2020年8月、記者会見を開いた大阪府の吉村洋文知事が「うそみたいな本当の話をさせていただく。ポビドンヨードを使ったうがい薬を使って、うがいをするとコロナの陽性者が減っていく。そのようなコロナに効くのではないかという研究が出たので、府民への呼びかけをさせていただきたい」と大見得を切った。その後、ポビドンヨード(イソジン)のうがい薬で新型コロナウイルス感染者が減ったという話は、どこからも聞こえてこない。
第7波となる新型コロナウイルスの感染が拡大する中、「知事は夏になるたびに事実に基づかないコロナ対策を打ち出している」と、現場から不満があがっている。
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大阪府が昨年11月から設置している「コロナ陽性者24時間緊急サポートセンター(自宅待機SOS)」という感染者専用ダイヤルの現状について、関係者がこう説明する。
「大阪は、第5波の際に保健所も119番もつながらないという事態になり、府が厳しい批判を浴びました。そこで、コロナ感染者から24時間体制で連絡を受けられる体制を作ったのが自宅待機SOS。オペレーター業務を東武トップツアーズという会社に委嘱して稼働させています。当初は大阪市北区だけでしたが、足らなくなって東京や福岡でもオペレーター業務をやっています」
東武トップツアーズは昨年11月から今年3月までの当該業務を9,300万円あまりで受託しているが、府はこれまで本サイトで報じてきた、イソジンのうがい薬と株価の問題や吉村知事発案の「大阪コロナ大規模医療・療養センター」と同じような失敗をしているというのだ。
「大阪コロナ大規模医療・療養センター」は本サイトでも報じたように「寒さ」が大きな理由の一つで、利用率が3%にも満たず今年5月で閉鎖。投じられた84億円もの税金は霧散してしまった。一方、自宅待機SOSは、150人から200人体制で対応にあたっていたが、今年4月から5月にかけて新規感染者が大幅に減少したこともあり、一気にオペレーターの数が減らされたという。ここにきて急速な感染拡大。オペレーター不足に陥った。東武トップツアーズの関係者が、次のように打ち明ける。
「当初の契約は今年3月まででしたが、延長されて、そのままうちで業務をやってきました。春になってコロナの感染者が激減。これまで従事してくれていたオペレーターとの契約を終了し、新しい人に入れ変えたのです。すると感染者が急増、第7波となってしまいました。慣れない新入りオペレーターばかりなので、電話はつながりにくいわ、対応もスムーズにいなかいわでもう大変。大阪府からは何も言われていませんが……」
自宅待機SOSへの電話は、すぐにつながることの方が少ないようで、「常時5人から8人待ち。時間にして長い時では10分近く待ってもらう状況です」(前出・東武トップツアーズの関係者)。大阪府の指導・監督に、期待するのは無理のようだ。
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吉村知事は、7月20日に開いた定例記者会見で、宿泊療養のためのホテルについて「1万室を確保している。うち4,000室は診療型ホテル。医者が往診、あるいは常駐して、実質コロナ病床のように機能させている。それを活用して対応する」と胸を張った。しかし、自宅待機SOSによれば、ホテルでの宿泊療養希望者に提供できる部屋がほとんどないのだという。
自宅待機SOSのある関係者が、実情を打ち明ける。
「大阪府からは、宿泊療養希望者にホテルが案内できるまで、3、4日かかると連絡が来ています。自宅待機SOSのシステムでは、案内できるホテルごとに受け入れ可能な部屋数が表示されます。しかし、Aホテルでは当日受け入れが0部屋、翌日受け入れが15部屋と出ていた。だが、あまりに希望者が多くて、翌日の受け入れ調整が34部屋ととんでもない数字が出ていた。システム自体がパンクしてしまい、うまく作動しなくなくなってしまっているのです。今、宿泊療養希望者がホテルに入れまでには3、4日かかります。運よく部屋が確保できても、移動の車がなくて入れないケースもあります。吉村知事の『対策は十分』という記者会見には違和感がありました」
第7波襲来が確実となっていた参議院選挙の最中、連日、日本維新の会公認候補の応援に出かけ府庁を留守にしていた吉村知事。府の中堅職員の話。
「吉村知事はコロナ対策では失敗続き。しかし、批判されるのは大嫌い。そこで、『1万室』とぶち上げる相変わらずのパフォーマンスです。第7波がきて、『パフォーマンスはいい加減にして』と思っている職員が大半です。結局、大阪府民にしわ寄せがいくのですから」
新型コロナという特効薬がない未知の敵を前に、パフォーマンスばかりの吉村知事。維新らしいといえばそれまでだが……。