熱海土石流 起点地所有者の「肉声」入手

静岡県熱海市の土石流から9日が経過した。死者10名、行方不明者18名という大惨事で、今も梅雨の長雨の中、連日救出活動が行われている。

土石流発生の起点となったのは、熱海市伊豆山の造成地。そこは盛り土された場所だった。土地の所有者は、かつて脱税事件で実刑判決を受けたことがある麦島善光という人物である。独自ルートで、同氏の肉声データを入手した。

■近接地で「人骨」発見の記録

静岡県は、「盛り土が被害を甚大化させたのはほぼ間違いない」「盛り土について不適切な行為があって、是正指導したのは間違いない」と説明しているが、責任の所在は明確になっていない。

土地の所有者である麦島氏が、土石流の起点となった場所を含む熱海市伊豆山周辺の土地約40万坪を買ったのは2011年。7月6日のTBSニュースによると、麦島氏の弁護士は「買った時に埋め立て地で脆弱な土地だとは全く知らなかった」と話している。

一方、造成工事を届け出た不動産業者から土石流被害の後に相談を受けた弁護士は、「今の所有者が造成地と知らなかったと言ってるけど、そんなことありえない。それは全く違うね」とコメントしており、双方の主張は対立したままだ。

だが、土石流の起点周辺には、麦島氏の自宅、建設不動産会社などのグループを束ねる「ZENホールディングス」の研修施設、宗教法人施設などが建設されている他、起点のすぐ近くは太陽光発電所の設置場所となっている。土地の由来を知らずに、こうまで数々の施設を整備できるものなのか?

ちなみに、経済産業省のホームページを確認したところ、『地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン』には<設計上注意が必要な地形・地盤>として盛土地盤が明示してあった。太陽光発電所の設置を進めてきたZENホールディンググループの「盛り土とは知らなかった」という主張は、信じ難い。

そもそも、麦島氏とそのグループ企業を巡る過去の“事件”については先日の配信記事で報じた通りで、遵守精神を欠く姿勢には疑問符が付く状況だ。こんな「事件」もあった。以下、平成30年11月14日の官報より。

行旅死亡人 平成30年8月30日午前9時55分、静岡県熱海市伊豆山字吾妻1052番地2所在の麦島善光が所有する土地において、寺院建設に伴う土地造成工事が行われており、現場の掘削作業中、ユンボの先の布切れ様のものが付着したことから、現場責任者が同物件を確認したところ、衣服に絡んだ状態の人骨が発見されたものです。

前述したように、太陽光発電所の設置には、十分な地盤調査が不可欠。実際に、人骨が発見されたのは地中を掘ったためだ。建設業を長く手掛ける麦島氏側が、一帯の土地をまったく盛り土とわからなかったのか、疑問と言うしかない。

■麦島氏の肉声

疑問は、まだある。麦島氏は学校法人「理知の杜」(長野県)の理事長として、中学校、高校、専門学校などを運営しているが、2020年には経営破綻した大阪の学校法人「明浄学院」傘下の大阪観光大学の支援者に選定され、理事長に就任する見込みだ。

2020年9月、支援者となった麦島氏が教職員を前に挨拶した際の録音データを入手した。

麦島氏は脱税事件で実刑判決を受け、その後もグループ企業が脱税を指摘され修正申告している。系列企業が、建設業法違反で営業停止処分を受けたこともある。言うまでもなく学校は「法に触れるようなことをしてはいけません」と教育する場だが、その“学校”を運営する法人を、麦島氏が次々に手中に収め、理事長に就任できるのは何故か?麦島氏の周辺は、不可解なことばかりだ。

 

【お詫びと訂正】静岡県熱海市で発生した大規模な土石流の起点となった土地の所有者を、一カ所「麦島善幸」氏と表記していましたが、「麦島善光」氏の間違いでした。お詫びして訂正いたします。(2021年7月4日 08:55)

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