東京地検特捜部、安倍派の池田衆院議員らを逮捕

7日、東京地検特捜部は、安倍派の政治資金パーティー裏金事件で衆議院議員の池田佳隆容疑者と政策秘書を政治資金規正法(不記載)で逮捕した。池田容疑者は、安倍派の政治資金パーティーでノルマを超えた枚数を売り上げ、そのキックバックされたカネを政治資金収支報告書に計上せずに裏金にしていた疑いが持たれている。池田容疑者はすでに過去の政治資金収支報告書で3,200万円あまりの訂正をしており、事実上「不記載」を認める格好となっていた。一部のメディアは、特捜部の捜査で裏金の額が4,800万円超になったとも報じていた。

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1月26日開会とされる通常国会の日程が決まり、それを見据えたかのような逮捕劇。池田容疑者や同じく5,000万円超の不記載があるとされる大野泰正参院議員については、“在宅起訴され、略式処分、罰金で議員バッジを外させる”というシナリオが囁かれていただけに、永田町関係者からは驚きの声が上がっている。

池田容疑者は数回の調べに応じてきたようだが、現在まで雲隠れしたまま。党内からはもちろん、特捜部からの電話にも反応していなかった。共犯とみられる政策秘書も、池田容疑者の所在がつかめず困り果てていたという。ある自民党の大臣経験者は、「特捜部から逃げきれると思っていたのだろうか」と呆れながら話す。

一昨年、議員バッジを外した薗浦健太郎元外務副大臣の事件で問題になったのは約4,900万円。この時は略式起訴で罰金だった。池田容疑者の「雲隠れ」という非協力的な対応と悪質性が逮捕劇となったとみられている。

特捜部の調べで3,200万円が4,800万円にまで積み上がっていることも注目点だ。安倍派や池田容疑者自身は3,200万円しか「裏金」が認識できておらず、これは特捜部の捜査が精密に行われている証左だろう。前出の大臣経験者が、次のように語る。
「池田の逮捕で、特捜部がいかに慎重な捜査を行っているのかよくわかる。疑惑の段階では、安倍派で5億円という裏金が実は10億円だという飛ばし記事があった。しかし党内は、飛ばし記事が実は当たっているのではないかと戦々恐々だ」

池田容疑者のSNS投稿からは、安倍派のパーティーが開かれた同じホテルで、安倍派5人衆の一人で政調会長だった萩生田光一衆議院議員が、「茶話会」を開催し、その司会として池田容疑者がマイクを握っていたことが分かっている。

池田容疑者の地盤は愛知3区。家業の「三興コロイド化学」を経営する傍ら、JC(日本青年会議所)会頭を務めた後、政治家へと転身した。当選4回、「魔の4回生」といわれる安倍チルドレンだ。

初当選は小選挙区で勝ち上がったが、その後3回はすべて比例復活。惜敗率も70%から80%台で、自民党としては物足りない候補者だった。地元の支援者は、残念そうにこう話す。

「元JCの会頭で、家業の化学メーカーの経営はすこぶる好調。典型的なお坊ちゃんですよ。地元での活動は少なく、街頭でマイクを握るにも髪型のセットに時間をとられて遅れる始末。家業の関係で、パーティー券をさばくのは得意だった。ただ、報道を見てここまでたくさん売りまくっていたのかと驚いた」

池田容疑者の裏にいたのは萩生田氏だという。安倍派に属する国会議員が、声を潜めて打ち明ける。
「派閥の中では、萩生田さんの一の子分を自称するくらい池田はベッタリ。萩生田さんは政策通というより、今の時代には珍しい党人派で、党務や閥務に手腕を発揮するタイプ。自民党は本来、比例復活が2回連続の議員は原則としてその次の選挙では重複立候補が認められないが、池田は萩生田さんを頼って、前回2021年の衆議院選挙で重複立候補に滑り込んだと聞いている。当然、ギブアンドテイクで、萩生田さんにも何らかの見返りがあったはず。萩生田さんが池田にパーティー券を買ってくれる企業、団体を紹介し、表面上は池田が売っているが本当の販売者は萩生田さん、という構図があったのではないか。当然、萩生田さんの口利き分は何らかの形で戻されたはず。事情聴取を受けた議員秘書らも、その点を特捜部から執拗に聞かれたという情報さえあります。萩生田さんにとっては、自分のパーティー券の売り上げはアップしなくとも、池田に裏金をつくらせ、それを懐に入れるというメリットがありますよね」

昨年12月末に衆議院議員の柿沢未途容疑者が公職選挙法違反で逮捕されたが、容疑は江東区長選でカネをばらまいたという悪質なもの。公判請求をされ、懲役刑が求刑されると見込まれる。それと比較して政治資金規正法違反の場合は、これまで大半が薗浦氏ように略式起訴から罰金、公民権停止となっており、逮捕された例はさほどない。安倍派には、元盛岡地検検事正で将来は検事総長とまでいわれていた名取俊也弁護士らそうそうたる「ヤメ検」がついており、どう反撃するか注目だ。ただし、“逮捕”という状況について、元東京地検特捜部の弁護士は「甘くない」とした上で、次のように話している。
「池田容疑者の病気という言い訳は、ガンなど重篤な場合以外は通じない。雲隠れを続けたことで、特捜部がさらに容疑を積み上げてくる可能性がある。逮捕されると20日間みっちりと取り調べできる。否認のままだと実刑判決が下る可能性もある。拘置所でも大変なのに、派手な人生を歩んできた池田容疑者が刑務所に行きたいと思うはずがない。池田容疑者の場合、すでに訂正をしているので不記載を認めていることになる。いくら否認しても起訴されて公判になるのは確実。重い刑を受けるのか、真相を語って情状酌量をとるのかという判断に迫られることになる。当然、萩生田氏のことも聞かれるでしょう」

特捜部は、池田容疑者の先にいる萩生田氏を見ているのかもしれない。

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