同じ自治体で実施されたプロポーザル方式の業者選定に関する2件の情報公開請求で、一方で完璧な形で文書開示が行われ、もう片方は非常識な隠蔽に走るというおかしな事態が起きた。
隠蔽が疑われているのは、福岡県田川市が一般廃棄物収集運搬業務の委託先を決めるため実施されたプロポーザルの関連文書。田川市は、本件についてハンターが行った情報公開請求で、開示決定期限を延長。理由は、プロポーザル参加業者の提出文書を開示してよいか否かを業者側に聞くための時間がかかるというものだった。プロポーザルの審査委員が評価項目ごとに点数を付けた際の採点用紙=「個票」を別件で開示請求していたが、これについても業者側におうかがいを立てるとして開示決定期限を延長している。
プロポーザルで落選した企業の提案書などは、業者側の意向に関係なく、役所の判断で開示・不開示を決めるのが普通だ。今後の企業活動に影響を及ぼすような情報は、どこの役所も黒塗り非開示。わざわざ、業者に意見を聞く必要などない。そもそも、落選した場合は、企業名さえ明かされないのが一般的で、田川市の開示決定期限延長は、ただの時間稼ぎとしか思えない。
「個票」については、どこの自治体でも採点した人間の氏名を隠すほかはすべて開示。採点結果の証明文書であることから、破棄していれば公文書毀棄の疑いが生じる。田川市のように、個票の開示・不開示の判断を業者に聞くというケースは聞いたことがない。一般廃棄物収集運搬業務の委託先を決めるため実施されたプロポーザルは、隠蔽を迫られる何かがあるということだ。
■田川市教委の完璧な情報公開
同市で実施されるプロポーザルは、すべて同じような扱いで情報を隠すのか――。疑問を抱いたハンターの記者が、昨年8月に田川市教育委員会がプロポーザル方式で行った業者選定の関連文書を開示請求したところ、市長部局とはまったく違う対応となった。
市教委に請求したのは学習用タブレット端末の調達業者を決めた際に実施されたプロポーザルに関する文書。請求当初から市教委は協力的で、開示された文書についても完璧といえる内容をそろえてきた。
学習用タブレット端末の導入を決めてからは、「田川市プロポーザル方式の実施に関するガイドライン」に規定された通りに「田川市建設業者等選定委員会」に業者選定方法を付議。方針決定後に行われた公募、審査委員会の開催、契約業者選定までの過程における公文書が、もれなく残されていた。下は、ハンターが重要視する「審査評価結果」である。 さらに、評価結果の数字を証明する「審査評価シート」=「個票」もきちんとそろえられていた(下の画像参照)。
情報開示の在り方としては文句のつけようがないもの。田川市教育委員会は、ルールに則った業者選定を行ったということになる。
では市長部局が、一般廃棄物収集運搬業務の委託先選定プロポーザルの関連文書を隠そうとしているのは何故か――。市役所周辺から、「不正」を疑う声が上がっているのは言うまでもない。