伊敷中いじめ問題で鹿児島・MBCが虚構たれ流し|被害者側に取材せず権力擁護

あらゆる意味で、「悪意に満ちた報道」というしかない。

鹿児島市立伊敷中学で起きた“いじめ”の実態を同校と鹿児島市教育委員会が隠蔽していた問題を巡り7日、地元のローカル局MBC南日本放送が、被害者側への取材をしないまま学校と市教委のでっち上げた内容を一方的に垂れ流した。

同日夜7時過ぎに流れた同局のニュースは、「中学生がいじめで転校 鹿児島市教委が県に報告せず」というタイトル。これだけなら間違いではなかったが、配信された記事自体は、学校と市教委の卑劣な言い訳だけを取り上げた、報道とは程遠い内容だった。

ネット上に公表されたニュース画面と記事は、次のようになっている。(*以下のMBCニュースの画像と記事は、同局の公式サイトから引用

MBCのニュース記事は、本来なら市教委から報告されるべき“いじめの重大事態”が、県教委に上がっていなかったことが『分かった』と書いている。まず、どうして『分かった』のかという話になるが、この記事が伊敷中のいじめ問題を報じたハンターの記事を参考にしたのは確か。つまり「パクリ」なのだ。

『鹿児島市の教育委員会などによりますと』として複数への取材であったことを匂わせ、もっともらしく見せかけているが、MBCが伊敷中のいじめ問題を知ったのきっかけは、ハンターの記事以外に考えられない。

市教委も県教委も、この問題については現在まで何の発表もしていない。実は、被害者本人やその家族と直接会って取材しているのは、ハンターと一部の新聞社のみだ。自社記事の情報源が報道機関であるなら、それがネットのニュースサイトであろうと、断りを入れるのが筋だろう。同局の行儀の悪さについては、「違法性がある」と指摘しておきたい。

断りなしに“後追い”されるのには慣れているが、たいていのケースで黙認してきたのは、そうした後追い記事が正確だったからだ。MBCを許せないのは、著作権侵害に近い形でハンターの独自ネタを後追いしておいて、学校や市教委が作った「虚構」をたれ流し、被害にあった女子生徒側が勝手に転校した格好になるような印象操作を行ったからだ。絶対に許せない。その点について、以下に述べる。

MBCの記事は『学校は女子生徒への被害の弁償や謝罪の場を設けようとしましたが、翌月に女子生徒の保護者から転校の申し出があり、生徒は別の中学校に転校しました』と書いている。しかし、“学校が女子生徒への被害の弁償や謝罪の場を設けようとした”というのは間違いで、そうした場を設けるように求めたのは被害者生徒の保護者だったことが、記録文書から分かっている。

被害者の保護者が求めたのは、いじめを行った生徒と親による説明。それも、被害者の女子生徒が過激ないじめを受けて医療機関で治療を受けなければならない状態になっていたため、保護者だけで対応したいという願いだったという。それを、いじめられた子供が出てこなければ場は設けないと突っぱねたのは、伊敷中の方だった。この経緯は、被害生徒が転校を余儀なくされた際の、届出文書に明記してあることなのだ。

被害者側に取材していれば、証拠書類はなくても、学校側や市教委の言い分が虚構ではないかという疑いが持てたはずで、前掲のようなデタラメな記事は書けなかっただろう。ただし、この記事を書いたMBCの記者が、権力を監視するという報道の使命を理解してないクズなら、話は違ってくる。

問題になるのは、しましたがの『』。学校が女子生徒への被害の弁償や謝罪の場を設けようとした”という好意を装うための虚構に、この『』が付いたことで、被害生徒の転校が、そうした行為を踏みにじったものだったという印象を与えている。実際、ハンターにはMBCのニュースを見た読者から、「結局、いじめにあった女子生徒が、勝手に転校しただけの話ではないの」という問い合わせが来ている。MBCは問題の記事で、意図的に被害者である女子生徒側を貶め、市教委や伊敷中に責任が及ばないように印象操作したのではないか。MBCが、記事の絶対条件であるはずの当事者に対する「裏どり」をしなかった以上、反論する余地はあるまい。

8日午前、ハンターの代表がMBCに対し正式に抗議したところ、対応した同局の報道部長は、問題のニュースがハンターの記事を見ての「後追い」だったことと、被害者側に取材せず権力側の言い分だけを採用したものだったことを認めている。

 

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