大詰め迎えた河井陣営選挙違反事件 安倍政権が恐れる「1億5千万円」

昨年7月の参院選を巡って、自民党の河井案里参院議員と夫の河井克行元法相の公職選挙法違反事件の捜査が大きく進展。国民の反対を無視して検察庁法の改正を強行しようとしている安倍政権に、動揺が走る事態となっている。

■ターゲットは元法相

広島地検の応援に入った東京地検特捜部は、複数の広島県議、広島市議、県内の首長など幅広く政界関係者を捜査しており、その対象は100人近いという。ある捜査関係者が、声を潜めてこう話す。
「強制捜査で克行氏や案里氏の日程表などの押収しており、そこから現金を渡した人物の特定している。20人以上が克行氏もしくは案里氏から現金をもらったと話している。そのうち10人以上が供述調書にサインした。どの議員らを立件するか、絞り込みの時期だ。一番のターゲットは前法相でもある克行氏。現金のやりとり、指令は克行氏から発せられていた。案里氏が渡した現金もその指令によるものだ」

検察の取り調べを受けた自民党のある地方議員は、「克行氏から、現金をもらった時の様子を細かく聞かれました。供述調書も作成しました。検察は、手元に河井夫妻が誰に現金をいくら渡したのか、リストのようなものを手元に置いていた。それをもとに捜査しているようで『派手にばらまいていますね』と検察は言っていた」と打ち明ける。

5月16日にはNHKが《河井前法相ら陣営側 県議らに2000万円超提供か》と報じるなど、事件の全容が明らかになりつつある。案里氏側は自民党から提供された選挙資金が1億5千万円だったことを認めており、買収資金の原資が政党助成金だった疑いもある。

案里氏の選挙を手伝っていた関係者の一人は、次のように振り返る。「克行氏はケチで有名です。1円の金でも報告を求めるほど。しかし、克行氏は案里氏の選挙では、半端じゃないほど使っていた。政策チラシを広島県内の全世帯に郵送すれば莫大な費用がかかるものですが、案里の参議院選の時は3、4回やっていた。1回で3,000万円ともいわれるほど費用がかかるのに『これは、官邸直轄だから、金はいくらでも届く』と話していました」

■捜査の焦点は1億5,000万円の選挙資金

「官邸直轄、金はいくらでも届く」――。克之氏が豪語したように、選挙資金は豊富だった。その額1億5,000万円。他の参院選公認候補の10倍の資金が、河合陣営に流れていたことが明らかになっている。

じつは、その1億5,000万円を巡る捜査の行方次第で政局が動く可能性があると、ある自民党幹部の一人はつぶやく。
「河井夫妻が立件となれば、安倍政権がゆらぐのは間違いない。しかし、倒れはしないでしょう。問題は、自民党が河井陣営に投入した1億5千万円の政治資金。買収に使われたとみられているこのカネのことまで検察にやられてしまうと、とんでもないことになる。安倍政権は終わりを迎えるかもしれない」

いま、国会は検察庁法改正で紛糾しており、ある検察OBはそれとの関連をこう指摘する。
「検察の本音は検察庁法改正には絶対反対。その検察が握っているカードが、河井夫妻の事件だ。国会の流れ次第では一気呵成に河井夫妻の立件、逮捕許諾請求に乗り出すのではないか。検察は河井夫妻に事情を聞いているが、ざっとしたものだそうだ。争いの焦点になりそうなところを聞くと、夫婦で口裏合わせする可能性があるからだ。最終的には、1億5千万円までやることを視野に入れていると思う。要は、検察VS河井夫妻というより、検察VS安倍政権になりつつあるということ」

前出の自民党幹部によると、河井夫妻も、ヤメ検弁護士3人をそろえて防御態勢を整えているという。風雲急を告げる河井夫妻の事件。検察と安倍政権の暗闘は、どう決着するのだろうか?

(山本吉文)

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