堺市長選としぼんだ気球|失敗した維新政治

「維新の失政がはっきりした」――大阪府堺市の大仙公園でささやかれているのは、しぼんで無残な姿をさらす気球(下の写真)への批判だ。

■しぼんだ気球

堺市は、5月末から仁徳天皇陵古墳を含む世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」を空から一望できるよう、気球を飛ばして「おおさか堺バルーン」という事業を予定していた。しかし、5月8日月曜日の朝に、気球を上昇させるために必要なヘリウムガスが抜けてしまい、運行不能になってしまったのだ。

2019年に世界遺産となった百舌鳥古墳群の中心である仁徳天皇陵古墳は、長さ840m、幅645mと広大なもの。エジプトの「クフ王のピラミッド」、中国の「秦の始皇帝陵」と並び、世界三大墳墓の一つとされる。

世界遺産に認定された直後、大阪府の吉村洋文知事は現地を視察して「古墳の全体が見えることが必要だ。上空から見ることで、感動してほしい」と「気球」などに前向きは話をしたことが事業のきっかけになった。

その後、維新が推す永藤英機氏が市長に就任し、吉村知事と会見を開き気球を飛ばす計画がスタートした。ちなみに堺市は、日本維新の会の代表である馬場伸幸氏の地元でもある。

堺市と公募で選ばれた業者の共同事業で、5月末にも運航開始予定だった気球。市はすでに大人3,600円、子ども2,400円という料金や営業時間、運行にかかわる気象条件など細かなことを公表していた。

■原因不明

堺市内の小学生に無料で気球に乗ることができるように約2千万円の予算も計上し、気球の運行を待つばかりだった。それが、気球がしぼむという想定外の事態となりあえなく頓挫。なぜ気球はしぼんでしまったのか、堺市に経緯を聞いた。
「4月19日にヘリウムガスを注入しました。その後、業者がテスト運行をしていました。5月7日の日曜日も業者が気球を調整するなど準備をして、夕方5時に現場を離れました。その時は何も異変がなかったのですが、8日朝に堺市博物館から気球の状態がおかしいと連絡があり、ヘリウムガスが抜けてしぼんでいるのがわかったのです。当面は運行できませんし、いつからになるかも見通しが立っていません」(堺市の説明)

気球は、当初、2021年秋にも運行される予定だった。しかし、新型コロナの関係でヘリウムガスを輸入するのが困難になり延期。今年になって気球に必要なヘリウムガス調達のめどが立ち、運行開始が決まったという。しかし、貴重なヘリウムガスは失われてしまい、現在気球はぺっしゃんこにしぼんだまま。ヘリウムガスが抜けてしまった原因について堺市は、「調査中」としている。

■政治利用

ようやく調達できたヘリウムガスは約6,000㎥、注入に5時間もかかっていた。天然ガス由来のヘリウムガスは日本では生産されておらず、輸入するしかない。今回の損失は「数千万円」に上るとみられている。

ある堺市議が、事業の実態についてこう話す。
「気球の案は、ヘリコプターでの遊覧であるとか、水上飛行機の誘致などと並んで堺市議会で検討されていた。前任の竹山市長の時も気球の案はあったが、それはまったくの別物。今回の気球の案は吉村知事が言い出し、永藤市長も人気者には逆らえないと、計画を決めた。仁徳天皇陵古墳の最大の特徴は、教科書にもあるように有名な鍵穴のような形状だ。しかし、気球があがる高さは最大100mほどで、教科書の写真にあるようには見えない。市議会では反対意見もあったが、永藤市長が押し切った。コロナ禍にあって、ヘリウムガスは医療現場に不可欠なもの。撤回する理由付けにもなったが、それでも維新は気球にこだわった」

堺市では、5月21日に堺市長選が告示され、永藤市長が2期目を目指して出馬予定。今年10月には、「G7大阪・堺貿易大臣会合」が開催されることになっている。市の関係者は、次のように指摘する。
「気球を5月末と急いだのは、維新が選挙利用するためじゃないのか。そして、G7会合にも気球を運行させて、維新の政治的な成果をPRしたいという魂胆があったように思える。まだコロナ禍のダメージがあるなか、ヘリウムガスを業者に急ぎ調達させて運行に踏み切ったという話もある」

ヘリウムガスが抜けて1週間、今も原因すらわからない状況だ。「維新政治」の失敗の象徴となった気球は、堺市長選にどういう影響を及ばすのだろう。

 

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