【教育崩壊】いじめ重大事案「隠蔽」の証拠|鹿児島市立伊敷中と市教委の暴走

令和元年に鹿児島市立伊敷中学校で起きた“いじめ”では、校長や担任が解決できずに被害生徒が「転校」という不利益を被ることになったにもかかわらず、真相を記録した文書は何一つ残されていない。ハンターが市教委への情報公開請求で引っ張り出したのは、伊敷中と市教委がいじめを矮小化し、ハッピーエンドの筋書きに変えて幕引きを図っていた証拠だった。「隠蔽の証拠」を公開する。

■開示された「いじめの報告書」

下は、鹿児島市教委が「不存在」と偽り、隠そうとした「いじめの報告書」の中の1枚だ。A3版の用紙に、年度内に同一校で起きたいじめの状況を記録。表から裏にかけて、横一行に一人の生徒のいじめ事案をまとめる形式になっている。1~14の番号は、いじめの認知件数が14件(14人分)あったということを示している。

ハンターが開示を求めたのは、市内の小中学校から市教委に提出された3年度分のいじめの報告書だが、狙っていたのはこの1枚。つまり、「いじめの実態調査」と題するこの報告書こそが、伊敷中が作成した「隠蔽の証拠」なのである(*画像クリックで拡大)。

この一覧表をどう見るかは、記載方法を説明した市教委の文書で明らかとなる。下が、その説明文書だ。

報告書は毎年度ごとに、いじめを認知した市内の小中学校から市教委に提出されている。上掲の報告書が、令和元年度における伊敷中学で起きたいじめの実態だったというわけだ。同校で起きた14件に上るいじめの認知事案の中で、転校に至った過激ないじめのケースが「6」。この点については、市教委も認めている。

■「隠蔽」の動かぬ証拠

“いじめ⇒解決せずに転校”という経過をたどった今回の「6」のケースの記載内容を、抜粋してまとめるとこうなる。まず、報告書の表部分について。(*黄色で示したものが、学校側のチエックが入った『いじめの実態』)

当事者や周辺関係者への取材によれば、対応の強弱について問題はあるものの、もっともらしい話に仕立てるための、ここまでの内容には大きな誤りはないという。問題は、裏の記述だった。

まず《いじめの概要》にある「10月中旬に、5~6月から本人の意志に反して、たびたび文房具等を借りられていたことに不快感を示した」という記述。連日のように被害生徒に浴びせられた「うざい」「死ねば」などの暴言や、暴力行為については一切触れられていない。いじめの訴えを『不快感』で済ませたところに、意図的なものを感じるのは記者だけではあるまい。この記述は、矮小化のための伏線になっている。

次の《学校の対応》に記された「文具を借りることがあった生徒を指導し、保護者と連携。生徒は借りた文房具等を新たに買い直し、謝罪の手紙を書いた。また、席替えを実施したり、帰りの会や朝の会、給食指導に副担任も学級に入るようにしたり、強化によっては2人で指導するようにしたりした。現状や指導の状況について保護者にも面談を通して伝えた」も同様。「生徒は借りた文房具等を新たに買い直し」とあるが、正確に記すなら『加害生徒は強引に取り上げた文房具等を弁償し』とするべきだったし、「現状や指導の状況について保護者にも面談を通して伝えた」については、それが形だけのものだったからこそ、被害生徒が転校を余儀なくされたという事実を無視している。そもそも、被害生徒のクラスの担任は、いじめの訴えを受け流し、保護者との面談にも応じていなかった。電話にも出なかったというから、報告書の記述は虚偽に近い。

「隠蔽」を決定的にしたのが、その次の《現状》。こう書かれている

「指導後、新たないじめは、発生していないが、被害者生徒はこの関係に悩み、登校を渋ることが多くなった。学習意欲が高い生徒で、環境を変え、新たな気持ちで頑張っている」

「指導後、新たないじめは、発生していない」は、真っ赤な嘘。いじめが続いたからこそ、転校を余儀なくされたのだ。「被害者生徒はこの関係に悩み、登校を渋ることが多くなった」という記述からは、あたかも被害生徒が悪いかのような印象さえ受ける。まさに、悪質な印象操作と言えるだろう。最悪なのは、このあとに続く一文である。

「学習意欲が高い生徒で、環境を変え、新たな気持ちで頑張っている」――驚いたことに、「転校」の事実はどこにも出てこない。何となく「転校」を匂わせるために使われたのが、「環境を変え」という一語であることは確かだろう。本人に確認もせず「新たな気持ちで頑張っている」とは、よく言ったものだ。

伊敷中は、「現状」について『いじめが解決せずに転校』と記すべきところを言葉でごまかし、事実を隠蔽したのである。決定的な証拠が、最後にもう一カ所出てくる。

報告書の終わりある『状況』を記す欄には、アからエまでの選択肢がある。アは“いじめが解消しているもの”、イは“一定の解消が図られたが、継続支援中” 、ウは“解消に向けて取組中”、そしてエが最悪の結果である“他校への転学、退学等”。この被害生徒のケースは、令和2年1月にいじめが原因で転校しており、あきらかに「エ」だが、報告書では“いじめが解消しているもの”の「ア」を記入していた。「環境を変え、新たな気持ちで頑張っている」から一続きの「隠蔽の証拠」であり、決して記載ミスなどではない。

隠蔽を行ったのは伊敷中、そして鹿児島市教育委員会も、いじめが原因での転校という「重大事案」を県教委に報告せず、この卑劣な行為の共犯になっていた。

ではなぜ犯罪に等しい「隠蔽」が行われたのか――?次の配信記事で、その背景について検証する。

(つづく)

 

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