鹿児島・MBCがいじめの非公表情報を報道|二次被害誘発の可能性に保護者激怒

このテレビ局にとって、「報道」とは何なのか――。鹿児島市内の公立校で起きた“現役生徒へのいじめ”を巡る報道で、地元のローカル局MBC南日本放送が、二次被害を誘発しかねない非公表情報をニュース原稿に入れて放送していたことが分かった。

報道を知った被害生徒の保護者が抗議したが、MBCはホームページ上の映像と文字原稿を削除しただけ。ニュース番組での訂正や謝罪は一切行っておらず、保護者側が要求した文書による経過説明については応じる構えさえないという。

MBCは今年5月、別のいじめについて、被害者側へ取材をしないまま学校と市教委がでっち上げた内容を一方的に報道しており、懲りない体質に関係者から厳しい批判の声が上がっている。

◇  ◇  ◇

MBCが報じたのは、今月16日に鹿児島市教育委員会が市議会市民文教委員会に報告した、現在継続中の“いじめ”に関する対応。市教委が、市内の中学校で起きたいじめを、いじめ防止対策推進法が規定する「重大事態」該当するか否かを第三者委員会に諮問したとする内容だった。

法が定めたいじめの重大事態とは、いじめによって児童・生徒の生命、心身又は財産に重大な被害が生じたり、相当期間学校を欠席することを余儀なくされた状態。16日に議会に報告されたいじめが、現在も継続している状況だったことから、市教委は二次被害を避けるなどの理由で被害生徒の「性別」を非公表にしていた。

ところがMBCは、当該事案を伝えるニュースの冒頭で、非公表のはずの被害生徒の性別を明らかにして議会報告の内容を報道。その際、性別の情報源は明かされていなかった。

報道内容を知って驚いた被害生徒の保護者が同局に抗議。MBCは、ネット上に残ったニュース映像と原稿を削除したが、放送番組の中での謝罪や訂正は行なっていない。

被害者側に確認したところ、MBCの記者から取材を受けたことは一度もなく、ニュースで子供の性別が流れたことにより、二次被害を恐れる状況に追い込まれたと話している。MBC側に、二次被害を受ける可能性があるということを説明した上で文書による経緯の説明を求めたが、「直接会って話した方が、お互いよろしいのではないか」「(文書の発出については)社内でもませてもらいたい」などと難色を示しているという。

どうでもいいネット記事の削除でお茶を濁し、番組上での正式な謝罪や訂正、文書による経過説明を拒む姿勢は、まともな報道機関とは思えない不誠実なもの。ある教育関係者は、「卒業や転校などで被害者と加害者が接触する機会が少なくなった場合と違い、現在進行形のいじめについては、よほど注意して公表しないといけない。当事者が『問題を大きくした』と逆恨みするケースも考えられるからだ。MBCは、何のためにいじめについての報道を行っているのかという、本質的なところの認識が欠如しているのではないか」と話している。

鹿児島市では、ハンターの報道をきっかけに、市立の小・中学校で起きた3件のいじめを市教委が隠蔽していたことが発覚。8月には、4件目の「重大事態」が発生していることも報じていた(⇒“鹿児島市公立中で4件目の「いじめ重大事態」|5件目も浮上”)。実はこの4件目のいじめが今回問題になった案件で、ハンターも性別については明らかにしていなかった。

MBCのいじめに関する報道を巡っては、今年5月、被害者側への取材をしないまま学校と市教委のでっち上げた内容を一方的に垂れ流していたことが分かっており(⇒“伊敷中いじめ問題で鹿児島・MBCが虚構たれ流し|被害者側に取材せず権力擁護”)、被害者を傷つける問題報道は今回が二度目。子供が重大事態とみれらるいじめ被害にあった複数の保護者からは、次のような意見が出ている。
「ろくに取材もせず、市教委側の言い分だけを報じるなど、被害者無視の姿勢は許せない。またかという感じだ。この放送局のずるいところは、番組上で訂正や謝罪をしないこと。原稿を書き変えて流したり、削除することでごまかしているだけだ。二次被害が起きることに考えが至らなかったとすれば、報道として最低。いじめに関するニュースを流す資格はない。5月の件も、今回の件も、ハッキリ言って人権侵害。BPO(放送倫理・番組向上機構)に申立てを行うべきではないかと考えている」

 

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