいつ収拾するのだろうか?

この記事をSNSでシェアする

関連記事

注目したい記事

  1. 正月気分が抜けきれない1月16日、西日本新聞朝刊に久留米商工会議所会頭本村康氏のインタビュー記事が掲…
  2. 幹部警察官による不当な捜査指揮や情報漏洩に揺れる鹿児島県警察が職員の不祥事の捜査記録の開示請求に「存…
  3. 岸田文雄首相のおひざ元である広島の自民党県連で会長代行を務め、「広島のドン」と呼ばれる中本隆志氏県議…
  4. 警察組織の良心にかけてみようと考えたハンターの記者が愚かだった。 不当な捜査指揮で強制性交事件…
  5. 2022年に事故死したタレント・仲本工事さんの妻が、近く複数の週刊誌に損害賠償を求める裁判を起こす。…




LINEの友達追加で、簡単に情報提供を行なっていただけるようになります。

ページ上部へ戻る