安倍昭恵夫人「台湾訪問」の裏

安倍晋三元首相の銃撃事件から1年。昭恵夫人の姿は、なぜか台湾にあった。

安倍元首相は台湾と関係が深く、衝撃的な死は台湾でも大きく報じられた。首相退任後のシンポジウムで「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と発言して、中国の態度を硬化させたことも――。蔡英文総統が選挙前に山口県を訪問した時は極秘裏にあったのではないかとの噂も流れていた。昭恵夫人訪台の裏に、何があったのか――。

■訪台目的は「銅像」との対面だったが……

台湾では、有志がいち早く安倍元首相の銅像を建立しようという機運が盛り上がり、寄付が募られた。台湾第2の都市、高雄市の「紅毛港保安堂」に銅像が設置されたのは昨年9月。今回、台湾を訪問した昭恵夫人の目的は銅像との「対面」で、民間団体の招き、という形になっていた。

7月17日、台湾に到着した昭恵夫人の「歓迎会」にやってきたのは、来年1月の総統選に蔡英文総統の後継者として民進党からの立候補が予定されている頼清徳副総統。そこに同席していたのは、昭恵夫人に同行していた山谷えり子参議院議員と現地で合流したとみられる北村経夫参議院議員だった。

翌18日に高雄市へ銅像との対面に赴いた昭恵夫人。そこには、山谷氏の他に自民党のトラブルメーカー・杉田水脈衆議院議員と原田義昭元衆議院議員の顔があった。

昭恵夫人は台湾訪問について、「東日本大震災の時もいち早くご支援をくださりました」「日本からの留学生の奨学金もいただいている。若い人たちが台湾との関係をより一層よくしてほしい」などと政治には触れず、「国葬より先に立派な銅像を建てていただいた。こうしてお礼にうかがえてうれしい。主人は台湾を愛していた、台湾に来たがっていた。きっと主人の魂が今、私と一緒にここにある」などと挨拶、台湾では「友好の旅」と報じられていた。

台湾滞在の最終日、昭恵夫人は総統府(日本の首相官邸にあたる)に出向き蔡総統や頼副総統と面会。結果的には、日本にとっても台湾にとっても「政治利用」する格好の場となった。(*下は、蔡英文総統のツイッター投稿)

■旧統一教会絡みの政治家たちも訪台

日本にとって大きな問題は、昭恵夫人の訪問に合わせる形で旧統一教会と因縁が深い政治家が訪台し、銅像との対面式に参列していたことだ。

山谷氏と旧統一教会との関係については、旧統一教会を長く取材しているジャーナリストの有田芳生氏がツイッターに「山谷えり子さんは統一教会の重点候補でした。長い長い付き合いがあることは、多くの信者たちが証言しています」と投稿。また、実際に山谷氏を選挙で支援したとする旧統一教会の信者が記した『山谷えり子 選挙応援の記憶』というリポートが、全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士に託されていたことが分かっている。

北村氏は安倍元首相銃撃事件後、旧統一教会との関係が疑問視され、本人が「政治信条や活動に共鳴し、応援して頂いた皆さまのなかに(旧統一教会系の政治団体)国際勝共連合の方がいたことは確認している」と認めている。

原田氏に至ってはハンターでも既報のように、旧統一教会の支援があったことが明らかとなっている。同氏は旧統一教会について「付き合いをやめさせられたら、つらい議員もいる」(2022年9月4日 日テレニュースより)ととんでもないコメントまで発していた。

台湾でも、旧統一教会は宗教を隠れ蓑に高額献金を強要する「カルト」として批判を浴びているという。ある自民党の大臣経験者が、昭恵夫人に合流した政治家たちに苦言を呈する。
「山谷、北村、杉田は昭恵夫人に抱きついてまで目立ちたいのか――。政治的に安倍元総理と昭恵夫人を利用しているとしか思えない。安倍派の幹部たちも、旧統一教会関係の議員が海外に行くことを禁ずるべきじゃないか。相手国は、旧統一教会で非難されている議員だとしても外交の礼儀上、対応せざるを得ない。台湾に申し訳ないとは思わなかったのか」

■総統選前にアピール合戦

来年1月、台湾では総統選挙が実施される。前述したように、頼副総統は民進党から総統選に立候補することがが決まっている人物だ。中国の圧力で外交関係を持つ国が限られる台湾。日本と外交関係はないが、親日的で知られる台湾。昭恵夫人の台湾訪問は、頼副総統とって自身をアピールする絶好のチャンスだったに違いない。

頼副総統のライバルとなる台湾民衆党の柯文哲氏はすでに来日し、早稲田大学で講演を行っている。国民党の侯友宜氏も近く訪日予定で、総統選を前に外交的なアピールを展開する構えだ。民進党関係者が、内幕をこう話す
「頼副総統は公的立場にあり日本には行けない。そういう意味で、昭恵夫人と 2度も面会したことは日本との関係をアピールするのに非常に役立った。総統選を前に外交力、好感度がアップしたはずだ。それに昭恵夫人の台湾訪問は日本の産経新聞グループが実質的な仕切りで、関係者がすっと昭恵夫人に付き添っていた。その点も良かった」

憲政史上、最長の在任日数を誇る安倍元首相だが、昭恵夫人も周囲も、そして台湾側も、亡くなった人の政治利用は慎むべきだ。

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