「安倍やめろ」排除で道警がまた「適法」主張|警視庁SP動員の事実も明らかに

たびたび報告を続けている北海道で起きた首相演説中のヤジ排除問題で15日、違法に排除された当事者2人が北海道警察を訴えた裁判の第3回口頭弁論が札幌地裁で開かれ、被告の道警が二人目の原告に対する排除行為について、「適法な職務執行だった」と主張した。同日は被告側の新たな証拠として警察官の報告書が提出され、排除の現場に東京・警視庁の警護課職員(いわゆる「SP」)が動員されていた事実などが明らかとなった。

■仰天の警察側反論

この問題は参院選期間中の昨年7月15日に札幌で発生。安倍晋三首相の応援演説中に「やめろ」などとヤジを飛ばして排除された札幌市の大杉雅栄さん(32)は、当日の対応について道警がいっこうに説明責任を果たそうとしないことから、排除5カ月後の昨年12月に道を相手取り裁判を提起、330万円の賠償を求めていた。その後、大杉さんとは別の場所で「増税反対」と叫んだだけで排除された札幌市の女性(24)が原告に加わり、これまでに2度の口頭弁論が開かれている。

大杉さん排除の違法性を否定している道警は、女性の排除についても警察官職務執行法を根拠に「適法だった」と主張。現場でのトラブル回避の必要性など、大杉さんのケースと同じ理屈を持ち出して排除行為を正当化した。さらに排除後も複数の警察官が女性につきまとい、約1時間半にわたって行動を制限し続けた行為については「移動の自由は制限していない」と、仰天の反論を展開している。

■警視庁SPも排除に参加

弁論後の報告集会では原告代理人の1人・神保大地弁護士(札幌)が「道警の主張は嘘だらけ」と指摘。「こちらの反論は半分以上『それは事実と違う』という主張になってしまいました」と苦笑交じりに報告した。実際、排除行為やつきまといがあった事実は複数の動画で裏づけられており、この日の法廷でも原告が新たに入手した映像が上映されている。原告の女性は道警側の主張に「普通に『それは違う。論理的におかしいでしょ』と思った」と呆れるばかりだ。

前回弁論までに原告側は、道警への求釈明(説明の要求)で「現場にいた警察官の特定」を求めていた。これに対して被告の道警は今回、各警察官の作成した「報告書」を提出、現場職員の役職や階級などをようやく明らかにしたという。報告会ではその概要について、小野寺信勝弁護士(札幌)が驚きの事実を明かすことになる。
「ポイントの1つは、作成日。報告書は20通弱あるんですが、作成されたのが今年の5月なんですね。もう1つ、道警以外の警察官も排除行為に加わっていたことが、そこに記録されていたんです」

昨年7月の排除行為についての報告書が、10カ月後の今年5月になって初めて作られたというのだ。前回の弁論が終わった後、裁判のために急遽まとめたとしか考えらない対応。そして、その報告書には「警視庁警護課 巡査部長」などの記述もあったという。警護課職員とは、いわゆるSPのこと。ヤジを飛ばしただけの一市民を相手に、警察はSPまで動員して排除にあたっていたわけだ。

■「素顔晒して闘う!」

これまでマスクで顔を覆って弁論に臨んでいた原告女性は、今回初めて素顔を晒して報道陣の前に登場した。

報告会ではその真意を問われ、次のように述べている。
「道警の反論にムカついてきて、『マスクなんかしてる場合じゃない、ちゃんと闘わないと』と思いました。7月15日で排除から一周年なので、その節目を機にまたデモを企画して抗議の声を上げたいと考えています」

次回弁論は8月21日午後、札幌地裁で開かれる予定。原告代理人らは「早ければ年内にも証人尋問に到るのでは」と話している。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
北方ジャーナル→こちらから

 

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