自民党・秋本真利衆院議員に贈収賄疑惑|洋上風力発電巡り数千万円受領か

8月4日、東京地検特捜部は秋本真利自民党衆院議員(47)の千葉県の自宅や議員会館の事務所などを家宅捜索した。秋本氏には、洋上風力発電事業を手がける「日本風力開発」(東京都千代田区)の塚脇正幸社長から数千万円の「賄賂」を受け取った疑惑が浮上。贈収賄事件に発展するのが確実な状況で、支持率低下に悩む岸田文雄内閣にとっては、大きな痛手となりそうだ。

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当選4回の秋本氏は千葉9区が地盤で。2017年8月から1年間、国交省の政務官を務めていた。

秋本氏の名前が永田町で知られるようになったのは、自民党の国会議員であるにもかかわらず「脱原発」を公言。2020年に著書『自民党発! 「原発のない国へ」宣言』(東京新聞)を出版してからだ。閣僚になるまでは「脱原発」だった河野太郎デジタル相の側近でもある。

秋本氏を巡る疑惑は、日本風力開発が洋上風力発電事業に参入できるよう後押ししたことに対し、見返りの現金を受け取ったのではないかというもの。海に囲まれている日本で、海上に風車を設置して発電する洋上風力発電は、再生可能エネルギーの中でも安定的な電力供給源となるものと期待を集めている。

しかし、国内では太陽光発電システムが先行し、洋上風力発電は世界的にもみても遅れているのが現状。2022年の電力調査統計では、太陽光発電が9.9%、風力発電は0.9%なので10分の1程度でしかない。

岸田内閣がカーボンニュートラルを打ち出している中で、2018年11月に成立した洋上風力発電利用促進法では、国が海域を「準備区域」「有望区域」「促進区域」に分け、区域ごとに事業者が公募されるようになった。秋本氏は、国交省政務官時代に法制度の制定にかかわっていたことが分かっている。

2023年2月の衆議院予算委員会では、「国土交通大臣政務官の時代にこの法案の作成をしていた。残念ながら、法案の提出時は、私はもうそのときは大臣政務官ではありません。国交委員会で、逆に議員として国交省に質問させていただいた」と法案に関与したことを認めている。

日本風力開発寄りとみられる露骨な質問の記録もある。2019年2月27日の衆議院予算委員会、秋本氏は、「洋上風力の新法が成立をしました。業界、協会、ことしは洋上風力新年、元年だというふうに強い期待を抱いて、そしてこの新法に大きな期待をかけております」とした上で、日本風力発電が参入に乗り出していた青森県、秋田県、北海道などについて「北海道、そして青森、秋田というのは風況が非常によくて、ここについては、系統を引っ張るときでも、国の方でほかの地域とは差をつけてお金半分出すよというような事業をやっているぐらい非常に有望地なわけであります」と三つの地名をあげていた。

青森県では安全保障上の問題があり、防衛省が色よい返事をしていなかったらしく、秋本氏は「経産省や国交省との協議にも防衛省は柔軟に応じていただいて、そして、この法律に基づく洋上風力というものが青森県でもしっかりと私は展開されるべきであろうというふうに思うわけであります」と追及。国から「法律に基づいて関係の区域におきまして洋上風力の推進が進めていけるように、調整の部分は国の方でしっかりやってまいります」という答弁を引き出していた。

日本風力開発側の弁護士が明かしたところでは、同社の塚脇社長が秋本氏と懇意で2021年に地方競馬の馬主組合を結成。秋本氏側と塚脇社長側が45%ずつ、秋本氏の知人が10%を出資したという。馬主組合で所有した競走馬はこれまでに60頭を超えるとしている。

秋本氏は競走馬を購入するという理由で、塚脇社長から3,000万円あまりを受け取った。それが「贈収賄」にあたるのではないかと、特捜部は捜査しているのだ。前述の国会質問は、秋本氏と塚脇社長が関係を深める前後のことだ。「馬主組合は、3人で結成されている。しかし、実質的には秋本氏と塚脇社長の2人だ。買っている競走馬はおおよそ150万円から300万円まで。3,000万円はあまりにかけ離れた金額だ。いわば、厩舎などの運転資金もT社長が払っているということになる。一方で、競走馬がレースで勝てば賞金は秋本氏にも入る。二重の賄賂ではないのか」(捜査関係者)

秋本氏と塚脇社長の馬主組合は「パープルパッチレーシング」という名称で、北海道、東北、南関東、東海などの地方競馬で活躍する現役競走馬20頭ほどが登録されている。

特捜部が国会議員側に家宅捜索をかけたとなれば立件は確実視される。マイナンバー、保険証問題や木原スキャンダルで支持率低下にあえぐ岸田政権。ある自民党幹部は、顔をしかめてこうぼやく。
「秋本さんは競馬が好きだと聞いていたが馬主になるまでのめり込んでいたとは驚きだ。確かに、競走馬の血統などには非常に詳しかったが……。馬主組合は、名前を表に出さずにカネが受け取れる、実に巧妙だ。特捜部は、こういう悪質さを大きく報道させるだろう。岸田総理はますます衆議院の解散・総選挙ができなくなってきた。こんな大事な時期に、何てことだ」

塚脇社長は、元特捜部の大鶴基成弁護士を選任したという。大鶴氏はマスコミを集めて「検察側の見立てだけで記事が書かれている。とんでもない誤解を生じさせている。馬主の組合の運営費用として塚脇さんが出しているんだから秋本さんに出したということにはならないでしょ」と反論している。

秋本氏は、近づく「Xデー」に備えてか、自民党を離党し外務政務官は辞任した。

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