鈴木北海道知事、パワハラ死めぐる質問に回答拒否連発|看護学院問題で無責任体質露呈

 北海道立江差高等看護学院のパワーハラスメント問題で、在学中に自殺した男子学生(当時22)の遺族に道の代理人が「自殺とハラスメントとの因果関係は認めない」などと伝えていた問題で10月27日、道の鈴木直道知事が記者会見で回答拒否を連発し、本年5月に知事自身が遺族へ謝罪した文言の真意などについて説明を避け続けた。知事に代わって報道陣への説明にあたった担当職員らも、当時の謝罪の意図などを確認する問いに「現時点ではコメントを控える」と明答を拒否した。

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 本サイトが10月24日付の速報で伝えた通り、道の第三者委は本年3月にハラスメントと自殺との因果関係を認める報告をまとめており、5月には当時の担当課長らが遺族に直接謝罪したほか、鈴木知事も会見やコメントなどで遺族への「お詫び」を表明している。遺族らはこの謝罪が第三者委の調査報告に基づくものと受け止めていたが、10月23日になって道側の代理人から遺族代理人へ電話連絡があり、自殺とハラスメントとの因果関係を否定する認識が示されたという。先の速報配信後、複数の地元報道大手が本サイトに続いてこの一件を報じ、おもに第三者委の被害認定と今回の代理人発言との喰い違いが指摘されることとなった。

 27日午後に設けられた北海道知事の定例記者会見では江差の問題に関する質問が相継いだが、5月時点での謝罪の真意を問われた鈴木直道知事はひたすら明答を避け続け、たびたび口の端を吊り上げたり質問者を睨みつけるなど苛立ちの表情を見せながら担当部局へ対応を“丸投げ”した。道政記者クラブ加盟各社の記者と鈴木知事とのおもなやり取りを、下に引いておく。

北海道テレビ(HTB):4年前の男子学生の自殺について、第三者委員会が教師のパワハラを認定し、自殺についても相当因果関係があったとする調査結果をまとめている。今週になって道の代理人が遺族側に『自殺の予見可能性はなかった』『ハラスメントとの因果関係は認められない』と、自殺の賠償には応じないような考えを示したと聞くが、道はパワハラと自殺の因果関係をどう考えているのか?
鈴木知事:まず、これまでも会見などの場におきまして、説明をさせていただいてきましたが、第三者調査委員会の報告書、こちらにあります通り、教員によるパワハラが認定をされました。このことや、監督責任を有する道にも問題があるとされました、このことを重く受け止め、ご遺族の方に謝罪をさせていただいたところでございます。そして、パワハラに対する法的責任については現在、道の顧問弁護士を通じまして、ご遺族の代理人と損害賠償に関する交渉、これを行なっているところであります。またパワハラと自死との間の法的な因果関係の解釈につきましては、こちらについても交渉中の案件でもありますので、内容等についてのコメントについては差し控えさせていただきたいと思います。

HTB:5月には道の担当者がご遺族に直接謝罪し、知事もこれまでの会見の中で謝罪の言葉を述べている。あれは、パワハラが認定されたこととそれが自殺に繋がったという第三者委の調査をすべて受け止めた上での謝罪というわけではなかったのか?
鈴木知事:調査報告書の内容についてのご説明につきましては、必要があればのちほど各担当部局からご説明をさせていただきますが、その報告書にあります通り、先ほど申し上げたようなパワハラの認定がありました。また、その監督責任を有する道にも問題があるとされましたので、そのことを重く受け止めた上で、ご遺族の方に謝罪をさせていただいたところです。

HTB:つまり『パワハラが自殺に関係しているとは考えていない』『それについては謝っていない』ということか?
鈴木知事:報告書のご説明につきましては、のちほど担当からさせていただきたいと思います。その報告書を受けて、謝罪を申し上げたと、こういうことでございます。

HTB:報告書ではハラスメントが認定され、そのすべてが自殺と相当因果関係があるとされている。それについて謝罪をしたのではないのか?
鈴木知事:そこは(担当者に)説明をしていただければと思います。

HTB:答えになっていない。自殺との因果関係があるということを受けて、それを含めての謝罪なのか?
鈴木知事:はい、そこを今(担当者が)説明しますので。

古川秀明・保健福祉部地域医療推進局長:今お話のあった通り、調査書の中身につきましてはですね、道としてもたいへん重く受け止めた上での謝罪ということでございまして……。
北海道新聞:もっと大きな声で喋ってもらえないか。
古河局長:すみません。で、今お話あったように法的なですね、因果関係の部分、そこの解釈というところにつきましては今、交渉中でございますので、ちょっとそこについてのお答えというのは差し控えさせていただきたいと思っております。
知事:いや、報告書の説明だと思うんですけど、訊いているのは。報告書の表現の確認なんじゃないでしょうか。
局長:もちろん報告書にですね、自死との相当因果関係は認められるということは書かれておりますので、そこについての記載、調査書が出たということについては、受け止めというのは当然しているところでございまして、そこをふまえて今あの、損害賠償の交渉というところに入っているところでございます。
知事:そのこと以外も(調査書に)書いてます。
局長:いちおうその損害賠償の関係につきましては、調査委員会のですね、委員の方からは、なかなかその、任意の聴き取り調査だとか、そういった客観的な資料の収集が限られていたというところですとか、この調査結果がですね、ただちにその行為者ですとか管理者の民事的な責任をですね、裏づけるものではないというところも記載されているところでございまして、こういったところもふまえての今、交渉にあたっているというところでございます。

HTB:知事がどういう意味で謝罪したのかという質問なのだが、それ(調査報告)を受けて謝罪したということか?
知事:そうです。報告書を受けて謝罪をさせていただきました。

HTB:道は、学生が亡くなった時にきちんと調査をしていなかった。だからこそ第三者が調査し、結果が出た。調査書では自殺との相当因果関係が認められるとされているが、それを道側が覆すということになると、第三者調査のそもそも意味というのを知事はどう考えているのか?
知事:今、第三者の調査報告書の説明をさせていただいたと思いますので、その内容をしっかり受け止めた上で今、損害賠償に関する交渉、これを行なっているというところであります。

HTB:ご遺族に誠意をもって対応したいと繰り返し述べていたと思う。今こういう状況になっているが、知事としては今も誠意をもって対応していると。
知事:やはり、ご遺族の代理人としっかり今、交渉を行なっているわけでありますから、道としての顧問弁護士、こちらを通じてですね、この示談交渉、これに臨んでいきたいというところです。

朝日新聞:今、事務方から『調査結果がただちに民事的な責任を裏づけるものではない』と説明があった。知事の謝罪はそれに基づいて行なわれたということか?
知事:ご質問の中にもありましたけれども、報告書の中にそういった表現があるということを担当がご説明したのだということであります。いずれにしても損害賠償に関する交渉を今、行なっています。先ほど申し上げたような、パワハラと自死に関する、間の法的な因果関係の解釈についても今、示談交渉中の案件でありますので、コメントについては控えたいと思います。

朝日新聞:第三者報告に『民事的な責任を裏づけるものではない』と記載されているため、民事の賠償は別途交渉するものであると、報告書で問われている責任は必ずしもすべて受け入れるものではないと、そういうことか?
知事:今、個別の案件について、まさに交渉中でありますから、その解釈などについてのコメントは控えたいと思います。

朝日:繰り返しになるが、『ただちに民事的な責任を裏づけない』と記載されていると言及があった。ということは、この点を重視して交渉に臨んでいるということでよろしいか?
知事:報告書をしっかり受け止めた上で対応している、ということであります。

朝日:ということは、必ずしもその内容を受け入れるということではないと?
知事:何をもって『受け入れる』のか、ということがあるのだと思いますが、報告書自体をしっかり受け止めた上で、それぞれの今、具体の交渉にあたっている案件についても示談交渉、これを行なっていますので、その点についての解釈についてのコメントは控えたいと思います。

朝日:受け止めというのは、必ずしもその内容を諒とするものではないと?

司会:……ちょっと、報告書のことにつきましてはのちほど、担当部局からもう一度、説明させていただければと思いますが、いかがでしょうか?

知事:ほかに(ほかの話題で)ご質問がある方もいらっしゃるかもしれません。

司会:お時間もございますし、いかがでしょう。担当部局のほうから追ってもう一度、ちょっとこの場でご説明させるようにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。では、このほかのご質問、いただければと。

テレビ北海道(TVH):第三者委の調査結果を受けた知事コメントで……
知事:同じ質問!

司会:同じ質問ですから、のちほどまた。

TVH:同じ関連の、違う質問。『ご遺族の意向を伺いながら』と……
知事:そのほかのご質問があるから、あとに対応していただければと思います。

司会「わかりました。じゃあ、そのほかのご質問のあとにもう一度お受けします、すみません。では、これ以外のご質問を先にお受けしてもよろしいでしょうか。

=約18分間、別の話題で質疑応答=

TVH:知事コメントで『今後ともご遺族の意向を伺いながら誠意をもって対応して参ります』とあるが、遺族側は意向とは真逆の対応だったと言っている。『意向を伺う』は嘘だったのか、それともこれから訊くのか?
知事:これはあの、しっかり、当然、代理人の方を通してですね、お考えなどについてお伺いをしながら、まさに示談交渉に顧問弁護士があたっております。今後ともさまざまな、そういったお考えが代理人弁護士を通してあると思いますので、そこはしっかりですね、受け止めながらも、示談交渉に臨んでいくということであります。

TVH:では『意向を伺う』という文言は生きていると?
知事:代理人を通してさまざま、お話をいただいておりますので、そのことについてしっかりとお聴きはしております。

司会「江差高看の関係はちょっと、担当部局がこのあと残って、報告書などご説明するようにしたいと……、あっ、ほかのご質問ですか?

毎日新聞:江差高看の件で、第三者調査の結果が出るまでに3年かかっている。自治体によっては、いじめなど同様のケースに際し、遺族に配慮して第三者調査の結果に基づいて示談交渉に応じることもあると思うが、道としてはもうそういった対応をとることはないのか。あと、ご遺族が裁判を考える可能性もあり、そうなるとさらに長期化することになるが、知事はどう考えているのか?
知事:そこはまさに示談交渉中でありますから、コメントを控えたいと思います。

毎日:長期化もやむを得ないと?
知事:今、示談交渉中ですので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

司会「交渉中でございますので、これ以上のご質問は……。この関連でございますか。あの、同じ内容でなければ、はい、どうぞ。

北海道新聞:遺族側の説明では今回、道から『相当因果関係は認められない』と電話で伝えられたと。一般的な感覚では、電話はあり得ない。手法に不備はなかったか?
知事:それは顧問弁護士とともにですね、適切に対応していきたいと考えています。

司会「ええ、じゃあこのあと、この関係ちょっと担当部局、残しますので、えー、よろしければこれで、本日の記者会見、終了したいと思います。

 知事と記者たちとの問答は、延べ15分あまりで打ち切られた。その後、同じ会見室で担当局長と課長とが各社の取材に応じ、これにはクラブ非加盟の筆者も参加が叶ったが、約50分間続いたやり取りは事実上ノーコメントの連発に終わることとなった。とりわけ、5月の謝罪について「何に対しての謝罪だったのか」「ハラスメントと自殺との相当因果関係を認めたのか、そうでないのか」の問いが異口同音に繰り返されたが、この簡潔な質問への回答は結果的に「現時点ではコメントできない」の一言。問答の最中、記者の1人が呆れ声で「答えないなら毎週、知事に同じ質問をするまでだ」と宣言する一幕もあった。

 知事の謝罪の意味について知事自身が答えようとせず、担当部局に下駄を預けて報道陣に背を向けた。引き取った担当部局もまた明答を避け続けた。亡くなった学生の遺族は、これらの“無答弁”を伝え聞き「ただの逃げにしか聴こえない。パワハラとの因果関係を認めたと思ったから謝罪を受けたのに…」と失望を顕わにした。週が明けて10月30日には遺族代理人の植松直弁護士(函館弁護士会)のもとに道側から文書回答が届き、改めて自殺の予見可能性やハラスメントとの相当因果関係を否定する認識が示されたという。植松弁護士は遺族同様「道の謝罪は調査報告を根拠としたものと受け止めていたが、根本からひっくり返された」と憤り、今回の対応については「第三者報告を覆すのであれば、独自調査などでその根拠を示してもらいたい。ハラスメントと自殺との因果関係を認めない限りは示談を受け入れられない」と話している。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

 

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