北海道警が女性警官の傷害事件隠蔽|地元報道に虚偽説明の疑い

北海道警察が11月中旬、札幌市内の女性警察官を傷害の疑いで逮捕していながら事件を発表せず、情報を掴んだ地元報道機関に対しても虚偽の説明をしていた疑いがあきらかになった。傷害事件の被害者や代理人弁護士は「極めて悪質」と道警の対応を批判しており、近く当該警察官を刑事告訴する考えだ。

◇  ◇  ◇

地元報道や被害者代理人によると、事件が起きたのは11月16日夕。札幌豊平警察署に勤める20歳代の女性巡査(当時)が、マッチングアプリで知り合った男性と口論になり、逮捕術を使ったとみられる暴力などで男性に全治2週間の怪我を負わせた。巡査は現場に駈けつけた豊平署員に傷害の疑いで逮捕され、のち書類送検されたが、道警は事件を報道発表せず、巡査の処分も公表しなかった。

事件の情報を独自に掴んだ地元紙・北海道新聞は12月24日付の紙面でこの経緯を報じ、ほかの新聞・テレビも後を追ったが、各社の取材に道警は「適切な判断だった」などと対応、傷害の程度については「手をひっかく」などの「軽いけが」と説明している。

一方、被害男性と代理人弁護士はこの説明を「事実と異なる」と指摘、24日付で地元報道へ経緯説明にあたり、27日には道警本部への申し入れを行なった。同弁護士によると男性の被害は決して「軽いけが」とは言えず、女性巡査は男性に馬乗りになって顔を地面に押しつけるなどし、顔面や手を打撲させた上、腰椎と頸椎に捻挫の被害を与えていた。弁護士らの説明をまとめると、以下のようになる。

女性巡査は11月中旬ごろにマッチングアプリで被害男性と知り合い、同16日午後に札幌市内で初めて顔を合わせた。2人は近くの店で飲食をともにし、午後5時半ごろに退店。その際、被害男性が割り勘での会計を提案したところ、女性巡査は「持ち合わせがない」「出会った男はみんな払ってくれた」などと支払いを拒否、店を出た後も「キャッシュカードがない」「クレジットカードで払えるが店に戻りたくない」「駅で待ち合わせている友達が払ってくれるかも」などと言い逃がれを繰り返した。男性は2度ほど110番通報を試みたが、巡査がそのたびに支払い方法を提案してくるため、途中で電話を切らざるを得なかったという。

もともと食事代を支払う考えがなかった巡査は、店を出てから通りかかった駐車場の塀に数枚の100円硬貨を置いて「これで足りるでしょ」と開き直り、そのまま立ち去ろうとした。そこで男性が「警察を呼ぶ」と告げたところ、巡査は男性の手を掴んで電話を取り上げようとし、さらに押し倒して馬乗りになった。巡査は電話を持った男性の手を何度か地面に叩きつけ、また頭を鷲掴みにして顔を地面に押しつけるなどの暴行に及び、男性が助けを求めて大声を上げるまでその身体を制圧し続けたという。その後、現場から逃走をはかった巡査は近くを通りかかった別の男性の制止を振り切って逃げ続けたが、結果的にパトカーに発見されて現行犯逮捕に到った。巡査は当時、被害男性に対して身分を偽り「スーパーの店員」と名乗っていたが、逮捕後に警察官であることがわかったという。男性は事件翌日、市内の医療機関で全治2週間の怪我と診断された。

地元報道が指摘する通り、道警は以上の経緯を一切発表せず、その判断を「適正」だったとしている。一方、事件のあった日は帯広市の飲食店で知人に物を投げつけた男(29)が、また千歳市の住宅で女性を殴った男(61)が、それぞれ帯広署と千歳署に傷害の疑いで逮捕されており、これらはいずれも報道発表されていた。今回の女性巡査の傷害事件が発表を免れた背景には「身内への忖度」があったことが強く疑われるが、道警は各社の取材に「適正」としか説明していない。筆者が豊平署に取材対応を求めたところ、同署は「こちらでは対応できない」と本部監察官室への問い合わせを促したが、監察官室はやり取りを拒否して本部広報課へ対応を一任、広報課は筆者が記者クラブに加盟していないことを理由に文書での質問を求めてきた。だが12月24日付で同課に寄せた質問に対し、道警から官庁御用納めの28日夜になって伝えられた“回答”は、以下の一文のみだった。

《お答えできません》

くだんの女性巡査は、12月に入ってから依願退職したことが伝えられている。傷害事件の被害男性は近く、事件当日の飲食店での支払い拒否について元巡査を刑事告訴する考えだ。

なお、この傷害事件が発覚した後、道警ではさらに警察本部勤務の男性巡査長による強制わいせつ事件が報じられ、こちらも未発表だったことがわかった。これについても道警は筆者の取材に「お答えできない」としている。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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