どうなる万博|工期遅れで延期論も

夏草が覆い茂り、見渡すばかり平坦な埋め立て地が広がる。大阪市此花区、大阪湾に浮かぶ夢洲だ。2025年、大阪・関西万博が開催された後は、カジノを含む統合型リゾート(IR)が誘致される予定だ。万博の開催まで1年半しかないが、「こんな状況で開催できるのか」と先行きを懸念する声が上がっている。

◇   ◇   ◇

「万博の華」と言われるのが、ホスト国日本をはじめ地元の大阪、そして世界153か国が参加して出展するパビリオンだ。ホスト国のメンツにかけて建設されるのが「日本政府館(日本館)」。所管する経済産業省などのホームページによれば、延べ床面積1万1,300㎡、地上3階建てとなる計画だという。

今年から入札がはじまったが、応札はゼロで、ついに随意契約に――「予算は公表していませんが、60億円ほどです。しかし、ウクライナ情勢、資材高騰などの影響で設計通りにやろうとしたら2倍はかかるとゼネコンから言われている。随意契約でも、応じてくれる業者がいるかどうか微妙だ」と経産省の幹部は不安を漏らしていた。

7月21日になって、ようやく国は清水建設と随意契約を結んだことを公表。契約金額は約76億円と16億円もアップしていた。国や博覧会協会の見立てが甘かったということだ。

地元、大阪は「大阪ヘルスケアパビリオン」を出展する。こちらで組まれていた予算は74億円。唯一、応札した竹中工務店が算出した金額は約190億円。大阪府のホームページによると、有識者3人の選定委員会が出した評価は『総合評価点:ー153.57点*(内訳 価格:-327.57点、実績審査:22点、技術提案審査:152点)』。なんとマイナス153.57点というとんでもない数字だった。それでも昨年9月、施工業者には竹中工務店が選ばれた。竹中工務店の関係者が、次のように説明する。
「もともと、74億円なんて規模のパビリオンではない。目いっぱいの企業努力で150億円、普通なら200億円から250億円ですね。万博の開催が決まっているので突貫工事になりますから、割高になるのは当たり前。だから、うち1社しか応札していないんですよ」

最終的に竹中工務店が契約した金額は約99億円。大阪維新の会のある府議が、その裏事情を明かす。
「74億円しか予算を組んでいないので、大阪府や大阪市は補正予算を議会に通さないといけない。100億円だと目立つので、無理をしてもらい99億円で決着してもらった。身を切る改革が維新の目玉ですからね」――パビリオンのクオリティではなく、“維新政治”のメンツのための契約金額だというのだから呆れるしかない。

万博の来場者にとって期待が大きいのは、世界各国のパビリオンだ。しかし現在まで、運営主体の日本国際博覧会協会への海外パビリオンの建築申請はゼロ。パビリオンの建設には、まず基本設計書を博覧会協会に提出しなければならない。万博の半年間だけ使用するパビリオンは仮設建築物となるので、大阪市が建設の許可を出すのだが、市の幹部は顔を曇らせる。
「仮設のものですから、工期は3か月ほどと考えています。しかし、基本設計書がどの国からも出ていないので、許可の出しようがありません。町中にあるビルやマンションを建てるのとは違い、世界に1つしかないパビリオン。途中で設計変更もあるでしょうし、3か月で完成するのか疑問です。開幕直前になれば工事が集中し、現場で働くマンパワーの確保も厳しくなってきます。頭が痛いところです」

博覧会協会は、参加国のために先にパビリオンを建てる「建設代行」の打診までしているという。博覧会協会のホームページにある「契約情報」には、アメリカ、インドや中国など大国のパビリオンも並んでいる。「どこかのゼネコンが契約に動いたという話は聞きません」と先の竹中工務店の関係者。

パビリオンがない万博はあり得ない。「しかし」と、大手ゼネコン関係者が語る。
「万博開幕が迫っており工期厳守が絶対条件です。しかし、予定価格が安すぎて見積もりとはかけ離れすぎている。仕事をとったら損するのです。それに、コロナもあって建設業界からの離職者も多く、人手が確保できません。万博開幕に合わせるとなれば昼夜問わずの突貫工事となるでしょう。しかし、労働基準法の改正が施行されると建設現場での時間外労働に上限が設定される。万が一のことがあれば会社の存亡にかかわる。それに、夢洲へのアクセスが橋とトンネルだけ。夢洲にはすでにコンテナターミナルもあり、頻繁に渋滞が起きています。電力供給も不安視されています。いくら頼まれても懸念材料ばかりで、仕事を請ける気持ちにはなりませんね」

前出の維新府議は、延期論を口にする。
「東京オリンピックもコロナで1年延期したでしょう。万博もコロナを理由にして1年延期すればよいという声があがっています。万博会場に行ってみましたが、確かに延期したほうがいいと感じたのは事実。間に合わないなら、日本のメンツにかかわるし、維新が批判の矢面に立たされます」

博覧会協会の会長でもある経団連の十倉雅和会長は「工期は非常に厳しいのは事実だが、間に合わせたい」。吉村洋文知事は会見で「万博の延期は考えていない」と強気の姿勢だ。しかし、万博の次に控えるIRについては国の認可が遅れていることで「2029年の開業が難しい」という見方を示す。万博の延期があっても不思議ではない状況を、吉村知事も十倉会長も認識しているということだ。問題が山積している万博にIR……。問題の背景に、維新政治の弊害がチラつく。

 

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