内藤徳島市長、補助金辞退「しっかり話し合い」のお寒い実態

子育て世帯が期待していた保育園整備事業の白紙撤回を表明していた内藤佐和子徳島市長が先月28日、国から内示を受けていた10億円を超える補助金交付の内示を取り下げるよう、国に正式に依頼した。

補助金を要請し、内示を受けながら支給を断った徳島市。一連の動きを巡り「厚労省としっかり話し合った」と議会で答弁した内藤市長だったが、開示請求を通じて判明したのは、説得力を欠く市側の言い分に厚生労働省がダメ出しするという実態だった。

■市長答弁

9月議会で、国から受けていた交付金内示の取り扱いに関する質問を受けた内藤市長は、次のように答弁している。
「教育保育施設等整備についてですが、正式な内示の取り下げは行っておりませんでしたが、厚生労働省とは、しっかりと事務レベルで正式な取り下げに向けて話をしていたことを申し添えておきます

特に「しっかりと」という言葉の前に間を置き、語気を強め、ことさら強調する姿が印象的だった。

“ここまで断言するからには、市と厚労省の間で、相当綿密な話し合いがあったのだろう」”――多くの市民がそう感じたはずだが、実際には違う展開だった。

■明らかになった国とのやり取り

ハンターは、『内示取り下げについて市と厚労省との間で交わされたやりとりがわかる文書』を市に情報公開請求。市が送受信したメールと、双方が交わした文書を入手した。同じく内示取り下げについて、9月に市民団体が内藤市長に提出した公開質問状に対する回答書も入開示されており、これらをもとに一連の経過をまとめた。

6月3日の記者会見で、内藤市長が事業の見直しを発表。6月25日の議会で事業予算の即時執行が否決され、事業は事実上の白紙となるが、すでにその10日前から内示取り下げに向けて市が動き出していたことが分かる。6月議会閉会日、市は国に取り下げ文の原案を送付したが、この動きに対し、自民党の国会議員がクレームを入れていた。

自民党議員は、徳島市が取り下げ理由に「需給の不一致」を挙げていることを踏まえ「国の方針に基づき計画された事業が取り下げとなれば、国の責任が問われる」と指摘。これを受けた厚労省は7月8日、国会議員への説明を果たすべく、徳島市に対し、内示取り下げについての説得力のある理由を求めていた。

7月14日に、徳島市が厚労省に回答した文書を見ると、その内容は内藤市長が事業見直しを発表した会見内容となんら変わらないもので、具体性に欠けるものだった。見直しの代案を検討している最中だったと推測されるが、この時点では周囲を納得させるだけの根拠を伴った説明ができていなかったことになる。

当然、あやふやな理由では国会議員に報告義務のある厚労省は納得しない。同省は7月17日、市から受けた回答を細分化し、より具体的なヒアリングを行っていた。

驚くべきは、厚労省職員自らが徳島市に対し、回答の修正案を示す部分さえ確認できること。つじつま合わせに知恵を絞る様子がうかがえる。厚労省のアシストでできあがった市の回答は、7月28日に厚労省に送付される。

こうしたやり取りを、内藤市長は「厚労省とのしっかりとした話し合い」と強調する。しかし実際のところは、内示の取り下げ理由を、厚労省に考えてもらった形だ。

■市民に広がる驚きと疑問

前述した市と厚労省のやり取りを、徳島市在住の30代女性に読んでもらい、コメントをもらった。
「内藤市長は9月議会で、厚労省と正式な取り下げに向けてしっかりと話していると仰っていました。ですが、実際は厚労省からこれだけ質問をされて説明を求められるなど、十分な意志疎通が図れていなかったように感じました。当初、見直し理由に挙げていた徳島市の財政難に触れていないことが不思議です。交付金辞退の理由を、後付けの格好でひねり出したところなど、酷いとしか言いようがありません。厚労省と市の間でこのようなやり取りがあったことを知り、とても驚きました」

別の子育て世代の女性も、市長の姿勢を厳しく批判する。
「市長が白紙にすると言ったことで、もう国へも補助を断っているものだと思っていました。このような厚労省とのやり取りをしていたことも、市民の私たちは知りませんでした。待機児童の数も一番少ない4月時点のものしか伝えておらず、断るための口実を無理矢理考えたとしか思えません。厚労省から2回も問い合わせが来ること自体おかしいと思います。市民にも国にも、しっかりとした説明が出来ないようなことを就任わずかで決定した内藤市長の姿勢には、疑問を抱かざるを得ません」

(東城洋平)

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