10月20日に臨時国会を開催することを決めた岸田文雄首相。内閣改造、党役員に次ぐ委員長ポストな細かな人事も終わった。政府・与党としては総選挙前の支持率回復につなげたかったようだが、結果は期待外れ。それどころか、さらなる支持率低下が懸念される状況となっている。
■「ドリル優子」の不人気
「ドリル優子」が定着した小渕優子選対委員長の就任が 注目されているが、ある自民党幹部が裏話を披露する。
「記者会見で、ドリル疑惑について聞かれて目をウルウルさせた。失敗人事ですね。選対委員長が泣くようではだめ。前任の選対委員長だった森山裕総務会長がウラの選対委員長としてサポートすることになるでしょう。もちろん、岸田首相の指示ですよ。選挙と公明党対策の二つですが、小渕さんには荷が重すぎる」
肝心の小渕氏は、そんなウラ事情が耳に届いていないのか「毎日、嬉しそうに党本部に通っていますよ。ただいつドリル質問が浴びせられるのか怖くて仕方ない。『記者はいない?』とかよく周囲をキョロキョロしていますね」とは同じ茂木派の国会議員。まともな仕事ができる状態ではなさそうだ。
■顰蹙買ったエッフェル塔・松川の副幹事長就任
多くの関係者が首をひねったのが、エッフェル塔炎上の松川るい参議院議員が、副幹事長に起用されたことだ。自民党女性局が行ったフランス研修で、エッフェル塔の前でポーズをバッチリ決めて写真撮影、それをSNSにアップして「観光旅行なのか」と大炎上したのは記憶に新しい。
火消しのために登場したのが、そのころは組織運動本部長だった小渕氏。「ドリル優子がエッフェル姉さんを注意するという、漫才コンビかと思わせるような図式。松川氏は女性局長を事実上の更迭。無役になるとみられていたが、安倍派に泣きつきなんとかポストを手に入れた」と安倍派の衆議院議員は話す。
しかし、松川氏の炎上は今も終わってはいない。9月16日に大阪府連の会合に姿を見せた松川氏。「私の軽率な行動でご迷惑をおかけしました」と頭を下げた。しかし、役員からは「常識がないんですよ、あきれます」、「エッフェル姉さんかなんか知りませんが、こちらは抗議殺到で頭下げてばかり」と批判殺到。「松川さんの行状というか対応には、いろいろ思うことがあった。(炎上で叩かれ)スッと晴れましたわ」などと皮肉交じりに、ディスった人までいた。人事では「無役」が確実とみられていた松川氏が副幹事長のポストに就いたことで、エッフェル塔問題が尾を引く格好となったのは確かだ。
一方、フランス研修に松川氏と同行していた今井絵理子参議院議員と広瀬めぐみ参議院議員は、当然の「無役」。8月の岩手県知事選で応援に奔走するはずだった広瀬氏を巡っては、岩手県連が「広瀬隠し」に追われる始末だった。その結果、現職知事に大差の惨敗。「広瀬の炎上で負けたようなもの」と地元関係者は怒り心頭となった。しかし、広瀬氏はX(旧ツイッター)に、《さて、フランス研修の件で皆様にご心配をおかけしておりまして、まことに申し訳ございません。温かいお言葉も頂いております。本当にありがとうございます》と呑気な投稿を行い、顰蹙を買っている。
■お飾りの自見はなこ
女性閣僚として抜擢された自見はなこ地方創生担当相にも危うさが漂う。二階派では別のメンバーの入閣が予定されていたが、「身体検査」で問題が浮上し、「女性枠」で自見氏に出番がまわってきた。父親の自見庄三郎氏と親子二代での入閣。しかし、自見氏の万博担当相兼務には疑問符が付けられている。前出の自民党幹部がこう解説する。
「自見さんは小児科のお医者さんで、日本医師連盟の組織内候補。医療に関する知識はあっても、万博のことはまったくわかっていない。自見さんは『万博のテーマはいのち輝く未来社会のデザイン、医療への期待がある』などと言っていますが、まともに聞く人はいません。つまり、まったくのお飾り。岸田首相は自見さんではなく、彼女が二階派なので選んだまで。政権運営で二階俊博元幹事長の力を借りるため、自見氏を万博担当に充てたのでしょう。二階さんは維新にもパイプがあり、建設観光業界には睨みが効きますから」
■人権侵害・杉田水脈が環境部会長代理
極右以外の大多数の国民が呆れているのが、数々の暴言で世間を騒がせてきた杉田水脈衆院議員。2016年に開かれた国連の会議に出席した際、「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」とブログなどに投稿したことについて、札幌法務局が「人権侵害」にあたると認定したが、このような認定自体が異例。改めて、人権意識が欠如した杉田氏の政治家としての資質が問われることになった。その杉田氏に与えられたポストは、党の環境部会長代理。自民党のある大臣経験者が、次のように警鐘を鳴らす。
「女性登用は岸田首相の戦略の一環だ。しかし、人権侵害が認定された杉田が環境問題という人権とかかわり深いポジションとは……。これヤバイよ。支持率を下げる要因にこそなれ、上げることにはつながらない。岸田政権は、人権について無頓着だと思われても仕方がない」
10月20日から開催予定の国会では、「ドリル優子」をはじめ、集中砲火を浴びそうな危ない女性議員が少なからずいる。