QRコード決裁トラブルで詐欺事件に発展か 関係団体顧問に自民党議員

キャッシュレスのQRコード決済を手がける「NIPPON Platform」(ニッポン プラットフォーム:本社・東京都。以下NP社)と「NIPPON Tablet」(ニッポン タブレット:本社・東京都。以下NT社)という2つの会社が突然、実質的に営業を休止。加盟店、代理店からの問い合わせに応じず、手数料や代金が支払われない状況になった。関係者の間からは「Pay・ペイを舞台にした詐欺事件だ」という声が上がっているが、問題を起こした両社を創業した人物が専務理事を務める一般社団法人の顧問に、複数の自民党議員が名を連ねていたことが分かった。

■事件の裏に自民党議員の影

タブレット端末を加盟店にレンタルしていた代理店の飯坂忠義さんには、約500万円の手数料が支払われておらず、途方に暮れる毎日だ。彼はなぜNT社の代理店となり、1,500台ものタブレット端末を加盟させるほど同社を信用をしたのか。飯坂さんは三つの理由を挙げる。

第一の理由として、2018年8月、日経新聞にNP社の大きな広告が掲載され直後の代理店への説明会があったこと。

2つ目は、同社がAmazonPayやd払いなど、大手業者のQRコード決済を導入していたこと。

3つ目は、NP社とNT社の創業者である高木純氏が「一般社団法人日本キャッシュレス化協会」(https://www.cashless-japan.or.jp/)の専務理事を務めており、国会議員が顧問として名前を連ねていたこと。

 

4月16日にQRコード決済端末が使用できなくなって以降、飯坂さんは、代理店や加盟店に「被害者の会」結成を呼び掛けた。その過程で、多くの関係者から、同様の理由でNP社やNT社を信用したことを聞かされているという。

ここで出てきた「一般社団法人日本キャッシュレス化協会」とは、《国内外のキャッシュレス化の動向、キャッシュレス化と社会とのかかわり、キャッシュレス化に伴う新ビジネス、キャッシュレス社会での金融リテラシーなど、キャッシュレス化が進む日本で必要とされる情報提供を通じた社会貢献を目的として》(同会HPより)、 2017年11月に設立された団体で、NP社とNT社の創業者でもある高木氏が専務理事を務めている。顧問になっていた国会議員というのが、何かと噂になることの多い鶴保庸介参院議員と宮路拓馬(比例九州)木原誠二(東京20区)の両衆院議員である。

日本キャッシュレス化協会は、どうみてもNP社と表裏一体。同協会の顧問として名前を連ねた自民党の議員らが、被害者らを信用させるための広告塔の役割を果たしたとすれば責任は免れまい。

■残されていた録音データ

飯坂さんは、今年1月に高木氏と直接面談。未払いの売上を支払うように求めている。その際、高木氏の了解のもとに面談の模様を録音していた。飯坂さんはこう話す。「(高木氏は)NT社に32億円の負債があり、2月には破産と言っていた。しかし破産した形跡はない。そこで録音を聞き直したところ、おかしなことがいくつもあることに気が付いた」

さらに録音データを確認してみると、高木氏のいい加減さが分かる。「NP社の株式は、372万2,994株発行して、私が277万8,485株を保有している」と細かな数字まですらすら答える高木氏。そこで、飯坂さんが“高木さんは株を3分の2以上保有しているのですね”と聞き返す。しかし高木氏は「いえ、3分の2もありませんよ」と答える。高木氏の発言が正確なら、株式3分の2以上を保有しているのは明白だ。それを指摘すると「あっ、そうですね」とあわてて修正したという。いい加減な話であることは、子供でも分かるだろう。

株式を3分の2以上保有し、創業者でもある高木氏。「NP社の社長を解任されました」とも述べているが、3分の2以上の株式を保有していれば、株主の議決権で解任されるようなことは通常あり得ない。そこで飯坂さんは、NP社やNT社のホームページやプレスリリース、法人登記など公開されている資料を調べてみた。

NT社は、NIPPON Tabletという社名から現在は「NT残余財産分配」と変更されていた。NP社は、NIPPON PayからNIPPON Platformへと変わっている。そして、両社とも複数回、本社の所在地を変更していたことが分かった。飯坂さんが面談の時に高木氏から受け取った「NT残余財産分配」の名刺には、電話番号すら記載がなかった。

「高木氏と面談中は、売上を払えないなどと言われ、自分自身が冷静さをかいていたところがあります。面談した場所は港区白金台のNT社が入居しているビルのカフェで、近くにあるNP社の本社をみても、人影はなくセミナー会場のような感じでした。公開されている資料、録音データを聞いて、ますますだまされたという思いが強くなってきました。NT社の負債は32億円と高木氏は言っていましたが、そこに代金を受け取る加盟店のものは含まれていません。被害は全国規模のようで、代理店の中からは『(被害額は)100億円くらいではないか』という指摘も出ています。実は、私もそう感じています」(飯坂さん)

■高木純という人物

飯坂さんや他の加盟店、代理店の人に聞いても、創業者である高木氏が何者なのかよくわからない。高木氏の公開されているプロフィールは、“世界放浪中にアフリカでキャッシュレス決済しているのをみて、2016年9月にNP社を起業した”という程度なのだ。改めて取材をしたところ、高木氏と10年近く付き合いがあるという人物・A氏に話が聞けた。

「彼とはそれなりに付き合いはあるが、『どこの大学の出身』と聞くと、東京の有名大学だったり、世界を放浪していて大学は行ってないとか、言うことがバラバラ。もとは東京で出会い系サイトを運営していて、儲けたそうです。とにかく、しゃべりはうまいので出会い系サイトと同じような時期に“寝てても儲かる”というセミナービジネスもやっていた。それが、急にNP社の社長。上場企業や自治体とQRコード決済の仕事をしていると聞いて、びっくりしました。政治家とも親しいそうで、自民党の国会議員だったか、写真や日経新聞の記事を見せてもらって二度驚きました。出会い系サイトの評判はネットでも検索すれば出てきますが、詐欺まがいだと悪評がすごい。セミナービジネスも似たようなもの。高木氏自身やその周辺者、たいてい裏の商売って雰囲気の人たちですね。『うちの会社は上場するつもりだ』なんて言い出すので、本気かよ、と思いましたが」(A氏)

ある捜査関係者は、NP社やNT社の法人登記をみながら「うちで捜査対象になった、怪しいヤツがいるね」と打ち明ける。

■「被害者の会」立ち上げて訴訟へ

前出の録音データによれば、高木氏はNP社の株式が上場するような発言を繰り返し「1株7,000円なので、70万円の債権なら100株を割り当てる。債権のある1,000名がすでに申し込んでいる」「破産手続きが始まるまでに、ぜひ申し込みを」などと発言している。だが、今もってNT社は破産しておらず、NP社の上場も実現していない。

飯坂さんから、相談を受けている弁護士は、次のように解説している。「高木氏の対応をみていると、代理店などには論点をずらして説明しているようです。破産申立てや差し押さえを免れた上で、民事、刑事の法的手続きを回避するための方便ではないでしょうか。つまり、高木氏自身には責任が及ばないようにしたいということ。大がかりな詐欺のように思える」

飯坂さんは憤りを隠さない。「NP社は自治体と提携したり、関連の一般社団法人で国会議員が顧問にいたりと、社会的に認知された企業だと思いました。日経新聞には記事や広告も載った。信じた私も悪いのかもしれないけど、普通、信じますよね。自治体や国会議員は、こんな詐欺的行為を行う会社の側について責任を感じないのでしょうか。連絡すらつかないNP社とNT社、そして高木氏には、腹が立ってしょうがない」

今後「被害者の会」を設立した上で、集団訴訟と刑事告訴する方向で検討しているという。

(山本吉文)

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