江差看護学院パワハラ自殺で議会追及|北海道、示談中を理由に「答弁控える」

北海道立江差高等看護学院のパワーハラスメントで在学生が自殺した事案をめぐり、道の説明が二転三転している問題(既報)で、地元議会で野党会派から質問を受けた担当課が改めて謝罪と賠償とで対応が異なる姿勢を示した。遺族への謝罪ではハラスメントと自殺との因果関係を認めつつ、賠償に際してはその限りでないことを仄めかし、具体的な対応については示談交渉中であることを理由に「答弁を控える」とした。(*下、7日の道議会保健福祉委員会)

◇   ◇   ◇

パワハラ死問題で答弁があったのは、11月7日の道議会保健福祉委員会。前月下旬からの一連の報道や知事会見などを受け、同委員の平出陽子道議(民主、函館市)が質問に立った。平出議員はまず、道からパワハラ死遺族へ届けられた『回答書』の内容について「道の顧問弁護士が独断で考えたのか、それとも道の考えなのか」と質し、これを受けた保健福祉部の看護政策担当課長が次のように説明した。

「ハラスメントの有無について調査をいただいた第三者調査委員会の『調査書』の内容を重く受け止めるとともに、法的責任につきましては、顧問弁護士に相談しながら道として検討を行なったものでございます」

事実上ハラスメントと自殺との因果関係を否定し、その部分については賠償しないとの考えが綴られた文章は、ほかならぬ道の主張として示されたわけだ。これを確認した上で平出議員が引き合いに出したのは、先の「調査書」のとりまとめ後に当時の担当局長らが行なった遺族への謝罪、及び当時の記者会見などで鈴木直道知事が発した謝罪。これらの謝罪は調査書の内容に基づくものだったのか、そうでないのか。問いを向けられた担当課長は、こう答えることになる。

「これまで行なった知事の会見時や担当者からの謝罪につきましては、自死との相当因果関係を含めた第三者調査委員会の調査書の内容を受け止めて謝罪したものでございます」

この1週間ほど前に設けられた課長らの記者会見に続き、議会でも改めて当時の謝罪の意義が再確認された形だ。ならば、遺族への文書でそれが覆されたのはなぜなのか。文書ではハラスメントが直接自殺に結びついたとは言い切れないとされており、これは先の謝罪の真意と大きく異なる。平出議員は「後づけするような言動は詭弁」と難じ、「賠償金を低く抑えたいがための作戦ではないのか」と追及。これに対する課長の答弁は、結果として以下のような“無答弁”となった。

「道の法的な責任や賠償の範囲などにつきましては、顧問弁護士を通じて遺族側に回答をさせていただいておりますが、現在、双方の代理人において示談協議中の案件でありますため、その内容につきましては答弁を差し控えさせていただきます」

知事や担当部局の謝罪は問題の「因果関係」を認めたものだが、賠償の考え方についてはその限りでない。そう言っているに等しい説明だ。質問者の平出議員は、この対応を「道民の命と健康を守る道の責務を揺るがす重大な行為」と評し、道自身の見解を求めることになる。課長に代わって手を挙げた地域医療推進局長は、こう答弁した。

「道では、相当因果関係を含めました第三者調査委員会の『調査書』の内容を受け止めた上で謝罪を行なったところでございまして、ただ謝罪の時点では、法的責任につきましては検討中の段階であったというところでございます。道の法的責任、また賠償の範囲などにつきましては現在、顧問弁護士と遺族側の代理人弁護士が協議を行なっているところでございますので、引き続き誠意をもって対応して参りたいと考えてございます」

答えるほどに抽象度が増していく文言。最後の答弁を引き受けた保健福祉部長もまた、局長と同じ言い回しで「誠意をもって対応して参る」と述べるに留まった。

この議会の5日ほど前、遺族代理人の植松直弁護士(函館弁護士会)は道側へ新たに文書を送り、文字通りの「誠意」を求めたところだった。同弁護士は「第三者委の『調査書』をどう読んだら因果関係を否定できるのか、本当に不可解」と呆れ、謝罪の真意と賠償の考え方の矛盾について、率直に「理屈が通っていない」と批判する。亡くなった学生の母親(47)は、議会のやり取りを伝え聞き「賠償があっても息子を亡くした悲しみは終わらないのに…」と嘆息、他人事のような道の答弁に「『もう終わったこと』と思われているのが手に取るようにわかる」と悔やしさをにじませた。

遺族側は先の道への文書で、改めて第三者調査結果に基づいた対応を求めている。これに対する道からの回答は、現時点で届いていない。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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