【南国殖産・田川バイオマスの闇】二場前市政の「虚偽答弁」明らかに|問われる事業の正当性

 地元住民が反対運動を展開している「田川バイオマス発電所」(福岡県田川市)の事業者である南国殖産(鹿児島県)が、事業認可を求めるため2018年(平成30年)12月20日付で九州経済産業局に提出した『バイオマス燃料の調達及び使用計画書』に、建設予定地の公表前であったにもかかわらず「これまで地元の代表者に対しては事業内容の説明をし理解は得られている」と事実上の虚偽を記載。2020年3月31日に差し替えた同計画書には、「宴会」を「住民説明会」と明記していた。

 南国殖産が虚偽の内容で国を騙した形だが、発電所の立地自治体である田川市も、二場公人前市長(今年4月の市長選で落選)時代の議会質疑などで事実と異なる答弁を行っていたことが明らかとなった。

■バイオマス発電、事前協議を隠蔽か

 2021年(令和3年)の田川市議会、一般質問に立った佐藤俊一市議会議員が同市内で計画が進んでいた木質バイオマス発電所について質問、市側がそれまでの経過を説明した。

建設経済部長:これまでの経緯でございますが、木質バイオマス発電所の設置につきましては、平成31年の1月に南国殖産株式会社より農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律、いわゆる農山漁村再生可能エネルギー法第5条第6項に基づく事業提案書が提出をされました

 その内容につきましては、南国殖産株式会社出資の田川バイオマスエネルギー株式会社が糒地区において地域の林地残材を燃料とした発電施設を建設し、発電時に発生する排熱を農業で活用するというものでございます。
今回の取組は、経済産業大臣による再生可能エネルギー発電事業計画の認定を受けていることや、農山漁村再生可能エネルギー法の趣旨に沿ったものであることから、本市においても手続を進めており、現在のところ田川市再生可能エネルギー農山村活性化協議会の協議を経まして、農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本計画の策定に至っております。

 これらの内容につきましては、平成31年2月5日及び令和3年8月18日の建設経済委員会のほうで事務報告を行っているところでございます。以上でございます。

――それでは、次に、2019年2月5日に田川市と南国殖産株式会社が協定書を結んでおりますが、この位置づけや意義はどのようなものなのかお尋ねいたします。
建設経済部長:協定書の位置づけ、意義ということですが、一般に協定書と申しますと共同で事業を実施するかのように捉えるというか、そういうイメージでございますが、今回結んだ協定書の内容につきましては、バイオマス発電所の設置を検討するというものでございまして、具体的には、設置に際して南国殖産株式会社が行う公害防止対策や周辺の良好な環境や安全の維持及び地域社会への貢献などを含めた計画に対して、立地検討を円滑に行うために締結をしたものでございまして、共同で事業を実施するために交わしたというものではございません。以上でございます。

 

 二場市政時代の田川市は、議会答弁でも明らかなように、木質バイオマス発電所の計画を知った時期を、南国殖産が市に対し「田川バイオマス発電所設置事業計画」を提出した『平成31年1月25日』だったとしていた。しかし、これは真っ赤な嘘。ハンターが国に情報公開請求して入手した、平成30年12月20日付「バイオマス燃料の調達及び使用計画書」には、同社がかなり以前から田川市などと協議を進めていたことが分かる記述があった。(*下の画面参照

・「飯塚農林、田川市役所、発電所予定地一体の農地管理者(農事組合)、地区水利組合、筑豊地区木質バイオマス推進協議会の代表者、燃料調達事業者との間で定例会及び協議を行っている

・「平成30年12月3日には、当社主催の元、田川市役所会議室をお借りし、飯塚農林事務所担当者、田川市役所担当者の同席の元、各森林組合を含む素材生産者及び燃料調達事業者にお集まりいただき、事業の説明と燃料調達に課する協力を依頼した」

 つまり、田川市が木質バイオマス発電所建設計画について初めて認識したと主張してきた「平成31年(2019年)1月25日」よりはるか以前から、田川市を交えた「定例会及び協議」が開かれ、平成30年(2018年)12月20日には、南国殖産から国に事業の認定申請が出されていたということだ。二場前市政が、市民や議会を欺いていたのは明白である。

■虚偽文書提出 — 姑息な南国殖産

 田川市以上に姑息で、到底まともな事業者とは言えないのが鹿児島の南国殖産だ。同社は、平成30年(2018年)12月20日付で、国に内容を書き変えた『バイオマス燃料の調達及び使用計画書』を提出し、申請書類を差し替えていたのだが、「7 特記事項等」の欄からは、「飯塚農林、田川市役所、発電所予定地一体の農地管理者(農事組合)、地区水利組合、筑豊地区木質バイオマス推進協議会の代表者、燃料調達事業者との間で定例会及び協議を行っている」、「平成30年12月3日には、当社主催の元、田川市役所会議室をお借りし、飯塚農林事務所担当者、田川市役所担当者の同席の元、各森林組合を含む素材生産者及び燃料調達事業者にお集まりいただき、事業の説明と燃料調達に課する協力を依頼した」といった平成31年(2019年)以前の動きは全て削除されていた。(*下が差し替えられた「バイオマス燃料の調達及び使用計画書」の表紙。次が平成31年(2019年)以前の動きが削除されたページ)

 下の表は、田川バイオマス発電所を巡る経緯を時系列で整理したもの。国が最後に開示した「バイオマス燃料の調達及び使用計画書」の記載内容を赤字で加えた。計画推進の起点となったのは、2018年6月の福岡県議会における佐々木允県議会議員(現・副議長)のバイオマス発電推進の訴えだが、水面下で事が進む中での議会質問であったことがよく分かる。

■事前協議の記録は不存在

 木質バイオマス発電所の建設計画について南国殖産側と協議を重ねていたにもかかわらず、その事実を隠して計画のスタート時点をごまかしていた二場前市政。ハンターが今年6月、平成29年度(2017年度)以降に、飯塚農林、田川市役所、発電所予定地一体の農地管理者(農事組合)、地区水利組合、筑豊地区木質バイオマス推進協議会の代表者、燃料調達事業者などと市が行ってきた協議や定例会の記録を開示請求したところ、出てきたのは令和2年度、3年度、4年度に県飯塚総合庁舎で開かれた「田川地域資源利用推進協議会」の記録だけ。2018年頃に行われたはずの協議や定例会の記録は「残されていない」(田川市農政課)という説明だった。

 国に提出された文書に記載されていた定例会や協議の記録が残されていないというのは極めて不自然。二場前市長時代に廃棄された可能性もある。

 二場前市政が木質バイオマス発電計画について、事前協議の真相を隠してきたのは紛れもない事実。噓つき市政が何を守りたかったのかについては今後のさらなる検証が必要となるが、疑惑のバイオマス発電計画に絡み、SNS上に事実上の「嘘」を投稿していた政治家もいる。次稿で、詳細を報じる予定だ。

 

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