現職・門川氏引退で混迷深める京都市長選

8月23日、京都市の門川大作市長が「次期京都市長選挙には出馬しない」と記者会見で述べた。

門川市長は、京都市の教育長などを経て市長に就任し、現在4期目。和装姿で知られ海外では「着物の市長」としても知られる。同氏の会見後、さっそく反応したのが大阪府の吉村洋文知事だった。

■維新の中から「前原」待望論

大阪維新の会代表でもある吉村氏は「新たな市長候補を維新は立てることになる。立てるべきだ。京都は政令指定都市で非常に重要、中心的な都市。京都市は財政の問題があり改革が必要。(門川氏は)そこが、維新とは違い、財政の問題点が多かった。京都市の力をより発揮するには市長のかじ取りが重要で、京都市には新しい政治が必要だ。京都市長、必ず立てる」と候補擁立を宣言した。

そこで、注目されているのが国民民主党の前原誠司衆院議員。旧民主党政権時代には、外相、国交相などを務め、9月の国民民主党代表選にも出馬したが、大差で敗れた。2021年の参議院選挙では、旧民主党時代の「最側近」でもある福山哲郎参議院議員を見放し、維新候補を応援したことが記憶に新しい。前原氏は吉村知事と並んで選挙カーから維新候補の支持を訴えた。

結果的に維新候補は落選したが、自民党も巻き込み最後まで三つ巴のデッドヒートが続いた。この時のことを振り返りながら、ある維新の国会議員がこう話す。
「吉村知事が早々にあそこまで断言するのですから、維新としては絶対に候補者を出さねばならない。京都市といえば参議院選挙の経緯からも前原さんの名前があがるでしょうね。逆に維新とその周辺から見ると、前原さん以外には勝てそうな候補がいない。維新の中からも待望論があがっています」

京都市議会では維新と国民民主党が統一会派を組み共闘関係にある。当然維新には、前原氏に対する拒絶反応などない。しかし、名前があがったことで前原氏は、地元・京都で記者会見を開き「100%ありません」と出馬を否定している。

昨年の参議院選挙と一昨年の衆議院選挙で維新は議席を伸ばした。前原氏は維新の馬場伸幸代表らと定期的に勉強会を開催する仲だ。また、維新の市村浩一郎衆議院議員は旧民主党時代から前原氏と近いことで知られている。前出の維新議員が次のように解説する。
「前原氏が京都で記者会見したのは、国民民主党の代表選のさなかです。そんな時に京都市長選のことを聞かれても、答えられるわけがない。本格化するのはこれからですよ」

■自公が狙う「対維新」共闘

こうした動きを受けて、京都市議会では与党だった自民党が、早くも維新と前原氏の動きに警戒感をにじませる。

「自民党としては以前から門川市長とやや溝があり、4期で終わりだと言ってきた。門川市長もそれを悟っての引退ということでしょう。ただ、そうは言っても、自民党として誰か絶対的な候補者がいるわけではない。そこへ前原さんが維新の支援で出馬か、という話ですよね。前原さんが出るなら、こちらもかなりの候補者を立てないと難しい。それに、門川市長の4期はいわばオール与党体制で、キツイ選挙をしてこなかったこともマイナス」(自民党の京都府議)

そうした中、二之湯智元国家公安委員会委員長の息子、二之湯真士府議が9月7日に出馬会見。自民党を飛び出し、無所属で京都市長選に立候補することを表明した。

一方、自民党と公明党は、元民主党の参議院選挙で鳩山由紀夫政権時代に官房副長官を務めた松井孝治氏の擁立を検討しはじめている。自民党の国会議員が、“前原封じ”の策を披露する。
「松井さんは民主党だったが小泉進次郎元環境相が中心の勉強会で講師をするなど自民党との距離も近くなっている。それに松井さんは前原さんと非常に親しい関係にある。松井さんであれば、立憲民主党も国民民主党も相乗りで推せるはず。これは“対維新”共闘だ。彼が出るなら、非常に親しい関係の前原氏は厳しいだろう」

前原氏や松井氏の他にも、意外な名前が挙がっている。前原氏が国交相時代に、観光庁長官に招へいした大阪観光局理事長の溝畑宏氏だ。同氏は、旧統一教会が推進する「日韓トンネル計画」に賛同して、教会関連の国際ハイウェイ財団で10回以上も講演をしているという、とんでもない人物。前出の自民党京都府議は、二之湯氏と溝畑氏について、色をなして否定する。
「二之湯は、維新の市長候補になりたいがため無所属で手を挙げたのではと言われている。自民党の中でも浮いた存在だ。スキャンダルが噂される溝畑氏も絶対にダメだ」

「擁立宣言」をしたものの、吉村知事自身が2度も「この人という(候補者は)のはいない」と述べている。「松井か前原か、どちらが先に出馬を表明するのかで情勢は変わってくる」という見方をする関係者は少なくない。

日本が世界に誇る古都京都のかじ取りは誰が担うのかーー。

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