横浜市長選、小此木氏苦戦で顕在化した「ポスト菅」の動き

8人が立候補して激戦が続いてきた横浜市長選挙は、終盤にきて、菅義偉首相が支援する前国家公安委員長・小此木八郎氏と、立憲民主党や共産党が支持する前横浜市大医学部教授・山中竹春氏による、事実上の一騎打ちとなっている。

報道各社の情勢調査によれば、山中氏が抜け出す勢いであるに対し、小此木氏は日ごとに支持を落とす状況。新型コロナウイルスの感染爆発を招いた政権への怒りが、小此木陣営に向けられているとみられている。

「菅さんが選挙の顔では総選挙は戦えない」――横浜の選挙結果を見越した自民党内からは、「ポスト菅」をさぐる動きが出始めた。

■終盤戦で山中氏リード

お盆の8月13日から15日にかけて、報道各社の世論調査や期日前投票の出口調査が実施された。あるメディアの世論調査では、山中氏が小此木氏を7ポイントリード。期日前投票における出口調査でも、山中氏が優勢となっている。出馬表明時には「当確」と見られた小此木氏が、ここに来て大苦戦といった状況だ。

小此木氏を支持する、自民党の横浜市議が悲壮感を漂わせる。
「小此木氏が立候補を決めて、最大の争点であるIRの横浜誘致の反対と言った時点では、何万票差をつけるか計算していたほどだった。しかし今は、相手の山中氏に投開票日の何時に当確が打たれるかという点に注目が集まる始末。いくら必死で追いかけても、相手の背中は離れるばかり。どうしようもない」

緊急事態宣言の中、小此木氏は毎朝、駅前などに立ってきた。だが、道行く人からの反応は鈍く、「あのおじさん誰?って視線が感じられる。たまに反応があっても『あんたたちのせいで、コロナ感染が広がっているのでしょう』と実に冷たい。争点はIRではなく、コロナになっている」(前出の横浜市議)

一方、山中氏を推薦している立憲民主党の国会議員は鼻息が荒い。
「連日、コロナの新規感染者数が発表される。そのたびに、小此木支持の票がこっちに転がり込むようか雰囲気です。盛り上がってきたのは確か」

コロナ対策の失敗で、菅内閣の支持率は急降下。多くの世論調査で、危険水域といわれる20%台になった。小此木氏は、市長選直前まで菅内閣の一員だったため、もろに影響を受けた格好だ。横浜市民は、小此木氏にも責任があるとみている。

■「ポスト菅」

コロナで票を減らす小此木氏に対し、山中氏は「コロナの専門家」をPR。これが勝敗を分ける最大の要因になりそうだ。小此木氏の厳しい戦いを目の当たりにした自民党の閣僚経験者は、こう話す。
「菅首相の懐刀のような存在で、現職閣僚でもあった小此木氏で必勝を期した横浜市長選。負けたら、政局になることは間違いない。コロナの感染爆発と同様に横浜市長選の負けも、菅首相の失政とみられるだろう。このままでは、解散総選挙は戦えない。党内は、そういう意見が大半だ」

昨年9月の自民党総裁選で、いち早く菅支持を打ち出し、流れを作ったのは二階俊博幹事長である。首相と二階氏は、東京オリンピックのメダルラッシュで弾みをつけ、総裁選で勝ち、それから解散総選挙へというシナリオを描いていたはずだ。しかし、オリンピックは支持率回復に結びつかず、新型コロナの感染爆発には、まったく歯が立たない。連日、テレビカメラの前に立つ菅首相の自信なさそうな表情や、マスコミの質問にプッツンする様子は、国民だけでなく自民党内の信頼も失う結果となっている。

そうした中、安倍晋三前首相に近い高市早苗元総務省や下村博文政調会長が総裁選に出馬する意向を示すなど、党内はすでに“ポスト菅”に向けて動き出した形。「安倍氏の揺さぶり」「菅おろしの序章」という永田町の声が、現実味を帯びる状況となってきた。

「安倍さんにとっては、今回の総裁選がキングメーカーとしてのデビュー戦。自身と96人の派閥の力を誇示するはずだ。安倍さんの周辺には高市や下村など、候補が何人もいる。麻生太郎氏と組めば、総裁選の行方はほぼ決するだろう。コロナ対応の失敗は、本来は安倍さんの責任。その責任を、なんとしても菅総理に押し付けたい。もし、高市や下村で分が悪いとなれば、安倍さん自身が3度目の総理総裁を目指すという手もある。永田町はいま、菅首相の後は誰かという話ばかりだ」(前出・閣僚経験者)

二階派所属の衆院議員でさえも、声を潜めて本音を打ち明ける。
「自分の選挙があるのに、不人気の菅さんを支持するなんて選択肢はない。そんなことすれば、自分が落ちてしまう。菅さんで解散総選挙を戦うなんて無理。さすがに、二階幹事長にもまったくダメな菅首相をもう一度応援なんてしないでしょう。二階氏のことですから、うまく安倍氏や麻生氏と裏で連携しながら、次の一手を考えているはず。勝ち馬に乗ってほしいと願うばかりだ」

横浜市長選の劣勢で、追い込まれる菅首相。カウントダウンがはじまったか。

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