死後も続く安倍元首相と旧統一教会の関係

奈良市で安倍晋三元首相が銃撃されて3か月近くが経過した。実行犯の山上徹也容疑者は、犯行の動機について「統一教会(現・世界平和統一家庭連合)で家庭が崩壊し、教団と親しいと思った安倍元首相を銃撃した。政治信条は関係ない」と語っている。

山上容疑者を犯行に駆り立てるきっかけの一つになったのは、旧統一教会のダミー団体とされる天宙平和連合(UPF)が韓国で2021年9月に開催した「シンクタンク2022 希望前進大会」というイベントに寄せた安倍氏のビデオメッセージだった。

■統一教会を絶賛していた安倍元首相

安倍氏はアメリカのトランプ元大統領らとともに紹介され、5分間にわたって次のように述べていた。
「ご出席の皆様、日本国前内閣総理大臣の安倍晋三です。UPF主催の下、よりよい世界実現のための対話と諸問題の平和的解決の為におよそ150ヵ国の国家首脳、国会議員、宗教指導者が集う『希望前進大会』で、世界平和を共に牽引してきた盟友のトランプ大統領とともに演説する機会を頂いた事を光栄に思います。このたびは、出帆したシンクタンク2022の果たす役割は大きなものがあると期待します。今日に至るまでUPFと共に世界各国の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子(ハン・ハクジャ)総裁を初め、皆様に敬意を表します。・・・中略・・・UPFの平和ビジョン、家庭の価値を強調する点を高く評価致します。世界人権宣言にあるように、家庭は社会の自然かつ基礎的集団単位としての自然的価値を持っています。偏った価値観を社会革命運動として展開する動きに警戒しなければなりません」――旧統一教会の韓鶴子総裁を絶賛し、教団の「教義」に賛同する内容だった。

旧統一教会は記者会見で、「安倍元首相は韓鶴子総裁が指導されている世界平和運動に賛意を表明」、「(安倍氏との)関係がいつ頃からからなのかはその友好団体、UPFに聞いていただくしかない」などと、あくまでも旧統一教会とUPFは「友好団体」に過ぎないと説明した。だがハンターは、UPFイコール旧統一教会であることがわかる冊子を入手した。

冊子のタイトルは『神様の理想家庭と世界平和のモデル 天宙平和連合創設世界100カ国都市巡回講演文』、表紙の下には「世界基督教統一神霊協会」という文字がある。さらに、奥付をチェックすると「2005年11月発行非売品 発行 世界基督教統一神霊教会」。「友好団体」どころか、統一教会と同一の組織。旧統一教会の記者会見は嘘八百だということだ。

ちなみに、この冊子を見ると《「天宙平和連合」の共同創設者である韓鶴子総裁をお迎えして「天宙平和連合創設祈念日本12カ国都市大会」が開催されました》と、旧統一教会の韓鶴子総裁がUPFでも創設者でトップの座にあることが明記されている。

さらに冊子には、《神様の理想家庭と平和世界のモデルという題目のみ言》と統一教会の教えそのものが記されていた。つまり、安倍元首相は「統一教会」にビデオメッセージを送り、絶賛していたのである。

安倍氏とUPFとの関係を示す証拠は、ビデオメッセージだけではない。安倍氏は、2005年、2006年に開かれたUPFの「祖国郷土還元日本大会」に祝電も送付していた。

■国葬献花に信者動員?

安倍氏は今年7月の参議院議員では、秘書官だった井上義行参院議員への選挙協力を旧統一教会に求めたとされる。井上氏は、旧統一教会関連が開催した「決起大会」に参加し「二枚目の投票用紙には、井上義行!」と信者が絶叫するシーンが、何度もテレビで流された。まさに、安倍氏は旧統一教会の“ダミー団体”などではなく、教団そのものと深い関わりがあったことがよくわかる。

9月27日、東京の日本武道館で安倍氏の「国葬」が執り行われた。一般弔問も実施され、早朝から献花の長い行列ができた。旧統一教会の関係者が、声を潜めてこう話す。
「旧統一教会の関東の教会には、国葬の際の献花に行くようにと指示が出ていたそうですよ。そこで撮影した写真をまとめて、安倍氏に近い議員に見せるんです。冊子などにして、関係をアピールする道具にする可能性もあります。そうなると、国葬を悪用し、宗教利用しているようなものですね」

100人を超える旧統一教会の信者が参列したともいわれている安倍元首相の国葬。ズブズブの関係は、安倍氏亡き後も続いている。

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