逮捕・起訴でも残る「日大のドン・田中英寿」のカネとちから

日本大学の病院建設を巡る背任事件に関連し、受領していた「賄賂」を申告していなかったとして日大のドン・田中英寿前理事長が所得税法違反容疑で逮捕、起訴された。昨年12月21日に保釈されたが、田中被告が容疑を認めているため、検察も反対意見を出さなかった。

既報(「日大疑惑」新展開|国税頼みとなりそうな田中理事長Xデー)の通り、噂になっていた贈収賄やブラックな交際、裏口入学などは立件の対象になっていない。検察捜査の過程で、何があったのか――。

◇  ◇  ◇

なぜ脱税だけの立件で終わったのか――ある捜査関係者は、「田中を逮捕、有罪判決に持ち込むことが最優先。最も容疑が固いとみられた、キックバックされたカネの脱税で立件という結果になった」と打ち明ける。

当初、徹底抗戦するとみられた田中被告が、脱税についてだけは認めたことも大きかったという。

自らが牛耳ってきた日大相撲部の関係者に「細かいカネのことは妻がやっているので何も知らない。(立件されたら)日大と政治家などの関係をすべて言ってやる」などと豪語していた田中被告だったが、東京地検特捜部にそのような「脅し」は通用しなかった。脱税は、田中被告の妻である優子氏も、ほう助の形で関与していた疑いが濃厚だったからだ。

病院建設を巡る背任事件で起訴された籔本雅巳被告の知人は、こう聞かされていた――「お礼を持参すると、いつも(田中被告の)奥様から感謝の電話がきていた」

容疑を否認していた田中被告は、妻の取り調べや立件を示唆されたとたん、“妻に指示して、業者からのカネは申告しなかった”、“くれたものは、もらえばいい”などと一転して罪を認める供述をはじめたという。前出の相撲部の関係者が、こう語る。
「田中前理事長は奥さんに頭が上がらない。特捜部が奥さんの立件を口にしはじめると、あっという間に陥落したそうだ。おまけに、(脱税したカネが)籔本らが起訴された事件に絡むカネだったことや、どこでいつもらったかまで詳細な供述をしていると聞いている。これまで田中前理事長は『相撲取りはごっちゃんですでいい。そういう世界だ』とうそぶいてきたが、逮捕されれば持ち物はもちろん、人と会うことさえも制限される。不自由な拘置所生活にほとほと嫌気をさしていたようだ」

逮捕後、田中被告は日本大学の理事長、理事に加え、同窓会組織「校友会」の会長まで解任された。これで完全に日大とは「無縁」になった形だ。しかし、長く日大に君臨してきた田中被告が黙っているわけがないと、恐れを口にする関係者は少なくない。取材に答えた日大の元理事も、その一人だ。
「今の理事や評議員、つまり日大の執行部はすべて田中前理事長の意に沿う人間だからこそ選ばれてきた。田中前理事長は、『俺が○○にしてやった』と常々、口にしていたほど。前理事長の裁判は執行猶予判決だと予想されており、反撃も予想される。新理事長は記者会見で『田中被告とは永久に決別する』と言っていたが、田中前理事長の反撃が始まった時、耐えられのだろうか」(同元理事)

すでに学内の一部からは、特定の幹部の名前を挙げ『田中被告と接触しているのではないのか』と、噂になっているという。

政界への影響力も侮れない。「政治家は保険だ、何かあった時に役立つ」と話していたとされる田中被告は、理事会に「政界枠」を設けて古賀誠元自民党幹事長(商学部OB)や小沢一郎氏(大学院OB)など時の大物政治家を理事に据えてきた。最近では、自民党の選対委員長だった山口泰明氏(引退)が理事だった。こうした人脈を使って、巻き返す可能性は否定できないのだという。

田中被告の保釈保証金は6,000万円。これは現金で納められている。日大の理事長であったとしても、そう簡単には用意できない金額だ。さらに、田中被告の弁護人には高検検事長の経験者である“大物ヤメ検”がついており、弁護費用はかなりの額になるはずだ。前出の日大元理事が、次のような懸念を口にした。
「要するにカネとちからは残っていることになります。このまま引き下がることは、田中前理事長のプライドが絶対に許さない。執行猶予という形で裁判を早々に終わらせて、何か仕掛けてくるのではないだろうか」

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