入札結果判明!|薩摩川内市スクールバス運行業務の闇(3)

薩摩川内市内の小中学校に通う児童・生徒が利用するスクールバスの運行業者選定で行った入札の結果に関する情報公開請求を受けた同市の教育委員会が、「市議会の決算が終わるまで直近の入札結果は公表しない」という理由で、落札できなかった業者の入札額を黒塗り非開示にした。落札額との比較・検証を避けるためとしか思えない、タチの悪い隠蔽だ。

ところが、入札当日に市教委の担当者が、バス会社の応札額すべてを読み上げる形で「公表」していたことが判明。市側が非開示理由にあげた主張自体が、正当性を失った。市内部からも、「この入札はおかしい」「裏に何かあるのではない」といった指摘が上がり始めている。

■明らかになった入札結果

そもそも、入札に参加したバス会社の応札額を隠した状態で、市議会が入札結果の正否を判断できるわけがない。それでも、問題の入札が毎年議会承認を得ていたというのだから、議会の機能不全まで露呈したようなものだ。

では、他の自治体なら当然のように公表している業務委託の入札結果を、薩摩川内市が隠してきたのは何故か――。スクールバスの入札に限って言えば、「裏に何かある」という市関係者の指摘は、“間違っていない”と言えそうだ。

下は、2020年度のスクールバス運行業務の入札結果をまとめた表。報じてきた通り、落札できなかったバス会社の応札額が非開示になっている。

ここでハンターが注目したのは、前回の配信記事で指摘した2018年度の入札結果。議会で決算承認を得た同年の入札結果はすべての応札額が開示されたのだが、その中の「水引小・中学校(湯田・西方地区)」という路線の運行業務を受注した「川内観光交通」の応札額は900万円台で、受注を逃した「入来観光交通」のそれは2,000万円台だった。

バス会社各社は、入札の前に市教委が積算のために提出させた参考見積りを作成しており、本来なら事業者ごとの応札額が大きく変わることはない。しかし、この時の川内観光交通の応札額は入来観光交通の半分以下で、どうみても低過ぎる。バスの管理費、燃料代、運転手の人件費などかかる経費の費目は同じのはずだが、これだけ安く受注した原因が、「企業努力」で片付けられるとも思えない。そこで2020年度のバス会社各社の応札額について、1件ずつ関係者に確認した。その結果が下の表である。

驚いたことに、6路線のうち5路線の運行業務を受注した川内観光交通の応札額は、5路線すべて最高額の半分以下。「水引小・中学校(湯田・西方地区)」と「高来小学校」、「川内中央中学校」の3路線については、最高額の約3分の1という安さだった。予定価格が非開示のため断定を避けておくが、「東郷小学校(山田・南瀬・烏丸・藤川地区)」という路線を落札した南九州開発(株)グリーン観光交通の応札額が他の会社と数十万円しか違っていないことを考えると、川内観光交通の応札額は、「破格」というより「利益度外視の異常なもの」(鹿児島市内のバス業者)ということになる。

■市内部からも批判の声

同社が、常識外れの低い応札額でスクールバスの運行業務を受注する理由については様々な見解があるのだが、この低価格入札が常態化すれば、他のバス会社は必然的に地元での仕事を失う。地元バス会社の存続にもかかわる事態に、ある市の関係者はこう話す。

「ダンピングと言われてもおかしくない低価格ですね。他社をつぶしにかけているとしか思えない。グリーン観光さんが東郷小のコースを落札しているのは、そこ(グリーン観光)が地元の大企業・植村組のグループだからでしょう。どこも植村組とは事を構えたくない。ただ、グリーン観光さんは動かすバスに余裕がないため、1コースだけの受注になったと聞いています。それにしても、他社の3分の1の金額とは……。やり過ぎです。非常識」

採算が合わない価格帯で応札することをダンピングというが、3分の1の金額で応札されれば、他社はお手上げ。確かに常識を超えたやり方だ。事前に低価格での応札が分かっていたとしても、大幅な赤字になることが分かっていれば、競おうというバス会社は出てこない。前出の市関係者による「他社をつぶしにかけている」という指摘は、決して的外れなものではあるまい。

そもそも、薩摩川内市のスクールバス運行業務の委託先を決める入札には「予定価格」が存在しており、その金額は、事前に市教委に提出されたバス会社各社による参考見積りを基に決められたもの。必然的に各社の応札額は予定価格に近いものになるのが普通で、川内観光交通も常識的な金額は承知していたはずだ。仕事が欲しいのはどの会社も同じのはずだが、自分の首を絞めるような低価格での応札という道を、まともな経営者なら選ぶまい。それも、受注した5コースの全てを他社の半額以下、うち3コースは3分の1というのだから、何をかいわんやである。

ところで、ここに一つの疑問が生じる。他社がどうあがいても打ち出せない低価格応札を、なぜ川内観光交通だけは平気で繰り返せるのか――そのことだ。

(以下、次稿)

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