「ご子息に対するハラスメントが確認された事実につき、心よりお詫び申し上げます」――。本サイトが折に触れ伝えてきた北海道立江差高等看護学院のパワーハラスメント問題で15日午後、2019年に起きたパワハラ自殺の被害者遺族に対し、道が公式に謝罪する場が設けられた(*下の写真)。
一連のハラスメントで最悪の被害といえる事案にようやく一区切りがつき、謝罪を受けた遺族は「今後はこういう被害を握りつぶさないで」と話している。
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江差看護学院で男子学生(当時22)が自ら命を絶ったのは、2019年9月。学院では当時の副学院長らが自殺の原因を不明としていたが、複数の同窓生らが本サイトなどに証言したところでは、教員らによる日常的なハラスメントが学生を死に追い込んだ可能性が強く疑われた。当初沈黙を守っていた遺族は一連のパワハラ被害告発が表面化した21年、当時の学院長から「息子さんにもパワハラがあった」と打ち明けられ、改めて告発を決意、昨年5月に道へ正式に調査を申し入れた。
翌月に設置された道の第三者調査委員会は、同10月から関係者への聴き取りを開始、本年3月まで調査を重ねた結果、少なくとも教員3人による4件のハラスメントがあったと認定した。これらのハラスメントが自殺に関連していた事実も認められるとし、当時の学院の「ふるい落とす教育」が背景にあったと指摘するに至った。
3月末までに第三者委から調査報告を受けた道は、遺族への説明について5月中旬に報告の場を設ける方向で調整、15日の謝罪が実現した。
謝罪の後、約50分間にわたって担当課から説明を受けた男子学生の母親(46)は「なかったことにされたくないと思って(声を上げた)」と、この3年間を振り返り「ハラスメントが認められたことにはとても感謝しており、今日で一区切りがついた」と話した。一方、具体的な調査結果については「(加害者が)3人しか上がっていないが、ほかの先生たちも何かしら関与があったはず」と率直な疑問を呈し、「今後はこういう被害が握りつぶされないことを願う」と訴えた。
道によれば、加害が指摘された教員3人のうち2人が現時点で遺族へ謝罪の意向を示しているが、残る1人はその限りでないという。また全員がすでに教壇を離れているものの、道職員として現職の人物が2人おり、その2人については懲戒処分を検討するとしている。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |