【那珂川市・ナカイチ問題】「入居者公募」未実施が判明

福岡県那珂川市が所有するJR博多南駅前ビル「ナカイチ)」で不適切な賃貸借契約が続いている件で、新たな問題が浮上した。

旧那珂川町は市制に移行する前、駅前ビルのリニューアルに向け将来的なビル運営の指針を民間業者への業務委託で策定させていたが、そうして定めた現ナカイチ4階の店舗部分の入居者について「公募を行う」としながらこれを守らず、ビルの指定管理者が事実上の随意契約で決めていたことが分かった。不透明な入居者選定過程が、特定業者への便宜供与につながった可能性がある。

■入居者「公募」実施されず

ハンターは、ナカイチのテナント入居状況を確認することため、駅ビルの運営方針について調べた。

那珂川町(当時)は、2018年のリニューアルオープンに向け駅ビルの利活用に関する調査や提案、イベント実施を含む業務を民間業者に委託。発注された事業は「まちづくりオフィス運営業務」で、2016年度から18年度にかけて3年間で公費約6,000万円が投入されていた。

ハンターが情報公開請求で入手したのは、同事業終了時に受託者が市に提出した業務報告書(下がその表紙)で、今後のビル運営の指針となるもの。その中に、問題視されている4階飲食店についての記載があった。

注目したのは、「施設利用者の公募を行う」という記述(下の画像、参照。赤いアンダーラインはハンター編集部)。ビルは市有財産であるため、公平性を保つには賃借人を公募すべきだという当たり前の内容だ。しかし、その後の経緯をどう調べてみても、「公募」が行われた記録はない。

では、どうやって決まったのか――。市側に確認したところ、4階スペースでビアガーデンを運営している業者は、公募による選定を経たものではないという。

市の担当者は、「当時の指定管理者が入居者を決めた」と明言した上で、「業者選定の前年に実施された期間限定でのビアガーデンが好評だったためと聞いている」という他人事のような回答だった。

これまで報じてきた通り、ナカイチの賃貸借契約書では、貸主が指定管理者となっている。契約に至った経緯について知るべく当時の指定管理者に対し質問状を送ったが、回答はなかった。

市民の共有財産であるビルの入居者を公募せずに、特定事業者に「格安」で貸し与えるというのは、どう見ても便宜供与。応札者が少なくなろうとも、当初方針通りに「公募」という形をとるべきだった。

しかも、事業者選定などの運営方針は、約6,000万円もの市税を投入した業務委託の結果、決められたもの。これを無視した賃貸借契約は、無効と言われてもおかしくあるまい。議会のチェックも甘かったと言わざるを得ない。

■是正されない不適切な賃貸借

「ナカイチ」の賃貸借契約は、客席部分が公共スペースのため契約に含まれず、賃料を徴収しているのがキッチンスペースのみという不適切な内容。ハンターの報道を受けた市の担当課は「是正する」と話していたが、実際に行われたのは、「客席部分は公共スペース」と明示することや屋上庭園への導線を確保するという「形だけ」のもの。市は、平米単位の賃貸借を認めていない現行の「那珂川市博多南駅前ビルの設置及び管理に関する条例条」の規定を盾に、賃貸借契約を見直す予定はないとしている。

(東城洋平)

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