
通常国会冒頭での解散総選挙を決断し、「高市劇場」の幕を開けた女性総理。それに便乗する形で大阪府知事と大阪市長を辞職し、ダブル選をやると日本維新の会がぶち上げた。吉村洋文大阪府知事と、横山英幸大阪市長が辞職し、衆議院選挙の投開票日に併せてそれぞれが再選を目指すというもの。これまで2回の住民投票で否決された大阪都構想を掲げ、3回目の挑戦に踏み切るのだという。時間的な制約から対立候補が出たくても出れない状況であると分かった上での方針決定。選挙を道具に公金還流や国保逃れといった疑惑をごまかそういう魂胆がミエミエの暴挙だ。吉村氏の暴走に、維新内部からも怨嗟の声があがる状況となっている。
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府知事として2回目の住民投票に臨んだ吉村氏は、否決を受けた会見で「自分が政治家の間は、もう大阪都構想の住民投票はやらない」と明言していたはず。言動に整合性はなく、ネット上では「嘘つき」呼ばわりされる始末だ。
いま大阪府知事選、大阪市長選をやったところで、任期は4年ではなく、来年春の統一地方選挙まで。あと1年ちょっと待てば大阪都構想について賛否を問うことができるのだから、狙いが疑惑隠しであることは瞭然だ。
ある維新の大阪市議は、同党幹部の狙いについてこう話す。
「衆議院選挙は高市劇場になるのが目に見えていた。維新は大阪、近畿地方では票をとれるが、全国的には低調。そこで、ダブル選をやって維新の名前をPRしようと考えたのだろう。維新は自民党と連立を組んでいるので、高市総理と並んで街頭演説というシーンもありえた。ダブル選だとより効果が上がるはずだったが……」
しかし、大阪や近畿の小選挙区では、維新と自民党の選挙区調整はなく、ガチンコ勝負となるのが確実。高市首相と吉村知事のツーショット演説も、選挙区調整がない中では難しい。その点について、自民党の閣僚経験者が次のように指摘する。
「高市・吉村のツーショット街宣なんて現実には無理じゃないか。維新が候補を出せない東北だとか、四国などの地方では可能だろうが、大阪はもちろん、東京など都市部ではダメだろう。吉村さんが、高い支持率を誇る高市人気に乗ろうとしているのだろうが、そう簡単にはいかない」
党内からあがる反対意見を無視して「ダブル選」という道を選んだ吉村維新だが、どうあがいても本サイトで繰り返し問題視している「国保逃れ」(既報)の疑惑は消えない。
活動実態が見えない一般社団法人の理事に就任し、簡単なアンケートに回答するだけで健康保険と年金の社会保険料を支払ってもらうという“脱法”スキーム。すでに兵庫県議2人、神戸市議、尼崎市議の計4人の国保逃れが明らかになっていたが、ここに来て大阪にも飛び火した。以下、大阪維新関係者の話。
「大阪市議会の会議をやった時です。会議前に幹部だけの会合があり、そこで2人の国保逃れがばれてしまった。その2人は事前の調査で認めていたのでまだいいのですが、さらに2人がおかしいとなって、別の国保逃れが明らかになった。大阪でも合計4人。とんでもない事態になった。手口はわかっていないが、一般社団法人を使ったものか、自身で実態のない会社を興してやったものか、そのどちらかだそうです。」
事前に国保逃れを認めていたのは松田昌利市議。国保逃れの「勧誘」をしていたのは佐竹璃保市議。他の2人の名前は表には出ていないが、K市議、O市議の名前が浮上している。吉村知事は記者会見で、すでに国保逃れが発覚している兵庫県の地方議員4人――長崎寛親、赤石理生両県議、尼崎市議の長崎久美氏、神戸市議の南野裕子氏と元東京都杉並区議の松本光博氏、そして松田氏ら6人の除名処分を発表した。
維新の政策の柱の一つは、社会保険料の引き下げだ(*下の画像参照)。大阪市議の年収だと、国民年金、国民健康保険、社会保険料の年間合計は100万円超。それを業務実態のない一般社団法人や会社を経由させ、 “架空”の収入を低く見せることで社会保険料を安くしていたというのだからタチが悪い。

松田市議は、維新を離脱した守島正衆議院議員の公設秘書を務めていた経験があるというから呆れるしかない。前出の維新関係者が、ため息交じりに解説する。
「国保逃れはとんでもない事態。それ以上に、これまで維新が過半数を持っていた大阪市議会の今後が心配だ。国保逃れの4人で除名処分になったことで、維新単独で過半数が確保できなくなる事態に陥る。大阪都構想をいくら叫んでも、他党の協力が不可欠な状況になる。過去2回の大阪都構想の是非を問う住民投票では公明党の支援があったが、当然次は無理。ダブル選で大阪都構想の民意を問うといっても、対立候補が出ないのなら当選しても信任を得たことにならない。つまり前に進めないということ。国保逃れで評判の悪い中でのダブル選突入。疑惑隠しだと叩かれるのは目に見えている。やってられない」
連立を組む自民党の議員も、冷たく突き放す。
「維新はこれまで強引に独自の政策実現を迫ってきた。だが、国保逃れがばれてしまった以上、社会保険料改革なんてとても無理。化けの皮がはがれちゃった。国保逃れの傷は非常に深いよ。自民党にとって、お荷物でしかない維新は迷惑な存在。これが本音」
維新は、連立入りの条件として「12本の矢」という主要政策を提示し、社会保険料改革はその中でも最大の“推し”の一つだった。しかし、改革を進めると言う一方で、所属議員らが脱法行為を繰り返す維新――。これまで同党に絶大な支持を与えてきた大阪府民が、一連の動きをどう評価するかみものだ。
大阪都構想の是非を問うた二度の住民投票にかかった事務経費は100億円を超えていたという。原資はもちろん税金だ。今回のダブル選は、衆議院選挙と投開票日を同じにしても10億円前後の支出が見込まれる。維新の暴挙に迷惑を被っているのは大阪府民だけではない。















