熱海土石流 国税が反応した土地の持ち主とは

7月3日、静岡県熱海市で大規模な土石流が発生。7日昼現在で、死者7名、行方不明者27名(7月7日現在)と発表され、豪雨が続く中を警察、消防、自衛隊などによる懸命な捜索が続いている。

すでに報じられている通り、土石流の起点となった地点では、谷を埋め立て盛り土になった土地が豪雨によって削り取られ、土石流となって市街地の家や商店をなぎ倒した。土石流は約2km先の海まで流れ込んでおり、規模の大きさを物語る。

問題の場所は、2007年に神奈川県の業者が埋め立て、2011年に現在の所有者が周辺約40万坪とともに購入した土地の一部だという。注目を集めているのは、その土地の持ち主である。

■脱税で逮捕・実刑、グループ企業は建築業法違反

不動産登記で確認すると、熱海市伊豆山字赤井谷という地名で、所有者として「麦島善光」という名前が出てくる。

「あの麦島かと、SNSで名前を知ってビックリだった」と話すのは、国税の関係者だ。

麦島氏は、自らが創業した持ち株会社「ZENホールディングス」(本社・東京都千代田区)を中核に、建設、不動産事業を全国で手広く手掛けている経済人。愛知県で社会福祉法人「幸寿会」で特別養護老人ホーム、グループホームなども経営し、長野県では学校法人「理知の杜」の理事長として、私立中学校、高校、専門学校などを運営している。今年春には、経営破綻した大阪観光大学(大阪府熊取町)を譲り受け、経営に乗り出したことが報じられていた。

麦島氏が買収した熱海の土地には、ZENホールディングスの保養所、麦島氏の自宅(登記上)、太陽光発電所などが建てられている他、同氏が代表役員を務める宗教法人「阿主南寺」の熱海別院もある。

ではなぜ、国税関係者が麦島という名前に反応したのか――。それ理由は、1989年11月30日の中日新聞の以下の記事に詳しい。

《名古屋地検は29日、合計6億円余を脱税した建設会社二社を法人税法違反(脱税)の疑いで摘発、それぞれの経営者である兄弟を同容疑で逮捕した。

摘発・逮捕されたのは、ユニホー(本社・名古屋市名東区一社)と同社社長の麦島善光(53)=同市千種区城山町一丁目▽麦島建設(本社・同市瑞穂区内方町一丁目)と同社社長で善光の弟の麦島善太郎(49)=同市瑞穂区内方町一丁目。

調べによると麦島善光はユニホーの昭和61年と62年の所得14億円を10億円余と過少申告。所得税合計1億2,500万円を脱税した。善光はさらに弟の善太郎と共謀し、麦島建設の60年から62年まで3年間の所得20億4,000万円を8億3,000万円余と過少申告。所得税5億1,200万円を脱税した。》

なんと法人税6億円という、巨額の脱税で逮捕されていたのだ。その後、麦島善光氏の実刑判決が確定している。

しかし、懲りていなかったのか、十数年後、グループ企業が再び脱税の疑惑を持たれている。2004年12月24日の中日新聞の報道。

《名古屋市昭和区の中堅建設会社「麦島建設」が名古屋国税局の税務調査を受け、2003年12月期までの5年半で約4億円の所得隠しを指摘されていたことが24日、分かった。関連のマンション管理会社「麦島不動産」(同市千種区)を経営支援するため、架空のリース契約で所得を付け替えたなどと認定されたもようだ。申告漏れ総額は約4億5,000万円で、同国税局は重加算税を含めて麦島建設に約1億5,000万円を追徴課税した。同社はすでに修正申告に応じている。

麦島建設は1989年、法人税約5億円の脱税事件を起こし、当時のオーナー一族の社長が逮捕された。また01年には、減価償却費の水増しで2000年6月期までの6年間に所得隠しを含む約2億円の申告漏れを指摘されたことが発覚している。今回も依然として、不正経理が行われていた実態が浮き彫りになった。》

ZENホールディングスグループの企業が2度に渡って脱税事件を起こしていたのだが、麦島氏にかかわる問題はこれだけにとどまらない。

2001年11月、前述の脱税事件で登場したZENホールディングス傘下の住宅関連会社「ユニホー」(本社愛知県名古屋市)が、建設業法に違反したとして営業停止命令を受ける。処分内容の詳細は、次のようになっている。

<建設大臣(現:国土交通大臣)より、監理技術者・主任技術者の適正な配置等に係る調査点検及び社内業務監督体制の整備を行う等の指示を受けていたのにもかかわらず、指示事項のうち「再発防止に係る十分な社内監督体制の整備」を行わなかった。また、同社は、指示を受けた以降においても、多数の工事において主任技術者資格がない者を現場に配置する等、建設業法において定められている監理技術者・主任技術者の適正配置・現場専任義務の遵守を行わなかった。このことは、指示に従わなかったものと認められる>

要するに、工事現場に法令で定められている技術者を配置していなかったというわけだ。どうやら麦島氏の周辺は、ご本人も含め法令遵守の意識が希薄。脱税で実刑判決まで受けたその麦島氏が、なぜ国の税金が投入される社会福祉法人や学校法人のトップになれるのか不思議である。

被災現場を視察した静岡県の川勝平太知事は、「梅雨が長引き、山が水を持ちきれなくなってそれが噴き出た。その上にあった盛り土を一気に押し流して被害が大きくなったと理解している」と麦島氏の土地に問題があったという趣旨の発言をしており、責任の所在を明確にするためにも徹底的な調査が求められる。

 

【お詫びと訂正】静岡県熱海市で発生した大規模な土石流の起点となった土地の所有者を、一カ所「麦島善幸」氏と表記していましたが、「麦島善光」氏の間違いでした。お詫びして訂正いたします。(2021年7月4日 08:55)

この記事をSNSでシェアする

関連記事

注目したい記事

  1. 鹿児島市内の公立小・中学校に通っていた3人の子供たちが、いじめ防止対策推進法が規定した「重大事態」に…
  2. 腐敗した鹿児島県教育界の隠蔽体質が、数々の“いじめ”を放置し、被害を拡大する原因になっていた。 …
  3. 衆議院議員総選挙の投開票まで1週間、九州各地でも激戦が展開されているが、注目されるのは「候補者調整」…
  4. 滋賀県大津市の中学校でいじめを受けていた2年生の男子生徒が自殺してから10年。2013年には、その事…
  5. 衆議院議員選挙期間中の22日、就任まもない岸田文雄総理大臣が北海道を訪れ、道内各地で与党系候補の応援…




最新の記事

  1. 鹿児島市内の公立小・中学校に通っていた3人の子供たちが、いじめ防止対策推進法が規定した「重大事態」に…
  2. 腐敗した鹿児島県教育界の隠蔽体質が、数々の“いじめ”を放置し、被害を拡大する原因になっていた。 …
  3. 衆議院議員総選挙の投開票まで1週間、九州各地でも激戦が展開されているが、注目されるのは「候補者調整」…

ページ上部へ戻る