またしても道警不祥事|速度違反“捏造”で5警官に懲戒

交通取り締まりで速度違反の切符を捏造したとして北海道警察は11月2日、交通機動隊に所属する警察官5人の懲戒処分を発表した。このうち捏造を主導したとされる男性警部補(58)=逮捕・送検済み=は最も重い「免職」処分となり、同日付で札幌地方検察庁に証拠隠滅と虚偽有印公文書作成・同行使の罪で起訴された。

仰天のレーザー装置悪用手法

処分されたのは、先の警部補のほか部下の巡査長3人(いずれも30歳代男)と、上司の警部1人(50歳代男)。共犯とされる巡査長は1人が「減給6カ月」、残る2人が「戒告」となり、不正の隠蔽をはかったとされる警部は「減給6カ月」となった。3人の巡査長は主犯の警部補と同じ容疑で送検されていたが、札幌地検は2日までに全員の不起訴処分(起訴猶予)を決めている。

道警の発表や地検の起訴状によると、免職となった警部補は昨年8月から本年5月までの間に少なくとも10件、パトカーに搭載される「スキャンレーザー式車両速度計測装置」を悪用して速度違反を捏造し、違反をしていない一般車の運転手に反則切符を交付していた。パトカーに同乗していた部下も捏造に荷担し、また不正を認知していた上司もこれを黙認していた。

不正の手段は極めて大胆で、その方法を使えばいくらでも違反をでっち上げることができる。測定装置の正しい使い方と比較して記すと、以下のような方法だ。

【正しい使用法】…停まったパトカーから走行中の車へレーザーを照射し、速度を測る。

【不正な使用法】…パトカー自身が速度超過で走り、道路外の電柱などにレーザーを照射して(パトカーの)速度を測る。

元警部補は「現場見取図」にはパトカーが停まっていたかのように記載し、ターゲットとなった一般車の運転手に割印を押させていた。これらの違反捏造は同僚の告発で発覚したといい、その報告がなければ誰も気づかないままだった可能性が高い。地元で警察取材にあたる記者によると、捏造が疑われる速度違反は起訴された10件のほかに少なくとも37件あるとみられており、現在道警が調査を進めているという。不正を黙認し続けた警部が部下らに箝口令を敷いていた、という情報もある。

交通違反を取り締まるべき警察官が自ら速度違反を繰り返し、せっせと架空の反則切符をつくり続けたという、仰天すべき不祥事。一度に5人の処分は、道警で本年初めての事態となった。処分に伴い、職員を監督する道警監察官室は「関係者と道民の皆様に深くお詫び申し上げる」と謝罪コメントを発表、「業務管理・人事管理を徹底し、再発防止に努める」としている。

■信頼性欠く道警の交通取り締まり

道警の交通取り締まりを巡っては10月末、元警察官によるストーカー事件の裁判(⇒「北海道警・わいせつ警官、起訴事実認める」)で、交通事件を担当していた被告人が不適切な取り締まりについて証言。元警察官の被告が、「(交通取り締まりは)矛盾が多い。処罰される・されないの基準があいまいで、筋が通らない。グレーゾーンが大きい」などと、実態を暴露した形となっている。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
北方ジャーナル→こちらから
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