保守分裂で馳元文相苦戦|石川県知事選で顕在化した森元総理の影響力低下

2月24日告示、3月13日投開票の石川県知事選挙が、保守分裂で大混乱となっている。

立候補の意思を明らかにしているのは、自民党の馳浩元文科相、同じく自民党の山田修路前参院議員、山野之義前金沢市長、共産党が推す飯森博子氏の4人だ。石川県は森喜朗元首相の地元で、秘蔵っ子とされる馳氏は昨年7月に出馬表明したが、本命視されながら、苦戦必至の状況となっている。

◇  ◇  ◇

石川県のある自民党県議が、選挙情勢についてこう打ち明ける。
「森元総理をバックに参議院で当選1回、衆議院で7回。レスリングの元オリンピック代表でその後人気プロレスラーに。政治家に転身してからは大臣にまで上り詰めた。奥様は元タレントです。知名度抜群。地元でも、全国的にも馳氏が圧勝と思っていたはず。それがまったく違う現状です。はっきり言って、馳さんは危ない」

馳氏の対抗馬となる山田氏は、農林水産省出身で参院議員を2期経験している。山野氏は、金沢市長を3期務めているように地元に強い政治家として知られ、市長選出馬時は自民党支部から支援を受けていたこともある。いずれも一定の基盤を持つ有力候補なのだ。この二人が出馬を決めた時点で、馳氏の圧勝はなくなっていたというわけだ。

また、馳氏と山田氏は、ともに安倍派所属。保守が3つに、安倍派が2つに分裂した格好で、これも馳氏苦戦の原因となっている。

2月6日に自民党石川県連が「自主投票」を了承しており、地元メディアが行った情勢調査の数字でも「馳苦戦」はハッキリしている。トップに立つのは、山野氏で、次いで5ポイントほど開き山田氏。さらに数ポイント差をつけられ馳氏という並びになっていた。

山野氏から見ると、馳氏は10ポイント近くも下。山野氏にも後れを取っている。馳氏と親しい倍派所属の国会議員が首をひねる。
「馳さんがなぜ知事選で苦戦しているのか、まったくわかりません。人気は十分で、森元首相が後ろ盾。情勢調査の結果を聞いて、派閥としても動揺しています。馳さんか山田さんか、派閥としてきちんと一人に調整できなかったのかと。安倍派から知事選に2人も出馬して、同士討ちで負けるなんて最大派閥としては恥ずかしい話だし、情けない。それにしても、なぜ、馳さんがダメなのか、なぜ地味とみられがちな山田さんの方が健闘しているのか。なぜ自治体の一首長が、国会議員二人の争いに割って入れるのか……」

山野氏は、金沢市という県都の市議から市長になった人物で、まさに地元一筋。保守、革新の両方、さらには無党派層からも人気があるという。石川県知事選と同日に行われる金沢市長選でも「後継者」とみられる候補者を立てることで、より優位に立とうという戦略だ。

一方山田氏は、石川県出身で農水官僚としてのキャリアから、農林水産業主体となっている地域からの支援が大きい。県内の首長、自民党県議の半数以上が山田氏の応援にまわっているうえ、立憲民主党も山田氏推薦。非自民勢力も取り込んでいる。金沢市を選挙区に抱える石川1区選出の衆院議員だった馳氏だが、同市で馳氏を推す声はなかなか聞こえてこない。前出の自民党県議が次のように解説する。
「馳氏の選挙戦は、知名度と風ですね。石川は保守王国だし衆院選では簡単に勝てたが、知事選挙となればそうはいかない。どうして首長や県議が馳氏を嫌い、山野氏、山田氏になびくのか――。正直に言えば、まず好き嫌い。次に地元愛の差でしょう。地元を下に見て、体育会系で横柄な言動の馳氏にムッとしている人はたくさんいます。わかりやすく言うとパワハラ的ってことですよ。なぜそれがまかり通ってきたか?それは森元総理がいたからですよ。しかし、政界を去っても失言続きで、石川県の恥をさらした形になっているため、地元に影響力はさほどありません。なのに、現職の谷本(正憲)知事が態度を明確にしていないのに、馳氏は出馬会見を開いた。よけいに、馳氏や森氏に地元は反発しますよ。2人のおかげで、官僚あがりで頭が低い山田氏、地元のたたき上げ山野氏が県民にはよりいい人にみえる。今までの情勢調査の結果や雰囲気からしても馳氏の圧勝はなく、三つ巴の争いになるとの見方が大勢です」

馳氏の危機に陣営も必死だ。森氏が乗り出し懸命にサポートしているのは当然だが、前回衆院選の石川1区で対立候補を立てていた日本維新の会の推薦や、菅義偉前首相の支援を取り付けるなどなりふり構わぬ戦いぶり。だが金沢市の自民党員からは、「それが逆効果でさらに差が開くことに気付かないのか」「なんで敵対した維新の推薦を受けるんだ」といった声があがっている。

 

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