自民党総裁選の投票日は9月29日。報道機関の調査結果などから、党員票では河野太郎規制改革担当相が40%以上の支持を受けて優勢。議員票では岸田文雄前政調会長がトップに立っている。そこへ割り込もうと、党員・議員票で急上昇しているのが元総務相の高市早苗氏だが、最終的には3着でのゴールが妥当なところだとみられている。告示直前に出馬を決めた野田聖子幹事長代行を除く3氏が、激しく争う現状を取材した。
■崩れた河野陣営のシナリオ
総裁選の告示前、圧倒的な国民人気で楽勝が予測されるほどだった河野氏。小泉進次郎環境相、石破茂元幹事長と「小石河連合」を組み、党員票で大差をつけて議員票につなげるという作戦だった。しかし一寸先は闇といわれる政界のこと、ここに来て陣営の勢いは急激に落ちている。河野氏を応援する衆院議員がこう嘆く。
「1+1+1が3ではなく、50にも100 にもと狙った人気者トリオだったが、現実にはそうなっていない。戦略ミス。シナリオが完全に崩れた」
河野氏にとって、石破氏との連携は大きな賭けだった。安倍晋三前首相や自身が所属する麻生派のトップである麻生太郎副総理兼財務相は、石破氏と険悪な仲。それでも「安倍さんや麻生さんとこじれても、小石河連合で断トツの党員票を獲得できれば、総裁の座につけると判断し、大きな賭けに出たのです。党員票を、最低でも7割近くはとれると踏んでいた。ところが、石破氏に対する党内の拒否反応は思っていた以上。『石破と組むのなら、河野には乗れない』とそっぽを向いた議員もいる」(前出・河野氏側の衆院議員)
残念ながら、「賭け」は思ったほどの相乗効果を発揮しておらず、むしろマイナスに働いたというのが現状だ。
河野氏が伸びを欠くもう一つの理由として、総裁選出馬を決めてからの「変節」をあげる人は少なくない。
脱原発論者として知られる河野氏だが、総裁選の中の議論で、自ら原発に触れたことはない。それどころか、再稼働を容認する考えを示したことで、政治姿勢に疑問符を付けられた。
9月21日、衆院議当選3回以下の議員でつくる「党風一新の会」が4人の候補者と開いた会合では、官邸主導では党が軽視される「政高党低」ではないかと指摘され、「国会で説明責任を果たすのは政府。政高党低でないと困る」「部会でギャーギャー言っているより、副大臣、政務官チームを半ば非公式に作ったらどうかと思う」と発言。この発言が党内で批判を浴びて、河野氏は「不適切だった。お詫びして訂正する」と発言の撤回を余儀なくされた。ラジカルが「売り」の河野氏が謝罪に追い込まれたのだ。こうしたことが重なり、断トツ一位の夢は、完全に消えたとみていいだろう。
■注目は高市陣営の票
自民党のある大臣経験者が、今後見立てを次のように語る。
「現状のままだと、1回目の投票で過半数をとる候補者はいない。河野が1位、岸田が2位で決戦投票になるだろう。高市は善戦しているが、やはり3番手」
そうなれば、安倍元首相の指示で高市氏支援に流れた細田派の所属議員は、決戦投票で岸田氏にまわって2位・3位連合が実現。結果、河野氏が敗戦というシナリオが濃厚となる。
だが、安倍氏の強力なサポートもあって、終盤になって追い上げる高市氏の動きが目立つ。「高市氏が2位に滑り込む可能性もある」という声さえあるほどだ。
「決戦投票で岸田さんと争うとなれば、数的には厳しいでしょう。正直、まず、高市氏に頑張ってもらい2位に入ってもらい、岸田さんは3着になってほしい。河野と高市氏との決戦投票なら、岸田派の票はウルトラライトの高市氏には絶対にいきません。河野と高市氏が争う決戦投票では、岸田陣営に頑張ってもらうしかない。そんな心境です。ハッキリ言って、完勝と思っていた総裁選で、ここまで苦戦するなんて……」(前出・河野氏側の衆院議員)
1回目は高市氏、決戦投票は岸田氏に頑張ってもらうという、虫のいい話が通用するのだろうか?